【ストーカートラブル】相手が「ストーカーされた」とSNSに書いている|反論してよいか
この記事は、ストーカー行為等の規制等に関する法律(令和3年改正による位置情報無承諾取得等の規制を含む)、刑法等の一部を改正する法律による拘禁刑の導入(2025年6月1日施行)、東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(令和4年10月1日施行の改正を反映)、軽犯罪法および警察法に基づき、2026年10月時点の内容で作成しています。警察の具体的な対応は、相談の内容や各警察署の判断によって異なります。
「帰り道で、同じ人が何度か後ろにいた気がするのですが、気のせいかもしれず、警察に行くほどのことなのか分かりません」。「相手が誰なのかも分からないのに、相談して取り合ってもらえるのでしょうか」。夜道でつけられている気がするというご相談では、このように、被害を確信できないことそのものが、相談をためらわせる理由になっている場面がよくあります。
ストーカー被害については「まずは警察へ」と案内されることが多く、その説明自体は誤りではありません。ただ、確信が持てない段階で110番と相談窓口のどちらを使えばよいのか、何を伝えれば状況が伝わるのか、相談したあとに何が残るのかといった点は、あまり説明されていないように思われます。
この記事では、「つけられている気がする」という段階に絞って、警察に相談してよいかの考え方、法律上どのような行為が規制の対象になるのか、相談の前に整えておきたい記録を整理します。相手を特定する方法は【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で、自宅まで来られている場合の対応は【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで詳しく扱っています。
確信がない段階でも、警察に相談してよい理由
警察への相談は「被害の確定」を前提にしていない
警察は、個人の生命、身体及び財産の保護を責務の一つとしています(警察法2条1項)。警察への相談は、被害がはっきりした人だけが使える手続ではなく、不安を覚えている段階で状況を伝え、助言を受けることも想定されています。警察庁の犯罪被害者等施策のページでも、寄せられた相談には内容に応じて関係部署が連携し、指導・助言、相手方への警告、検挙などの対応をとると案内されています。
つけられている気がするという段階で求められるのは、多くの場合、相手を処罰することよりも、安全を確保するための助言や見守りです。「気のせいかもしれない」という迷いは、相談をためらう理由ではなく、相談の場でそのまま伝えてよい情報の一つです。確信の度合いも含めて正直に伝えることで、警察も状況を把握しやすくなります。
相談したことが、後の手続の手がかりとして残る
相談の時点で目立った被害がなくても、いつ、どのような内容の相談があったのかが警察の側に残ることには意味があります。ストーカー規制法の警告は、つきまとい等があり、かつ、さらに反復して行われるおそれがあると認められるときに出されるものです(ストーカー規制法4条1項)。禁止命令も、反復のおそれを踏まえて判断されます(同法5条1項)。
そのため、同じ人物による行為がその後も続いた場合、最初の相談がいつで、そのときにどのような状況だったのかが、行為が繰り返されていることを示す手がかりになります。早い段階の相談は、その時点で何も起きなかったとしても、後の対応の土台になり得ます。
相談の段階で受けられる支援
相談の内容によっては、帰宅経路周辺のパトロールや、防犯上の助言を受けられることがあります。また、ストーカー行為等の相手方は、被害を自ら防止するための援助を受けたい旨を申し出ることができ、警察は必要な援助を行うものとされています(同法7条1項)。どのような支援が適当かは状況によって異なるため、相談の際に「何が不安で、何をしてほしいのか」を伝えると、話が進みやすくなります。
夜道でつけられることは、法律上どう扱われるのか
ストーカー規制法の「つきまとい等」
ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われる一定の行為を「つきまとい等」として規制しています。その中には、つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがること、住居や勤務先のほか、その人が現に所在する場所の付近で見張りをすることなどが含まれています(同法2条1項1号)。
つきまとい等を同じ相手に反復して行うと「ストーカー行為」となり(同法2条4項)、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象とされています(同法18条)。もっとも、夜道で後をつける行為がストーカー行為に当たるのは、身体の安全や住居等の平穏が害されるなどの不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限られます(同法2条4項かっこ書き)。
相手が見知らぬ人で、目的が分からない場合
夜道でつけられている気がするという場面では、相手が誰なのか、何を目的としているのかが分からないことのほうが多いかもしれません。ストーカー規制法は好意の感情などの目的を要件としていますが、それ以外の規定で扱われる余地もあります。
東京都の迷惑防止条例では、ねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で行われるつきまとい行為等を禁止しています(東京都迷惑防止条例5条の2)。また、軽犯罪法は、目的を問わず、不安や迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとう行為を対象としています(軽犯罪法1条28号)。
| 規定 | 対象となる目的 | 主な行為 |
|---|---|---|
| ストーカー規制法2条1項1号 | 恋愛感情その他の好意の感情、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情 | つきまとい、待ち伏せ、現に所在する場所の付近での見張りなど |
| 東京都迷惑防止条例5条の2 | ねたみ、恨みその他の悪意の感情 | つきまとい、待ち伏せ、住居等の付近をみだりにうろつくことなど |
| 軽犯罪法1条28号 | 目的は問わない | 不安や迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとうこと |
相手の目的がどれに当たるのかを、相談する側があらかじめ判断しておく必要はありません。どの規定で扱うかは、聞き取った事実をもとに警察が検討することです。相談の際は、法律の名前よりも、起きた出来事をできるだけ具体的に伝えることを優先してよいと考えられます。
「一度だけ」の段階で考えておきたいこと
一度後ろを歩かれた気がしたというだけでは、法律上の対応につながりにくいのが実情です。ただ、それは相談の意味がないということではありません。一度目の出来事を記録しておくことで、二度目、三度目が起きたときに「同じ人物ではないか」「同じ時間帯・同じ経路ではないか」という比較ができるようになります。一度目の段階で相談しておくか、少なくとも記録を残しておくことが、後の判断を助けます。
110番と#9110はどう使い分けるか
今まさに後ろにいるときは110番
相手との距離が縮まってくる、声をかけられた、走って追ってくる、自宅の近くまでついてきているといった場面は、相談ではなく緊急の対応が必要な場面です。迷った場合も、身の安全にかかわると感じるのであれば110番を使ってよいと考えられます。
通報の際は、現在地(近くの建物や交差点の名前)、相手の外見や服装、相手がいる方向と距離を伝えると、警察官が駆けつける際の手がかりになります。
その場を離れた後は#9110か最寄りの警察署へ
帰宅して安全を確保できた後や、翌日以降に落ち着いて相談したい場合は、警察相談専用電話の#9110や、最寄りの警察署の生活安全課などの相談窓口を利用する方法があります。#9110は緊急でない相談を受け付ける窓口で、内容に応じて担当部署につないでもらえます。
警察署に直接出向く場合は、事前に電話で相談したい旨を伝えておくと、担当者と話しやすくなることがあります。
その場でとっておきたい行動
つけられていると感じたその場では、相手の正体を確かめることよりも、安全な場所に移ることを優先するのが基本です。
- 明るく人の多い店舗や交番、駅の改札付近などに入り、しばらく様子を見る。
- 自宅の場所を知られないよう、そのまま自宅に向かうことは避ける。
- 家族や知人に電話をつなぎ、状況を伝えながら移動する。
- タクシーを利用するなど、移動の手段を変えることも検討する。
- 相手を確かめようとして近づいたり、追いかけたりしない。
被害を受けている側がとった行動が、かえって状況を悪化させてしまう場面もあります。避けておきたい行動についてはストーカートラブルに遭ったら絶対にやってはいけない5つのこと|早期・穏便に解決するためにで整理しています。
相談の前に整えておきたい記録
その日のうちに書き留めておくこと
時間が経つと、日時や場所、相手の特徴の記憶は曖昧になっていきます。つけられている気がした日は、帰宅後にできるだけその日のうちに、次のような点を書き留めておくと、相談の際に役立ちます。
- 日時(何時ごろ、どのくらいの時間)と、場所や経路。
- 相手の性別、年齢層、身長、服装、持ち物などの特徴。
- 相手がとった行動(同じ速さで歩いた、立ち止まると立ち止まった、角を曲がってもついてきたなど)。
- 同じ人物だと感じた理由(以前にも見かけた場所や時期)。
- その場で自分がとった行動と、その後の相手の動き。
スマートフォンのメモに日付とともに残しておく方法でも十分です。記録は、事実と自分の感じたことを分けて書いておくと、相談の際に整理しやすくなります。
居場所を知られている可能性の確認
行く先々に相手がいるように感じる、帰宅時間を把握されているように思える、といった場合は、持ち物に位置情報を記録する機器が付けられていないか、スマートフォンの位置情報の共有設定が残っていないかを確認することも考えられます。承諾なく位置情報を取得することや、機器を取り付けることは、令和3年改正で規制の対象に加えられています(ストーカー規制法2条3項)。
機器の見つけ方や対処はGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪で、機器以外の経路については【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止めるで扱っています。見つかった機器は、自分で処分する前に警察に相談することが望ましいと考えられます。
記録のために無理をしない
証拠を残そうとして相手を撮影しようと近づいたり、後を追い返したりすることは、身の安全の面から避けたほうがよいでしょう。記録は、自分の安全を確保したうえで残せる範囲のもので足ります。
通り道の店舗や駅などに防犯カメラがある場合でも、映像は一定期間で上書きされることが多いため、相談の際には「いつ、どこを通ったか」をできるだけ正確に伝えておくことが大切です。映像の確認は、警察を通じて行われるのが一般的です。
相談しても「様子を見ましょう」と言われたとき
相談したことを記録として残してもらう
確信が持てない段階の相談では、警察から「何かあればまた連絡してください」と案内されることもあります。その場合でも、相談した日付、対応した警察署と担当者の名前を控えておくと、次に何かが起きたときに同じ窓口へ経過を伝えやすくなります。同じ警察署に継続して相談することで、出来事が積み重なっていく経過を把握してもらいやすくなります。
相手に心当たりがある場合
つけてくる相手が元交際相手や知人ではないかと思い当たる場合は、相手が特定できないケースとは対応の幅が変わってきます。ストーカー規制法の警告や禁止命令の申出に加えて、弁護士が代理人として相手方に接触をやめるよう求める方法も考えられます。元交際相手からのつきまといについては元交際相手のつきまとい・待ち伏せ|ストーカー規制法でできる対応で、代理人を立てる意味については【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で解説しています。
窓口の使い分けを考える
警察と弁護士は、できることがそれぞれ異なります。警察は捜査や警告などの公的な手続を担い、弁護士は相談者の代理人として、記録の整理や警察への相談の同行、相手方との交渉などを担います。どちらに先に相談するかは状況によって異なるため、警察に相談すべきか、弁護士に相談すべきか|窓口の使い分け早見表も参考にしてください。警察に相談しても状況が変わらないと感じる場合については、警察に相談しても動いてくれないとき|弁護士ができることで取り上げています。
よくあるご質問
気のせいだった場合、警察に迷惑をかけたことになりませんか
自分が見聞きしたことをありのまま伝えて相談する限り、結果として気のせいだったとしても、そのこと自体が問題になるものではありません。確信の度合いも含めて正直に伝えることで、警察も状況に応じた対応を判断しやすくなります。
警察に相談したことは、相手に伝わりますか
相談しただけで、警察が直ちに相手方へ連絡するとは限りません。警告を求める申出をした場合などには、相手方に警察から働きかけが行われることになります。相手に知られることが不安な場合は、相談の段階でその旨を伝え、どのような進め方があるのかを確認しておくとよいでしょう。
相手が誰か分からなくても、弁護士に相談する意味はありますか
相手が分からない段階でも、記録の整え方や警察への伝え方を一緒に検討したり、警察への相談に同行したりすることはできます。また、手がかりの内容によっては、相手を特定するための手段を検討できる場合もあります。特定の可能性と、特定できない場合の守り方については【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で整理しています。
まとめ
- 警察への相談は被害が確定していることを前提にしておらず、つけられている気がするという段階でも相談してよいと考えられる(警察法2条1項)。
- 警告や禁止命令は反復のおそれを踏まえて判断されるため、早い段階の相談や記録が後の手続の手がかりになる(ストーカー規制法4条1項、5条1項)。
- 夜道でのつきまといや見張りは、目的によってストーカー規制法2条1項1号、東京都迷惑防止条例5条の2、軽犯罪法1条28号のいずれかで扱われる余地がある。
- 相手の目的を相談者が判断しておく必要はなく、起きた出来事を具体的に伝えることが大切である。
- 今まさに後ろにいるときは110番、その場を離れた後は#9110や最寄りの警察署の相談窓口を使う。
- 日時・場所・相手の特徴などをその日のうちに記録し、居場所を知られている可能性も確認しておく(ストーカー規制法2条3項)。
- 記録のために相手に近づいたり追いかけたりせず、身の安全を優先する。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。相手が誰か分からない段階、つけられているのか確信が持てない段階のご相談も、状況を整理するところからお手伝いしています。
夜道や帰り道で不安を感じている方、警察に相談したものの今後の進め方に迷っている方は、一人で抱え込まずにご相談ください。


