【ストーカートラブル】警察に相談したら口頭注意で終わった、次に何ができる?
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法の内容を反映し、2026年10月時点の法令と公表資料にもとづいて作成しています。警察の具体的な運用は、都道府県や事案によって異なることがあります。
ストーカー被害から距離を置くために、別の都道府県へ引っ越すことを選ぶ方は少なくありません。そのとき気になるのが、「これまで相談してきた警察の対応は、引っ越し先でも続くのか」という点です。警察は都道府県ごとに置かれた組織のため、住む場所が変われば、日常的に関わる警察も変わります。この記事では、すでに出ている警告や禁止命令がどうなるのか、2025年の法改正で何が変わったのか、転居先の警察に何をどう伝えればよいのかを順に整理します。
まず押さえたい全体像
警察の対応は、「法律にもとづく手続」と「日々の安全確保」の二つに分けて考えると整理しやすくなります。前者は、相手に対する警告や禁止命令といった手続です。後者は、自宅周辺の見回り、緊急時の駆けつけ、防犯上の助言など、被害者の生活の場に近い警察署が担う対応です。
| 対応の種類 | 引っ越し後の扱い |
|---|---|
| すでに出た警告 | 効力や記録が転居によって失われることはありません |
| すでに出た禁止命令 | 有効期間中は、転居後も相手を拘束し続けます |
| これから求める警告・禁止命令 | 転居前の住所地の警察が担える場合があり、新しい住所地の警察も担えます |
| 見回り・緊急時の対応 | 新しい住所地を管轄する警察署が中心になります |
つまり、法律上の手続は引っ越しによって途切れるものではありませんが、身の回りの安全を守る対応は、新しい住所地の警察とつながり直す必要があると考えておくのが現実的です。
すでに出ている警告・禁止命令は、引っ越しで消えない
禁止命令は「相手に向けた命令」
禁止命令は、都道府県公安委員会が、つきまといなどをした相手に対して「これ以上繰り返してはならない」と命じるものです。命令の対象は相手の行動であり、被害者がどこに住んでいるかによって効力が左右されるものではありません。禁止命令の効力は命令の日から1年で、必要があれば1年ずつ延長できます(ストーカー規制法5条8項・9項)。
また、ある公安委員会が禁止命令を出した場合、他の公安委員会は同じ違反行為について重ねて禁止命令を出すことができないとされています(同法5条5項)。引っ越したからといって、転居先で命令を出し直してもらう必要はありません。有効期間中に相手が命令に反してつきまとい等をすれば、引っ越し先での行為であっても、罰則の対象となり得ます。
警告も記録として残っている
警察本部長等による警告も、一度出されると、他の警察本部長等は同じ行為について重ねて警告をすることができないとされています(同法4条2項)。警告そのものに罰則はありませんが、警告を受けた後も行為が続く場合は、禁止命令に進むための重要な経過になります。転居後に相手の行動が再開したときは、以前に警告が出ていることを新しい住所地の警察にも伝えることが大切です。
禁止命令の延長は、期限前に相談しておく
禁止命令の延長は、期限が来れば自動的に行われるものではありません。延長を求める場合は、命令を出した側の警察と連絡を取りながら進めるのが通常です。引っ越し後は連絡が途切れやすくなるため、期限の時期を手元の通知書で確かめ、余裕をもって相談しておくと安心です。
2025年の改正で、転居前の住所地の警察も手続を担えるようになった
警告や禁止命令をどこの警察・公安委員会が担えるかは、ストーカー規制法14条で定められています。改正前から、被害者の住所地、相手の住所地、行為が行われた地を管轄する警察・公安委員会が手続を担えるとされていました。
2025年12月30日に施行された改正では、被害者が転居した場合を念頭に、違反行為があった時点での被害者の住所地を管轄する警察・公安委員会も、警告や禁止命令等を行える機関に加えられました。たとえば、東京に住んでいた時期にSNSでの執拗なメッセージなどが続き、その後に別の県へ引っ越したような場合でも、被害を受けていた当時の住所地の警察が、事情を把握したまま手続を進められる場面が想定されています。
| 警告・禁止命令等を担える機関 | 追加の時期 |
|---|---|
| 被害者の現在の住所地を管轄する機関 | 改正前から |
| 相手の住所地を管轄する機関 | 改正前から |
| 行為が行われた地を管轄する機関 | 改正前から |
| 違反行為があった時点の被害者の住所地を管轄する機関 | 2025年12月30日施行の改正で追加 |
なお、禁止命令の前提となる聴聞がすでに終わっている場合には、その後に被害者が他の都道府県へ転居しても、聴聞をした公安委員会がそのまま禁止命令を出せるとする規定もあります(同法14条2項)。どの機関が手続を担うかは警察の側で調整されるため、被害者が自分で選ぶ必要はありませんが、転居前と転居後の双方の警察に状況を伝えておくと、話が途切れにくくなります。
同じ改正では、被害者からの申出がなくても警察が職権で警告できる仕組みも設けられました。
それでも新しい住所地の警察署に自分から相談しておく理由
法律上の手続が途切れないとしても、転居先の警察署が以前の経緯を把握しているとは限りません。警察内部でどこまで情報が共有されるかは事案ごとに異なり、外から確かめることも難しいため、「共有されていない可能性もある」という前提で動くほうが安全です。
弁護士ドットコムにも、警察から県外への転居を勧められて引っ越したものの、その後の見通しが立たないという相談や、相手が近くに越してきたときに警察が自動的に把握するのかを尋ねる相談が寄せられています。転居は身を守る有力な手段ですが、それだけで警察とのつながりが保たれるわけではない、という点は意識しておきたいところです。
新しい住所の近くで相手を見かけた、不審な連絡が来たといった場面で最初に動くのは、新しい住所地の警察署です。何も起きていない段階でも、事前に相談して経緯を伝えておけば、いざというときに一から説明し直す負担を減らせます。
新しい住所地の警察署に伝えること・持っていくもの
相談の際は、次のような情報や資料を用意しておくと、話がスムーズに進みやすくなります。
- これまで相談していた警察署の名称と担当部署、担当者の名前。
- 相談を始めた時期と、相談した回数のおおよその目安。
- 警告や禁止命令が出ている場合は、その通知書や内容が分かるもの。
- 相手の氏名、住所、勤務先、使用している車両、顔写真など、分かっている情報。
- 日時・場所・内容を書き留めた被害の記録や、メッセージの画面の保存。
- 転居先の住所を相手に知られている可能性があるかどうか。
以前の警察署での相談内容が手元で分からない場合は、相談記録を取り寄せる方法もあります。あわせて、転居したことを以前の警察署にも伝えておくかどうかも検討しておきたい点です。伝える場合は、新しい住所の扱いに十分配慮してほしいことを明確に伝えておくとよいでしょう。
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住所を知られないための手続は、転居先で改めて行う
引っ越しの効果を保つには、住民票などから新しい住所をたどられないようにする手続も欠かせません。住民票の写しや戸籍の附票の写しの交付を制限する支援措置は、市区町村ごとに申し出る仕組みのため、転居した場合は転居先の市区町村で手続を確認する必要があります。申出にあたっては、警察などの相談機関の意見が求められるのが一般的で、ここでも新しい住所地の警察署とのつながりが役に立ちます。
支援措置には期間があり、継続するには延長の申出が必要です。住民票の異動、郵便物の転送、各種契約の住所変更などは、どの順序で進めるかによって情報が漏れるおそれが変わるため、引っ越しの前後で計画的に進めることが大切です。
【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序
転居後に相手の行動が再開したとき
身の危険を感じたときは、ためらわずに110番通報をしてください。そのうえで、新しい住所地の警察署に相談し、以前に警告や禁止命令が出ていることを伝えます。禁止命令の有効期間中であれば、命令違反として扱われる可能性があります。警告までしか出ていない場合や、命令の期間が切れている場合は、改めて禁止命令を求めることを検討します。
しばらく落ち着いていた後に行為が再開した場合でも、以前の記録は無駄になりません。過去の経緯と新しい出来事をつなげて示すことで、相手が同じ行為を繰り返すおそれを説明しやすくなります。
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警察の手続とは別に、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てる方法もあります。裁判所の決定は住む都道府県に左右されないため、警察の手続と組み合わせて検討する余地があります。
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弁護士に相談する意味
別の都道府県へ引っ越すと、転居前と転居後の二つの警察、転居先の役所、勤務先など、やり取りする相手が一度に増えます。弁護士に相談することで、これまでの経緯を時系列で整理し、それぞれの窓口に何を伝えるべきかを明確にしやすくなります。
また、相手との間で接触しない約束を書面にまとめる、裁判所の手続を利用するなど、警察の手続とは別の手段を並行して検討することもできます。相手から連絡が来た場合に、弁護士を窓口として本人同士の接触を避けられる点も、生活を立て直す時期には意味を持ちます。
【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序
まとめ
- すでに出た警告や禁止命令は、別の都道府県へ引っ越しても効力や記録が失われることはありません。
- 2025年12月30日施行の改正により、違反行為があった時点の被害者の住所地を管轄する警察・公安委員会も、警告や禁止命令等を担えるようになりました。
- 一方で、見回りや緊急時の対応は新しい住所地の警察署が中心となるため、転居後は自分から相談し、経緯と資料を伝えておくことが大切です。
- 住民票などの閲覧制限は、転居先の市区町村で改めて手続を確認する必要があります。
引っ越しは新しい生活の出発点ですが、警察とのつながりや住所を守る手続を整えておくことで、その安心を長く保ちやすくなります。転居の前後で何から手をつければよいか迷うときは、早めに専門家へ相談することも選択肢の一つです。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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