【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間
本記事は、ストーカー行為等の規制等に関する法律(令和7年法律第83号による改正後のもの)、警察庁の解釈通達(令和8年5月13日付け)、東京都の迷惑防止条例をもとに、2026年10月時点の内容で記載しています。個別の事案での当てはめは、行為の内容や経緯によって変わります。
「LINEをブロックしたら、今度はインスタグラムのDMで連絡が来た」「ブロックするたびに、名前を変えた新しいアカウントからメッセージが届く」。ストーカー被害のご相談では、このように連絡手段を変えながら接触が続くというお話を伺うことがあります。ブロックすれば終わると思っていたのに、かえって相手の執着の強さを感じて不安が増した、という方も少なくありません。
ブロック後に別のアカウントから連絡してくる行為は、ストーカー規制法の対象として検討される典型的な場面の一つです。ただし、法律上の評価はそれまでの経緯や連絡の頻度、相手の動機によって変わり、アカウントを変えたという事実だけで結論が出るわけではありません。
この記事では、ブロック後の別アカウントからの連絡が規制法上どのように扱われるのか、同じ人物からの連絡だと示すための材料、ブロックを重ねる前に残しておきたい記録、相談先の選び方を整理します。SNSのコメント欄への書き込みが続く場面は【ストーカートラブル】SNSに毎日コメントされる|ネット上の行為は規制法の対象になるかで、警告・禁止命令の手続全体はSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで取り上げていますので、あわせてご覧ください。
ブロック後の連絡は、規制法のどこにかかわるのか
ストーカー規制法は、電話や文書のほか、LINEやSNSのメッセージを「電子メールの送信等」として規制の対象にしています(同法2条2項)。ブロック後に別のアカウントから届く連絡も、SNSやメッセージアプリを使って送られている限り、この枠組みで考えることになります。
対象になるのは「拒まれたにもかかわらず、連続して」送る行為
規制法が「つきまとい等」として定めているのは、拒まれたにもかかわらず、連続して電子メールの送信等をする行為です(同法2条1項5号)。メッセージを送ること自体が直ちに問題になるのではなく、相手が拒んでいることと、短い期間に繰り返されていることの2つがそろって、この類型に当たり得ることになります。
「連続して」には、何回以上という明確な回数の基準はありません。数日の間に何通も届いているのか、数か月に一度なのかといった頻度や期間、前後のやり取りを踏まえて個別に判断されます。
ブロックは「拒んだ」ことの表れになり得る
警察庁の解釈通達では、「拒まれた」には言葉ではっきり断った場合だけでなく、黙示の拒絶も含まれるとされています。ブロックや着信拒否の設定は、連絡を受け付けないという意思の表れとして評価される余地があります。
一方で、拒絶は送る側がそれを認識していることが必要とされています。アプリによってはブロックされた側が気付きにくい仕様もあるため、ブロックしただけの段階では「拒まれていると分からなかった」と争われることもあり得ます。
別のアカウントに切り替えたことが持つ意味
この点で意味を持つのが、相手が手段を変えて連絡してきたという事実です。元のアカウントからは届かなくなったために新しいアカウントを作った、別のアプリに移ってきたという流れは、拒絶を認識したうえで連絡を続けていることをうかがわせる事情になり得ます。「なぜブロックしたの」「無視しないで」といった文面であれば、相手がブロックに気付いていることが文面そのものから読み取れる場合もあります。
もっとも、これは判断材料の一つにとどまります。拒絶の意思をより明確にしておきたい場合は、一度だけ短く「今後は連絡しないでください」と伝えて記録を残す方法や、警察から相手に拒絶の意思を伝えてもらう方法もあります。直接伝えることに不安がある場合は、無理にご自身で伝える必要はありません。
相手の動機によって使う枠組みが変わる
規制法の「つきまとい等」は、特定の人への恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことによる怨恨の感情を充足する目的で行われる行為を対象にしています(同法2条1項)。元交際相手や、好意を断った相手からの連絡であれば、この目的が認められやすいと考えられます。
これに対し、反感や妬みから連絡を続けている相手の場合は、規制法ではなく東京都の迷惑防止条例が検討の対象になります。同条例は、妬みや恨みなどの悪意の感情を充足する目的で、拒まれたにもかかわらず連続して電子メールの送信等をする行為を禁じています(東京都迷惑防止条例5条の2第1項)。なお、同様の規定の有無や内容は都道府県ごとに異なります。
「ストーカー行為」として処罰の対象になる場面
「つきまとい等」が同じ人に対して反復して行われると「ストーカー行為」となり、刑事罰の対象になります。メッセージの連続した送信については、身体の安全や住居等の平穏、名誉が害されたり、行動の自由が著しく害されたりする不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限られます(同法2条4項)。
実際の対応は、次のように段階を追って進むことが多いといえます。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 警察への相談 | 相談内容が記録され、状況に応じて相手への指導や警告が検討される |
| 警告 | つきまとい等をやめるよう、警察が相手に求める。令和7年の改正で、被害者の申出がなくても警察が職権で警告できる仕組みが設けられた |
| 禁止命令 | 都道府県公安委員会が、つきまとい等をしてはならないと命じる。違反すると罰則がある |
| 検挙・処罰 | ストーカー行為や禁止命令違反として、拘禁刑または罰金の対象になり得る |
警告の後も別のアカウントから連絡が続く場合は、禁止命令への切り替えが検討されます。この段階の進め方は【ストーカートラブル】警告が出たのに接触が続いている|禁止命令への切り替えで解説しています。連絡の回数と「つきまとい等」「ストーカー行為」の関係については、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いもご参照ください。
同じ人物からの連絡だと示すために
別のアカウントからの連絡では、「本当に同じ人なのか」が最初の壁になりがちです。アカウント名やアイコンが違っていても、次のような事情を積み重ねることで、同一人物と考える理由を説明しやすくなります。
- 文体や言い回し、絵文字の使い方の共通点。
- メッセージが届く曜日や時間帯の共通点。
- 二人しか知らないはずの出来事や呼び名への言及。
- ブロックした直後に新しいアカウントが作られているという時期の重なり。
- 「ブロックしたでしょう」など、ブロックを前提にした文面。
- 共通の知人をフォローしているなど、アカウント同士のつながりの重なり。
相手が誰か全く分からない場合でも、警察が確認できることがあるほか、弁護士を通じて発信者情報の開示を求める方法もあります。詳しくは【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方をご覧ください。
ブロックを重ねる前に残しておきたい記録
新しいアカウントが現れるたびにすぐブロックしたくなるのは、自然なことです。ただ、ブロックやトークの削除をするとメッセージが見られなくなり、後で警察や弁護士に相談するときの材料が失われてしまうことがあります。ブロックの前に、次のものを保存しておくことをおすすめします。
- 日時と相手のアカウント名・ユーザーIDが写ったメッセージ画面のスクリーンショット。
- 名前やアイコンが変更されても同一性を示せるよう、相手のアカウントのプロフィール画面。
- いつ、どのアカウントから、何通届いたかをまとめた一覧表。
- 自分がブロックした日時と、拒絶を伝えた場合はその文面。
- 同一人物と考える理由を書き留めたメモ。
ブロックではなく、通知を切る、受信を制限する機能を使うといった方法で、届いた内容を手元に残しておく選択肢もあります。どの方法が合うかは、相手とのこれまでの関係や不安の大きさによって変わりますので、無理のない範囲で選んでください。関係の断ち方と記録の残し方は、ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方でも取り上げています。
避けておきたい対応
別のアカウントから連絡が来ると、言い返したくなったり、相手の様子を確かめたくなったりすることがあります。次のような対応は、かえって状況を複雑にするおそれがあります。
- 届くたびに返信し、やり取りを続けてしまうこと。
- 自分も別のアカウントを作り、相手のアカウントを見に行ったり連絡したりすること。
- 相手のアカウントやメッセージを、SNS上で公開して批判すること。
- 共通の知人に頼んで、相手に直接やめるよう伝えてもらうこと。
返信を続けていると、拒絶の意思が伝わっていなかったと評価される材料になることがあります。相手のメッセージを公開する行為は、内容によってはこちらが名誉毀損やプライバシー侵害を問われるおそれもあります。共通の知人を通じた働きかけは、知人が巻き込まれたり相手を刺激したりすることがあるため、警察や弁護士を通す方法を先に検討しておくと安心です。
相談先と動き方
プラットフォームへの通報
SNSやメッセージアプリの中には、ブロックされた相手に別アカウントで接触する行為を利用規約で禁じていたり、嫌がらせを通報できる窓口を設けていたりするものがあります。通報によってアカウントが停止されることもありますが、新しいアカウントで再開される場合もあるため、通報と並行して記録を残しておくことが大切です。
警察への相談
規制法の対象になり得る場合は、警察に警告や禁止命令を求めることができます。身の危険を感じる内容が含まれている場合は110番、緊急でない相談は警察相談専用電話(#9110)も利用できます。前述の記録をまとめて持参すると、状況を伝えやすくなります。
弁護士への相談
弁護士は、規制法の対象になるかどうかの見通しを立てたうえで、警察への相談の準備や同行、発信者情報の開示、相手が分かっている場合の受任通知による連絡停止の申入れ、刑事告訴の準備などを状況に応じて組み合わせることができます。どちらに先に相談するか迷う場合は【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序を、依頼で何が変わるかは【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。
ブロックされた後に連絡してしまった方へ
反対に、「ブロックされたので、別のアカウントから一度だけメッセージを送ってしまった」というご相談をいただくこともあります。1回や2回で連絡をやめている場合に直ちに処罰につながるとは限りませんが、ブロックは拒絶の意思の表れとして受け止められる可能性があることを踏まえ、これ以上の連絡は控えることが大切です。謝罪や説明のつもりの連絡が問題になる理由は【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由で、メッセージの内容によって別の罪が重なる場面はしつこいDM・メッセージを送った|脅迫とストーカー規制法の重なりで解説しています。
よくあるご質問
別の電話番号からSMSや電話が来る場合も同じですか。
基本的な考え方は同じです。拒まれたにもかかわらず連続して電話をかけたりSMSを送ったりする行為は、規制法の対象として検討されます(同法2条1項5号)。何も告げない無言電話は、拒絶の有無にかかわらず対象になります。番号を変えた着信が続く場合は【ストーカートラブル】無言電話・非通知の着信が続く|記録と止め方もご参照ください。
内容が謝罪や近況報告だけでも、対象になりますか。
なり得ます。拒絶の後に連続して届いているのであれば、内容が好意的なものや謝罪であっても検討の対象になります。ただし、ストーカー行為として処罰されるには、不安を覚えさせるような方法で反復されたことが必要です。
まとめ
- ブロック後に別のアカウントから届く連絡は、拒まれたにもかかわらず連続して送信する行為として、ストーカー規制法の対象になり得ます(同法2条1項5号)。
- ブロックは拒絶の表れになり得ますが、相手の認識が争われることもあり、手段を変えて連絡してきた事実は認識をうかがわせる事情の一つになります。
- 規制法の対象は好意やそれが転じた怨恨による行為で、妬みなどによる場合は東京都迷惑防止条例5条の2が検討されます。
- 同一人物からの連絡だと示すには、文体・時期・内容の共通点を積み重ねることが役立ちます。
- ブロックの前に、日時やアカウントIDの分かる記録を残しておくことをおすすめします。
- プラットフォームへの通報、警察への相談、弁護士への相談は、状況に応じて組み合わせることができます。
手段を変えて届く連絡は、一つひとつは短い文面でも、積み重なることで大きな負担になります。ブロックしても止まらないと感じた段階で、記録を手元に残しながら、早めに相談先を検討してみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


