万引きに同行しただけ|見張り・待機は共犯になるのか
別れ話のあとに何度もメッセージを送ってしまった、返事がないので言葉が強くなってしまった、しばらくしてから警察や相手方の代理人から連絡が来た——ダイレクトメッセージ(DM)やメッセージアプリでのやり取りが、あとから問題として取り上げられる場面は珍しくありません。この記事は、しつこくDM・メッセージを送ってしまった側、あるいはそのことで警察から連絡を受けている側の立場から、脅迫罪とストーカー規制法という二つの枠組みがどこで重なり、どこで別々に働くのかを整理するものです。
メッセージのトラブルが分かりにくいのは、一つのやり取りが、性質のまったく違う二つのものさしで別々に測られるからです。片方は送った内容だけを見ます。もう片方は内容をほとんど見ず、回数と動機を見ます。この非対称を押さえておくと、「何が問題にされているのか」の見当がつきやすくなります。
同じメッセージが二つのものさしで測られる
脅迫罪(刑法222条)は、送った文面が相手やその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨を告げるものかどうかで判断されます。回数は要件ではありませんし、なぜ送ったかという動機も要件ではありません。言い方を変えれば、一通でも成立し得る枠組みです。
これに対してストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、拒まれているのに連続して送る、といった行為を対象にします。ここでは文面の内容そのものは決め手になりません。穏やかな文章でも、回数と経緯によっては対象になり得ます。
| 比べる点 | 脅迫罪 | ストーカー規制法 |
|---|---|---|
| 決め手になるもの | 送った文面の内容 | 回数と送り手の目的 |
| 回数の要件 | 要件ではない | 一定の反復が前提となる場面が多い |
| 目的・動機の要件 | 要件ではない | 好意や怨恨を充足する目的が必要 |
| 文面が穏やかな場合 | 問題になりにくい | それでも対象になり得る |
つまり「優しい内容だから大丈夫」は脅迫罪の話であってストーカー規制法の話ではなく、「一度きりだから大丈夫」はストーカー規制法の話であって脅迫罪の話ではありません。片方の理屈でもう片方を説明しようとすると、見通しを誤ることになります。
内容で決まる部分|一通でも問題になり得る場面
脅迫罪で問われるのは、害を加える旨の告知があったかどうかです。守られているのは本人と親族の五つの利益に限られており、加害の方法や日時まで具体的に述べる必要はないとされる一方、誰の手で何に対する害が起きるのかが判別できない漠然とした言い回しでは、成立が否定された裁判例もあります。線引きは言葉の一覧では作れず、前後のやり取りを含めた全体で評価されます。
また、相手が現実に怖いと感じたかどうかは要件ではなく、一般に人を畏怖させるに足りる程度かどうかが客観的に判断されます。逆に言えば、相手が「怖かった」と述べていることだけで直ちに成立が決まるわけでもありません。
メッセージ特有の事情として、文字が形として残り、送信時刻まで記録される点があります。深夜に集中して送られた、短時間に連投された、といった態様は、文面の受け取られ方を評価するうえで参照されることがあります。「感情的になっていただけ」「冗談のつもりだった」という説明も、その場の空気が残らないやり取りでは伝わりにくくなります。
なお、文面に金銭の要求が伴えば恐喝罪、義務のないことをさせようとする要求が伴えば強要罪というように、要求とセットになることで評価される枠組みが移っていきます。ここでは深く立ち入りませんが、「言葉そのもの」だけでなく「何を求めたか」も見られる、という点は押さえておいてください。
回数で決まる部分|DMは条文上どこに位置づけられるか
DMは「電子メールの送信等」に含まれる
ストーカー規制法は、規制の対象となる行為を八つの類型で定めています。そのうち、拒まれたにもかかわらず連続して電話をかけ、文書を送り、電子メールの送信等をすることが一つの類型です。そして条文は「電子メールの送信等」の中に、SNS等のメッセージ機能を利用した送信を含めています。DMやメッセージアプリでの連絡は、ここに位置づけられます。相手のブログやSNSのマイページへの書き込み・コメントも、同じ枠に含まれます。
「拒まれたにもかかわらず」の意味
拒絶ははっきり言葉にされたものだけでなく、態度から読み取れる黙示のものも含むとされています。ただし、送った側がその拒絶を認識していたことが前提になります。警察から「相手は拒んでいる」と告げられて認識した場合も含まれると解されており、警察から一度連絡を受けた後の送信は、それ以前とは評価が変わり得ます。
運用上、注意が必要なのは次のような点です。
・ブロックされている相手に送った場合でも、送信の履歴等から認められれば「送った」と評価され得ます。
・受信拒否の設定がされていても、送信した事実自体は残ります。
・既読がつかない、返事がない、という事情は、送っていないことにはなりません。
・別のアカウントや別のアプリに切り替えて送った場合も、手段をまたいで合わせて見られることがあります。
「連続して」はどのくらいか
「連続して」は、短時間や短期間に何度も、という意味に解されています。何日以内に何回、という数字が決まっているわけではなく、期間や頻度、相手との関係、拒絶があった時期などを含めて個別に判断されます。電話だけ、メッセージだけ、と手段を限る必要もなく、複数の手段にまたがっている場合も対象になり得ます。
もっとも、この類型のうち電子メールの送信等に関する部分については、身体の安全や住居等の平穏、名誉が害され、あるいは行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限る、という限定が条文に置かれています。連投であれば何でも当てはまる、という構造にはなっていません。
内容次第では一通でも別の類型に当たる
「回数が要件」というのは、あくまで連続送信の類型についての話です。八つの類型の中には、一回でも当てはまり得るものが含まれています。メッセージで送った場合に問題になりやすいのは、次のような内容です。
・行動や生活の様子を把握していると思わせる事項を告げること。
・面会や交際、復縁など、応じる義務のないことを行うよう要求すること。
・著しく粗野または乱暴な言動をすること。
・名誉を害する事項を告げること。
・性的羞恥心を害する事項を告げ、またはそうした画像等を送ること。
つまり、送った回数を数える議論と、送った内容を見る議論は、同じ法律の中でも並行して動いています。「一回だけだから」という説明が届く場面と、届かない場面があるということです。
二つが重なるとどうなるのか
脅迫罪とストーカー規制法は、別々の法律の別々の要件です。したがって、同じ一連のやり取りについて、片方だけが問題になることもあれば、両方が同時に問題になることもあります。目的の要件を満たさないと判断されて規制法の枠から外れても、文面の内容によっては脅迫罪の問題が残ります。逆に、文面が害の告知に至っていなくても、拒絶後の連投という経緯があれば規制法の問題が残ります。
警察庁が令和8年3月に公表した令和7年のストーカー事案に関する統計では、ストーカー規制法違反での検挙が1,546件であるのに対し、刑法犯その他の特別法犯としての検挙が2,171件と、これを上回っています。その内訳には脅迫292件、強要50件、名誉毀損41件などが含まれます。ストーカーの相談として警察が受けた事案が、規制法以外の罪名で扱われている割合は小さくありません。「規制法の要件を欠いているから何も起きない」という前提は置きにくい、ということです。
「DMだから軽い」とは限らない理由
DMについてよく語られるのが、「不特定多数が見ていないから名誉毀損にはならない」という説明です。これは、名誉毀損罪や侮辱罪が「公然と」行うことを要件としているためで、一対一のやり取りではこの要件を欠く場合が多い、という趣旨としては正確です。
ただし、この理屈が及ぶ範囲は限られています。脅迫罪、強要罪、恐喝罪、そしてストーカー規制法は、いずれも公然性を要件としていません。当事者しか見ていないやり取りであっても、これらの枠組みでは同じように評価されます。「公開の投稿ではないから問題にならない」という理解は、当てはまる罪と当てはまらない罪を区別しないまま広がっている面があります。
また、送ったメッセージを自分の端末から削除しても、相手の端末やサービス側には残ります。削除によって残るのは、証拠が消えたという結果ではなく、削除したという事実のほうであることがあります。
逮捕されるのかどうかは何で決まるのか
まず、それぞれの法定刑を整理します。
| 問題となる行為 | 法定刑 |
|---|---|
| 脅迫罪(刑法222条) | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| ストーカー行為罪(同法18条) | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合(同法19条) | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| その他の禁止命令等違反(同法20条) | 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
もっとも、身柄を拘束するかどうかは、罪の重さだけで決まるものではありません。逃亡のおそれや証拠を隠すおそれがあるかどうかが判断の中心になります。メッセージが問題となる事案では、証拠が端末やアカウントに集中しているため、その保全がどう見られるかが影響することがあります。他方で、身元がはっきりしていて連絡がつく状況であれば、在宅のまま捜査が進む例も少なくありません。
ストーカー規制法上の警告や禁止命令は、行政上の措置であり、それ自体は刑罰ではなく前科にもなりません。ただし、これらの措置と刑事事件としての捜査は目的が異なるため、並行して進むことがあります。「警告で済んだ」と受け取れる状況でも、捜査が別に動いている場合がある点には注意が必要です。なお、ストーカー行為罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない類型ではありません。
送ってしまった後に避けたい行動
この段階で、状況を難しくしやすい行動があります。
・自分から謝罪や釈明のメッセージを送ること。連絡を止めるつもりの一通が、新たな連絡として数えられることがあります。
・共通の知人を介して伝言を頼むこと。第三者を通じた働きかけとして見られる場合があります。
・アカウントを変えて連絡すること。手段を変えても、同じ相手への働きかけとして扱われます。
・送信履歴やアカウントを消すこと。あとから経緯を説明する材料まで失われます。
・警察から連絡を受けた後に、事実関係を確かめようとして相手に接触すること。
・「返事がないから届いていないのだろう」と考えて、もう一度送ること。
伝えたいことがある場合でも、本人から直接届ける以外の方法を先に検討したほうが、結果として選択肢が残ります。
整理しておきたいこと
説明を求められる場面に備えて、次の点を手元でまとめておくと役立ちます。
・いつ、どの手段で、何通送ったかの時系列。
・相手から拒絶と受け取れる反応があった時期と、その内容。
・ブロックや着信拒否がされた時期。
・相手との関係と、やり取りが始まった経緯。
・警察から連絡を受けている場合は、いつ、誰から、どのような説明があったか。
記録は、不利な事実を含めてそのまま残しておくほうが、結果的に説明の一貫性を保ちやすくなります。
弁護士に相談する意味
この種の事案で弁護士が果たす役割の中心は、連絡の窓口を代理人に一本化することにあります。謝罪や話し合いの意向があっても、本人が直接伝えれば、それ自体が新たな接触として評価されかねません。代理人を通せば、本人からの連絡を増やさずに意向を伝える形をとることができます。
あわせて、取調べで何をどこまで話すかの整理、警告や禁止命令を受けた場合の対応、相手方との示談交渉なども、事案の段階に応じて検討することになります。弁護士法人若井綜合法律事務所では、24時間体制で相談を受け付けており、初回のご相談は無料です。
よくあるご質問
一通だけでも罪になりますか
連続送信を前提とする類型では、一通だけで直ちに当てはまるとは考えにくい一方、脅迫罪や、内容自体が問題となる類型では、一通でも問題になり得ます。回数だけで結論は決まりません。
ブロックされている相手に送っても「送った」ことになりますか
なり得ます。相手が受け取れる状態かどうかではなく、送信の事実が認められるかどうかで判断されるためです。ブロックされたこと自体が、拒絶を認識した事情として見られる場合もあります。
相手が「怖い」と言えば、それだけで犯罪になりますか
脅迫罪では、相手が現実に怖いと感じたかどうかは要件ではなく、一般的な基準で客観的に判断されます。ただし、相手の受け止め方が捜査の端緒になることは多く、実際の説明の場面では、やり取りの経過を具体的に示せるかどうかが問題になります。
メッセージを消せば分からなくなりますか
相手側やサービス側に記録が残ることが通常であり、消したこと自体が別の評価を招く可能性があります。削除は避けたほうが無難です。
まとめ
しつこいDM・メッセージが問題になるとき、そこでは内容を見るものさしと、回数と目的を見るものさしが同時に働いています。どちらか一方の理屈だけで「大丈夫」と判断すると、実際に問われている点を見落とすことになります。心当たりがある段階で、まず連絡を止め、経緯を整理したうえで、次にどう伝えるかを専門家と検討することをおすすめします。


