【解決事例】元交際相手からの貸金返還請求353万円を和解金100万円まで減額した事例
本記事は、婚姻届を出していない交際関係を前提に、2026年10月時点の民法・民事訴訟法の規定と一般的な考え方をもとに解説しています。個別の事案での結論は、お金を出したときのやり取りや残っている記録によって変わります。
交際中は恋人がデート代や食事代を出してくれていたのに、別れた後になって「これまでの食事代を返してほしい」「デート代を合計するとこの金額になる」と、まとめて請求されることがあります。レシートや決済アプリの履歴を並べ、細かく金額を示してくる場合もあり、請求を受けた側としては、本当に払わなければならないのかと不安になるものです。
この記事では、交際中に恋人が負担したデート代や食事代を後からまとめて請求された場合について、法律上の扱い、返す義務が問題になりうる場面、返答する前に気をつけたいこと、書面や裁判所の書類が届いたときの対応を順に整理します。
交際中のデート代や食事代は、法律上どう扱われるのか
支払った時点で「贈与」として扱われることが多い
交際中に一方がデート代や食事代を支払い、もう一方が返済を約束しないまま受け入れていた場合、その支払いは、法律上は贈与として扱われることが多いと考えられます。贈与は、一方が財産を無償で与える意思を示し、相手がそれを受け入れることで成立する契約です(民法549条)。契約書を作っていなくても、「今日は払うよ」「ごちそうさま」といったやり取りで成り立ちます。
店の会計を相手が済ませた時点で、その支払いは終わっています。出してもらった側が、後でその金額を相手に支払う約束をしていない限り、別れたことをきっかけに支払義務が新たに生じるわけではありません。
渡し終えた分は、後から撤回できないのが原則
書面によらない贈与は、各当事者が解除できるとされています。ただし、履行の終わった部分については解除できないと定められています(民法550条)。デート代や食事代は、その場で支払いが済んでいるのが通常ですから、別れた後に「あのときの食事代はおごったつもりではなかった」と言われても、支払い済みの分を取り消して返還を求めることは、原則として難しいと考えられます。
「本当は割り勘のつもりだった」と後から言われた場合
請求する側が「本当は割り勘のつもりだった」「いつか返してもらうつもりだった」と主張することもあります。しかし、どのような約束があったかは、支払った当時の二人のやり取りを基準に判断されます。別れた後の気持ちの変化によって、当時の約束の中身が変わるわけではありません。
当時、相手が返済について何も言っておらず、こちらもお礼を伝えるだけで終わっていたのであれば、後から割り勘や貸し借りだったと主張しても、それを裏づける事情は乏しいことが多いでしょう。
返す義務が問題になりうる場面
もっとも、交際中のお金のやり取りがすべて贈与になるわけではありません。次のような事情がある場合は、返還の義務が問題になることがあります。
| 場面 | 確認する点 | 見通しの目安 |
|---|---|---|
| その場でおごってもらったデート代や食事代 | 返済について何も話していないか | 返す義務は生じないことが多い |
| 「立て替えておく」「後で払って」と言われていた | 立替えの話がLINEなどに残っているか | 立て替えた分の支払いを求められることがある |
| お金を借りて自分の分を支払っていた | 「借りる」「返す」という言葉や返済の実績があるか | 貸し借りとして返済を求められることがある |
| 「別れたら返す」と約束していた | 条件付きの約束が当時からあったか | 約束の内容によっては返還が問題になる |
| 結婚する意思がないのに結婚をほのめかして支払わせていた | 相手をだます意図があったか | 詐欺による取消しが問題になることがある |
貸し借りや立替え、条件付きの約束があったことは、基本的に請求する側が示す必要がある事情です。交際中に「出しておくね」「気にしないで」と言われ、返済の話が一度も出ていなかったのであれば、請求する側がその主張を裏づけるのは容易ではありません。
一方で、食事代とは別に、生活費や携帯代、引っ越し費用などをまとまった金額で受け取っていた場合は、貸付だったかどうかが争いになりやすくなります。デート代とそれ以外の支出が一つの請求にまとめられているときは、分けて考えることが大切です。贈与と貸付の分かれ目については、別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いで詳しく解説しています。
まとめて請求されたときに確かめておきたいこと
別れた後の請求は、交際期間中の支出を合計した金額で示されることが多く、性質の違うものが一つにまとめられていることがあります。返答する前に、次の点を手元で整理しておくと、その後の判断がしやすくなります。
- 請求の中に、デート代や食事代のほか、生活費や貸したお金など性質の違う支出が含まれていないかを確かめること。
- 支払いの場面で、相手が「立て替えておく」「後で返して」などと言っていたかを、当時のLINEやメッセージで確かめること。
- 自分の側も食事代や交通費、プレゼントなどを負担していた場合は、その記録を集めておくこと。
- 請求の時期が、別れを告げた直後や新しい交際相手ができた後など、相手の感情の動きと重なっていないかを見ておくこと。
- 請求とあわせて、家族や職場への連絡、画像の拡散などをほのめかされていないかを確かめること。
交際期間の長さによって考え方が変わるかどうかについては、【男女トラブル】交際期間の長さは金銭の清算に影響するのかもあわせてご覧ください。
返答する前に気をつけたいこと
「払います」「返します」と安易に伝えない
早く終わらせたいという気持ちから、「分かった、払う」「少しずつ返す」と返信してしまう方は少なくありません。しかし、こうしたやり取りは、後から支払いを約束した記録として扱われるおそれがあります。もともと支払う義務がなかった食事代でも、新たに支払う約束をしたと主張されると、話がこじれる原因になります。
返答が必要な場合も、「当時のデート代は返済を約束したものではないと考えています」といった程度にとどめ、金額や支払方法には触れないでおくのが無難です。
二人きりで会って話をつけようとしない
「直接会って話をつけたい」と求められることもありますが、別れた直後で感情が高ぶっている相手と二人きりで会うと、その場で書面へのサインや支払いを迫られることがあります。会う義務があるわけではありませんので、話し合いが必要な場合でも、メッセージなど記録に残る方法を選ぶか、第三者を間に入れることを検討してください。その場で書かされた書面については、【男女トラブル】別れ際に書いた誓約書を撤回したい|強く迫られて書いた書面で解説しています。
やり取りは消さずに残しておく
請求のメッセージ、相手が示してきたレシートの画像、交際中のLINEなどは、削除せずに保存しておきましょう。交際中に相手が「今日はごちそうするね」「気にしないで」と書いていたやり取りは、贈与だったことを示す材料になります。相手からの連絡が感情的なものであっても、言い返したりブロックしたりする前に、画面を保存しておくと後で役立ちます。
請求の方法そのものに問題がある場合
デート代の請求に法的な根拠が乏しい場合でも、相手が強い言葉で支払いを迫ってくることがあります。次のような言動がある場合は、お金の問題とは別に、身の安全や生活への影響を考える必要があります。
- 「払わなければ家族や職場に知らせる」と告げられていること。
- 交際中に撮影した写真や動画を広めるとほのめかされていること。
- 昼夜を問わず電話やメッセージが続いていること。
- 自宅や職場の近くで待たれていること。
害を加えることを示して金銭を求める行為は、内容によっては脅迫罪や恐喝罪にあたる可能性があります。また、別れた相手への執拗な連絡や待ち伏せは、ストーカー規制法の対象となることもあります。身の危険を感じる場合は、ためらわずに警察に相談してください。「家族や職場に知らせる」と言われたときの考え方は、「家族と職場にバラす」と言われた|告知の中身別に見る違法性で整理しています。
内容証明や裁判所からの書類が届いたとき
相手から内容証明郵便が届くと驚かれると思いますが、内容証明は、どのような内容の文書をいつ送ったかを郵便局が証明する仕組みであり、届いたこと自体で支払義務が生じるわけではありません。弁護士名で届いた場合の対応は、内容証明が弁護士名で届いた|慌てて払う前にやるべきことで解説しています。
これに対し、裁判所から届いた書類は放置しないことが大切です。支払督促は、受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てなければ、相手が仮執行宣言を求められる状態になります。訴状が届いた場合も、答弁書を出さずに期日に欠席すると、相手の言い分を認めたものとして扱われるおそれがあります。
デート代の請求では、60万円以下の金銭の支払いを求める少額訴訟が使われることもあります。少額訴訟は原則として1回の期日で審理を終える手続ですが、訴えられた側は、最初の期日で弁論をするまでであれば、通常の訴訟に移すよう求めることができます(民事訴訟法373条)。どちらの手続で対応するかも含めて、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
区切りをつけたいときの選択肢
法律上は支払う義務がないと考えられる場合でも、相手との関係を早く終わらせるために、一定の金額で話をまとめたいと考える方もいます。その選択自体が誤りというわけではありませんが、支払うのであれば、口頭やメッセージだけで済ませずに、合意の内容を書面に残すことが大切です。
合意書には、支払う金額と方法のほか、この合意以外に互いに請求するものがないことを確認する清算条項や、今後の連絡を控える接触禁止条項を入れておくと、後から別の名目で請求を蒸し返されることを防ぎやすくなります。清算条項の働きについては、清算条項の意味|後から追加請求されないためにをご覧ください。
反対に、条件を書面にしないまま一部だけを支払うと、「残りも払うと言った」と受け止められ、請求が続くきっかけになることがあります。
弁護士に相談することで変わること
弁護士が代理人として入ると、相手との連絡は弁護士が窓口になります。ご本人が直接やり取りをする必要がなくなるため、感情的な連絡に一つずつ対応する負担が軽くなります。
また、請求の中身を項目ごとに整理し、贈与にあたる部分と、貸し借りや立替えとして検討が必要な部分とを分けたうえで、相手に法的な考え方を書面で伝えることができます。当事務所でも、交際中の遊興費の返還を求められて支払いを続けていた方について、弁護士の通告により支払いと接触が止まった事例があります(【解決事例】元交際相手から遊興費の返還を求められ4年近く毎月15万円を支払っていた女性|弁護士の通告で支払いと接触が止まった事例)。結果は個別の事情によって異なりますが、すでに支払いを始めてしまった後でも、相談する意味はあります。
交際関係の解消に伴うトラブルへの当事務所の対応内容は、【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご紹介しています。
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デート代や食事代の請求でお困りの方へ
交際中に恋人が出してくれたデート代や食事代は、返済の約束がない限り、別れた後にまとめて返す義務は生じないことが多いと考えられます。ただし、請求の中に貸し借りや立替えが混ざっている場合や、強い言葉で支払いを迫られている場合は、一人で判断せずに、やり取りの記録を手元に残したうえで専門家に相談することをおすすめします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


