【解決事例】元交際相手から遊興費の返還を求められ4年近く毎月15万円を支払っていた女性|弁護士の通告で支払いと接触が止まった事例

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は、当事務所が実際に取り扱った事例をもとに作成しています。ご依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等の一部に変更を加えています。法令に関する記載は、2026年9月時点の内容に基づいています。


交際していた頃に相手が負担した遊興費を、関係の終わり際になって「返せ」と求められる。断り切れないまま毎月15万円を払い続け、気がつけば4年近くが経っていた。家族や職場に知らせると言われ、警察に相談しても現段階では動けないと言われた――。今回ご紹介するのは、こうした状況にあった女性からのご相談です。

 本記事では、弁護士が支払義務のないことを書面で通告し、その後の支払いと相手方からの接触が止まるまでの経緯をご紹介します。あわせて、交際中のお金の返還を求められている方に知っておいていただきたい点を整理します。

ご相談の概要


項目内容
ご相談者関東地方在住の女性
相手方7年近く交際していた元交際相手の男性
ご相談内容交際中に相手方が負担した遊興費の返還を求められ、毎月15万円を4年近く支払い続けていた
相手方の言動支払わなければ家族から回収する、職場に連絡する、職場に行ってもよいと告げていた
ご相談前の対応ご自身で警察に相談したが、現段階では対応が難しいとの回答だった
弁護士の対応支払義務がないことを明記し、ご本人・ご家族・勤務先への接触を控えるよう求める通告書を送付
結果通告書の送付後、支払いが止まり、相手方からの接触もなくなった。3か月以上接触がないことを確認して終結


ご相談までの経緯

交際中に「相手が費用を出す」関係が定着していた

 ご相談者は、7年近く交際していた男性(相手方)との関係を解消した後も、金銭の支払いを求められ続けていました。

 交際期間の途中から、相手方は働かない状態が続くようになり、日中はパチンコやスロットに通うようになりました。ご相談者も誘われて同行するようになり、当初はご自身のお金で遊んでいたものの、次第に相手方が費用を負担する形が定着していきます。ご相談者が勝った際のお金は、相手方が受け取っていました。

 この時期、ご相談者はご自身のキャッシュカードを相手方に預けていました。約4年間にわたり、ご相談者の収入は相手方が管理し、そこから生活費として必要な分をご相談者が受け取るという状態が続いていました。

「遊興費を返せ」と求められ、毎月15万円の支払いが始まった

 関係が終わりに近づくころ、相手方は「交際中に負担した遊興費を返せ」と求めるようになりました。ご相談者は、実際に費用を出してもらっていたことは事実であり、また相手方の説明を聞くうちに、返さなければならないものだと考えるようになりました。

 こうしてご相談者は、毎月15万円を現金で相手方の自宅ポストに投函するようになります。この支払いは4年近く続き、総額は600万円を超える規模になっていました。

生活が立ち行かなくなっても、支払いをやめられなかった理由

 毎月15万円を工面し続けた結果、家賃をはじめとする支払いが滞るようになり、ご相談者の生活は次第に苦しくなっていきました。それでも支払いをやめられなかったのは、相手方から、支払わなければ家族から回収する、職場に連絡する、職場に行ってもよいと言われていたためです。

 ご相談者は警察にも相談されましたが、現段階では対応が難しいという回答でした。どうすればよいか分からないまま支払いを続け、当事務所の男女トラブル相談窓口にご相談のうえ、ご依頼いただきました。

弁護士の対応と交渉の経緯

返金請求ではなく「関係の清算」を目的とする方針を確認

 受任にあたり、担当弁護士はまず、ご相談者が何を最も望んでいるのかを確認しました。

 選択肢としては、すでに支払った金銭の返還を求めていくことも考えられます。しかしご相談者のご意向は、お金を取り戻すことよりも、相手方との関係を断ち、これ以上支払わなくてよい状態にすることでした。

 返還請求を選んだ場合、相手方と交渉や訴訟を通じて関わり続けることになります。本件のように、支払いに至った経緯を裏づける証拠が限られている場合には、解決までに時間がかかる可能性もあります。そこで担当弁護士は、ご意向に沿って、関係の清算を目的とする方針を採りました。

7年分の事実関係をご相談者とともに整理し、通告書を作成

 方針を固めた後、担当弁護士は通告書の作成に取りかかりました。ここで重要になったのが、事実関係の正確な整理です。

 交際期間は7年近くに及び、ご相談者の手元には当時のメッセージ履歴がほとんど残っていませんでした。担当弁護士は書面案を作成したうえで、遊興費を負担してもらっていた期間はいつからいつまでか、キャッシュカードを預けていた期間とその間のお金の流れはどうだったか、といった点を具体的にお尋ねし、ご回答を踏まえて書面の修正を重ねました。

 ご相談者も、残っていた写真データや知人とのやり取り、ご自身の記憶を突き合わせて、時系列の再構成に取り組まれました。この作業を経て、交際期間、キャッシュカードを預けていた期間、毎月15万円の支払いを続けていた期間が、それぞれ特定されました。

 完成した通告書には、相手方の請求には法的な根拠がなく、ご相談者に支払義務がないことを明記しました。あわせて、今後はご相談者本人はもちろん、ご家族や勤務先にも接触しないよう求め、以後の連絡はすべて代理人である弁護士宛てに行うよう通知しました。

通告書の送付後、支払いも接触も止まった

 通告書の送付後まもなく、相手方から当事務所に電話がありました。届いた書面の内容がよく分からないという趣旨の連絡でした。担当弁護士は後日折り返しの連絡を試みましたが、相手方が応答することはありませんでした。

 その後、相手方からご相談者本人への接触も、当事務所への連絡もありませんでした。毎月15万円の支払いは、通告書の送付をもって止まりました。返還を求める具体的な主張や法的手続がとられることもなく、3か月以上にわたって接触のない状態が続いたことから、事件を終結しています。

 ご相談者からは、問題が解決したことへのお礼のご連絡をいただきました。

解決結果と対応のポイント

 本件の解決内容は、次のとおりです。

  • 毎月15万円の支払いが、通告書の送付をもって止まった。
  • 年間180万円の支払いが続く状態から離れ、生活を立て直す見通しが立った。
  • 家族や勤務先への連絡をほのめかされていた状況が解消した。
  • 弁護士の介入後、相手方からご相談者本人への接触がなくなった。
  • 3か月以上にわたり請求も接触もないことを確認して終結した。


交際中に相手が負担した費用は、後から返還を求められるのか

 交際中に一方が食事代や遊興費を負担することは、珍しいことではありません。こうした費用は、通常、その場で相手のために支出した贈与と評価されることが多いと考えられます。書面によらない贈与であっても、すでに渡し終えた部分は後から解除できません(民法550条)。後になって「あれは貸していたものだ」と返還を求めても、法的な根拠が認められにくいのはこのためです。

 もっとも、当初から貸し借りとして合意していた場合や、借用書などの書面がある場合には、判断が変わることがあります。しかし本件のように、交際中は特段の取り決めがないまま費用を負担し、関係が終わる段階になって初めて返還を求めてくるようなケースでは、返還義務が認められる可能性は高くないと考えられます。贈与と貸付の区別については、別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いでも解説しています。

 なお、いったん支払いに応じてしまうと、「支払っていたのだから債務を認めていたはずだ」と主張されることがあります。しかし、支払った事実があることと、法的な支払義務があることは別の問題です。長期間支払い続けた後であっても、そこで支払いを止めることは可能です。

「家族に言う」「職場に行く」と言われたとき

 本件でご相談者が支払いをやめられなかった大きな理由は、家族から回収する、職場に連絡する、職場に行ってもよいと言われていたことでした。

 金銭を支払わせる目的で、相手を怖がらせるような言動をとることは、その内容や態様によっては恐喝罪(刑法249条)などに当たる可能性があります。実際に勤務先へ押しかけて業務に支障を生じさせれば、業務妨害の問題も生じ得ます。告知の内容ごとの違法性については、「家族と職場にバラす」と言われた|告知の中身別に見る違法性で整理しています。

 ただ、こうした発言が電話や対面でなされた場合、記録が残っていないことも少なくありません。本件でも、発言そのものを裏づける記録は残っていませんでした。同じような状況にある方は、通話の録音、メッセージのやり取り、支払った日時と金額のメモなど、できる範囲で記録を残しておくことをおすすめします。後の交渉や手続で役に立つことがあります。

警察に相談しても対応が難しいと言われた場合

 警察は、犯罪に当たる事実が明確でない段階では、民事上のトラブルとして対応を控えることがあります。特に当事者間で金銭のやり取りが続いている場合、外形上は合意に基づく支払いに見え、被害として扱われにくいという事情もあります。

 しかし、警察の対応が難しいことと、法的に何もできないことは同じではありません。弁護士が代理人として支払義務がないことを明確に通告することで、請求が止まるケースもあります。相手方としても、法的根拠のない請求を続けることのリスクを意識せざるを得なくなるためです。

収入を管理される関係は、別れた後も影響が残りやすい

 本件では、ご相談者がキャッシュカードを相手方に預け、収入を管理されていた時期がありました。

 こうした関係は、交際中は「生活を助け合う」という形で始まることもあります。しかし、一方が他方の収入を管理する状態が長く続くと、関係が終わった後も、お金を渡すことが当然であるかのような感覚が残りやすくなります。本件のご相談者も、相手方の説明を聞くうちに返さなければならないものだと考えるようになったと振り返っておられました。

 ご自身の生活が成り立たなくなるほどの支払いが続いているときは、判断に迷う段階でも、早めに第三者へ相談することを検討していただきたいと思います。

同種のご相談をお考えの方へ

取り戻すことより、まず止めることを優先する選択もあります

 金銭の支払いを続けてきた方の多くは、「支払ったお金を取り戻したい」とお考えになります。自然なお気持ちです。

 もっとも、返還請求を選ぶということは、相手方と関わり続けることを意味します。交渉がまとまらなければ訴訟に進み、解決まで時間がかかることもあり、その間の精神的な負担も続きます。すでに支払ったお金を取り戻せるかどうかの考え方は、払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還で解説しています。

 本件のご相談者は、過去分の返還を求めるよりも、関係の清算を優先されました。その結果、通告書の送付をもって毎月15万円の支払いが止まり、年間180万円の負担から離れることができました。将来の支払いを止められたことには、大きな意味があったと考えています。

 どちらを優先すべきかは、証拠の有無、相手方の資力、ご本人の状況によって変わります。ご相談いただければ、見通しをお伝えしたうえで、一緒に方針を考えることができます。

お一人で抱え込まずにご相談ください

 元交際相手からお金の返還を求められている、断れずに支払いを続けてしまっている、家族や勤務先に知らせると言われて不安を感じている、警察に相談しても対応が難しいと言われた――このようなお悩みは、お一人で抱え込まずに専門家へご相談いただくことをおすすめします。

弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。
元交際相手からの金銭の請求にお困りの方、すでに支払いを続けていてどう止めればよいか迷っている方は、まずは現在の状況をお聞かせください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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