【不貞慰謝料】不貞相手が妊娠した場合に生じる問題
交際相手から暴力を受けたり、「別れたら写真をばらまく」などと脅されたりしているとき、裁判所に「保護命令」を出してもらえるのか気になる方は少なくありません。保護命令は夫婦のための制度と思われがちですが、一定の条件を満たす交際相手も対象に含まれます。ただし、どの交際相手でも申し立てられるわけではなく、生活の本拠を共にしていたかどうかが大きな分かれ目になります。この記事では、交際相手を相手方として保護命令を申し立てる場合の要件、手続の流れ、準備しておきたい資料、そして同棲していない相手の場合に検討できる別の手段を順に整理します。
この記事は、2024年4月1日に施行された改正配偶者暴力防止法(保護命令制度の拡充)と、2025年6月からの拘禁刑の導入を反映した内容です。申立書の書式や添付書類、郵便切手の額などは裁判所ごとに案内が異なるため、実際に申し立てる際は管轄の地方裁判所の案内をご確認ください。
保護命令の対象になる交際相手の範囲
保護命令は、配偶者暴力防止法(いわゆるDV防止法)に基づき、被害者の申立てによって地方裁判所が相手方に一定の行為を禁じる命令です。この制度の対象には、法律婚や事実婚の相手方に加えて「生活の本拠を共にする交際相手」も含まれており、同法28条の2で保護命令の規定が準用されています。被害者の性別は問われず、男性の被害者も申し立てることができます。
ここでいう「生活の本拠を共にする交際」とは、いわゆる同棲のように、婚姻関係に類する共同生活を営んでいる関係を指します。社会生活上の交際にとどまる関係や、交際関係にないルームシェアなどは含まれません。そのため、別々に暮らしている恋人からの暴力については、現在の制度では保護命令を申し立てることができません。同棲の有無による違いは、交際相手からのDV(デートDV)|保護命令は使える?同棲の有無で変わる対応でも解説しています。
同棲を解消した後でも申し立てられる場合
同棲中に暴力や脅迫を受け、同棲を解消した後も引き続き被害を受けるおそれがある場合には、元交際相手を相手方として申し立てることができます。一方で、同棲を解消した後に初めて暴力や脅迫を受けた場合には、その被害だけを理由に保護命令を申し立てることはできないと裁判所の案内で説明されています。この場合は、後で触れるストーカー規制法や民事の手続を検討することになります。
同棲していたことの示し方
法律上の夫婦であれば戸籍で関係を示せますが、交際相手の場合は、生活の本拠を共にしていたことを申立人の側で説明する必要があります。裁判所の案内では、次のような資料が例として挙げられています。
- 申立人と相手方の住民票(同じ住所に届け出ていることが分かるもの)。
- 同居先の賃貸借契約書の写し(双方が賃借人、または一方が賃借人で他方が同居人となっているもの)。
- 電気・水道・電話料金などの請求書の写し。
- 生活の様子が分かる写真や、同居先に届いた郵便物。
- 共同生活の実態を具体的に記載した陳述書。
住民票を移さないまま同棲しているケースも珍しくありません。その場合でも、いつから一緒に暮らしていたか、家賃や生活費をどのように分担していたかなどを具体的に説明することで、単なる交際を超えた共同生活であったことを示していくことになります。
どのような被害があれば申し立てられるか
2024年4月の法改正により、接近禁止命令などを申し立てられる被害の範囲が広がりました。改正前は、身体に対する暴力と、生命・身体に対する脅迫を受けた場合に限られていましたが、改正後は自由・名誉・財産に対する脅迫を受けた場合も対象に加わっています。あわせて発令の要件も、生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときから、生命・心身に重大な危害を受けるおそれが大きいときへと改められ、精神的な被害も考慮されるようになりました。
内閣府の案内では、対象となり得る脅迫の例として次のような言動が紹介されています。実際に該当するかどうかは、個別の事案ごとに裁判所が証拠に基づいて判断します。
| 脅迫の種類 | 言動の例 |
|---|---|
| 自由に対する脅迫 | 外出しようとすると怒鳴る |
| 名誉に対する脅迫 | 性的な画像をネットに拡散すると告げる |
| 財産に対する脅迫 | キャッシュカードなどを取り上げると告げる |
なお、相手方を住居から退去させる「退去等命令」は、身体に対する暴力または生命・身体に対する脅迫を受けた場合に限られており、接近禁止命令よりも要件が狭く定められています。
保護命令の種類と期間
保護命令には、中心となる「申立人への接近禁止命令」と「退去等命令」のほか、接近禁止命令の実効性を確保するための付随的な命令があります。付随的な命令は単独では求めることができず、接近禁止命令と同時か、すでに接近禁止命令が出ている場合に限って発令されます。
| 命令の種類 | 主な内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 申立人への接近禁止命令 | 申立人の身辺へのつきまといや、住居・勤務先付近のはいかいを禁止する | 1年 |
| 申立人への電話等禁止命令 | 面会の要求、連続した電話やSNSの送信、深夜早朝の連絡、GPSによる位置情報の無承諾取得などを禁止する | 接近禁止命令の期間中 |
| 申立人の子への接近禁止命令・電話等禁止命令 | 同居する未成年の子へのつきまといや連絡を禁止する | 接近禁止命令の期間中 |
| 申立人の親族等への接近禁止命令 | 親族などへのつきまといやはいかいを禁止する(原則として親族等本人の同意が必要) | 接近禁止命令の期間中 |
| 退去等命令 | 共に暮らしていた住居からの退去と、その付近のはいかいを禁止する | 原則2か月(住居の所有者・賃借人が申立人のみの場合は申立てにより6か月) |
保護命令に違反した場合、相手方は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金に処せられる可能性があります。保護命令が出されると、その旨は裁判所から警察にも通知されます。
申立てから発令までの流れ
交際相手を相手方とする場合も、手続の進み方は夫婦の場合と同じです。おおまかな流れは次のとおりです。
- 警察または配偶者暴力相談支援センターに、受けた被害について相談します(相談していない場合は、公証人の面前で宣誓供述書を作成します)。
- 申立書を作成し、交際関係や被害を示す資料をそろえます。
- 管轄の地方裁判所に申立書を提出します。
- 裁判官による申立人の面接を受けます。
- 相手方が立ち会うことができる審尋の期日が開かれます。
- 保護命令が発令され、相手方に告知されるとともに、警察にも通知されます。
申立てができる裁判所は、相手方の住所、申立人の住所または居所、暴力や脅迫が行われた場所のいずれかを管轄する地方裁判所です。東京地方裁判所本庁では、原則として申立ての当日に裁判官の面接が行われ、申立てから面接の終了まで2〜3時間程度を見込むよう案内されています。費用としては、申立手数料の収入印紙1,000円のほか、裁判所が指定する郵便切手が必要になります。
相手方の審尋がある点に注意
保護命令は、原則として相手方が立ち会うことのできる審尋の期日を経たうえで発令されます。つまり、申立てをしたことは発令前に相手方に伝わることになります。審尋を経ると申立ての目的を達成できない事情があるときには例外も設けられていますが、多くの場合は、申立てから発令までの間の安全をどう確保するかを、あらかじめ考えておく必要があります。同棲中であれば、申立ての前に避難先を確保しておくことも選択肢の一つです。避難の進め方については、交際相手から避難したい|安全な別居・避難と保護の手続きで解説しています。
申立書に添える主な資料
被害の内容を示す資料は、裁判所が判断するうえでの大切な材料になります。裁判所の案内では、次のようなものが例示されています。
- けがの診断書や、負傷した部位の写真。
- 脅迫の内容が分かる手紙、メール、SMS、LINEなどの画面の写し。
- 脅迫の音声を録音したデータの複製と、問題となる発言の日時や再生位置を説明した書面(反訳を含む)。
- 精神的な被害を主張する場合の、うつ病やPTSDなどの診断書。
- 暴力や脅迫を受けた状況を時系列で具体的に記載した陳述書。
申立書などの書類は相手方にも送られるため、避難先の住所や電話番号を記載しないよう注意が必要です。一時的に避難している場合は、それまで生活の本拠にしていた住所を記載する扱いが案内されています。相手方に知られたくない事項があるときは、提出前に裁判所に相談することもできます。
申立ての前後で押さえておきたいこと
保護命令を申し立てられるのは、被害を受けた本人に限られます。家族が本人に代わって申し立てることはできませんが、弁護士に申立ての手続を委任することはできます。
また、保護命令は相手方に一定の行為を禁じる命令であり、相手方の行動を物理的に止める仕組みではありません。発令後に相手方が近づいてきたり、連絡を続けてきたりした場合には、すぐに警察に連絡することが大切です。差し迫った危険があるときは、申立ての準備中であっても110番通報を優先してください。
接近禁止命令の期間が満了した後も危険が続いている場合は、改めて申立てをすることが認められています。期間中の相手方の言動を記録しておくと、再度の申立てを検討する際の材料になります。
同棲していない交際相手・元交際相手の場合
同棲していない交際相手や、同棲を解消した後に初めて被害を受けた元交際相手は、保護命令の対象になりません。ただし、そのような場合でも取れる手段がないわけではありません。
- つきまといや執拗な連絡が続く場合は、ストーカー規制法に基づく警察の警告や、公安委員会による禁止命令を求めることができます。
- 裁判所に接触の禁止を命じてもらう方法として、民事保全手続による接近禁止の仮処分を申し立てることがあります。
- 暴力や脅迫を受けた場合は、暴行罪・傷害罪・脅迫罪などにあたるとして被害届を出すことも考えられます。
- けがや精神的な苦痛について、損害賠償(慰謝料)を求めることもあります。
どの手段が適しているかは、相手との関係や被害の内容、残っている記録によって変わります。保護命令とストーカー規制法の違いについては、ストーカー規制法とDV防止法の違い|自分のケースはどっちで守られる?で整理しています。
弁護士に相談する意味
交際相手を相手方とする申立てでは、関係が同棲にあたることと、受けた被害の内容、今後重大な危害を受けるおそれが大きいことを、資料とともに説明する必要があります。どの事実をどの資料で示すかを整理しておくことは、申立てを進めるうえで役立ちます。弁護士が代理人となれば、申立書の作成や資料の整理、裁判所とのやり取りを任せることができます。
また、同棲を解消する場面では、保護命令とは別に、部屋の明渡しや荷物の引取り、立て替えていたお金の清算といった問題が残ることがあります。弁護士が窓口となって相手方との連絡を引き受けることで、直接顔を合わせずにこうした問題を整理できる場合があります。
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交際相手からの暴力や脅迫は、同棲していたかどうかによって使える制度が変わります。保護命令を申し立てる場合も、交際関係と被害の両方を資料で示す準備が求められます。安全の確保を何より優先しながら、ご自身の状況にどの手続が合うのかを早めに確かめておくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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