【男女トラブル】名前も住所も本当か分からない交際相手を、調べることはできる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は、2026年10月時点の法令(令和7年12月30日以降に順次施行された改正ストーカー規制法を含みます)にもとづいて作成しています。


交際している相手、あるいは交際していた相手について、「名乗っていた名前は本名だったのだろうか」「聞いていた住所に本当に住んでいるのだろうか」と疑問を持つことがあります。マッチングアプリやSNSで知り合い、共通の知人もいない場合には、身元を確かめる機会がないまま時間が過ぎていることも珍しくありません。

 相手の素性を知りたいと思うのは自然なことですが、調べ方によっては、ご自身が法的な責任を問われることもあります。一方で、お金を返してほしい、慰謝料を請求したいといった具体的な目的がある場合には、弁護士を通じて相手の氏名や住所を確かめられる仕組みもあります。この記事では、個人でできること・控えるべきこと、弁護士が使える調査の仕組みとその限界を整理します。

相手の名前や住所に疑問を持つきっかけ

 たとえば次のような場面で、相手の身元に疑問が生じることがあります。

  • 家に招かれたことがなく、相手がどこに住んでいるのか知らない。
  • LINEの表示名しか知らず、フルネームを聞いたことがない。
  • 郵便物や身分証に書かれた名前が、聞いていた名前と違っていた。
  • 貸したお金の返済が止まり、連絡もつかなくなった。
  • 独身だと聞いていたが、既婚者ではないかと感じる出来事があった。
  • 妊娠を伝えた後から、相手と連絡が取れなくなった。


 違和感にとどまる段階と、お金の返還や慰謝料など相手に何かを求めたい段階とでは、取れる手段が大きく変わります。

個人で確かめられること


相手に資料を見せてもらう

 最も穏当なのは、相手に直接たずね、運転免許証などの本人確認書類や、独身であることを示す書類(戸籍謄本や独身証明書)を見せてもらう方法です。交際相手にこうした書類の提示を求めること自体に法的な問題はありませんが、相手には応じない自由もあります。また、戸籍謄本などの画像やコピーを気軽にやり取りすると悪用されるおそれもあるため、その場で見せてもらうにとどめるといった配慮も必要です。

 なお、独身証明書は、発行された時点で婚姻していないことを示す書類にすぎません。提出書類で確認する仕組みでも防ぎきれない場面については、【不貞慰謝料】独身証明書は何を証明しているのか|提出制でも防げないことで解説しています。

手元にある情報を整理して残しておく

 相手が提示に応じない場合でも、ご自身の手元にはすでに手がかりがあることが少なくありません。携帯電話番号、LINEのID、マッチングアプリのプロフィール、相手が乗っていた車のナンバー、聞いていた勤務先、荷物を送ったことのある住所などです。後で調査の起点になり得るため、スクリーンショットやメモで日付とともに保存しておきます。

 相手やご自身がアプリを退会すると、プロフィールやメッセージが確認できなくなることがあります。保存の順序については、【男女トラブル・マッチングアプリ】退会するとやり取りは消えるのか|証拠を残す順序も参考にしてください。

住民票や戸籍を個人で取り寄せることの限界

 他人の住民票や戸籍は、原則として本人や同じ世帯・同じ戸籍の人などでなければ取得できません。貸したお金の返還を求めるなど、自分の権利を行使するために必要な場合に、資料を示して第三者として請求できる仕組みはあるものの、相手の住所や本籍の見当がついていることが前提となり、名前すら確かでない段階では使いにくいのが実情です。偽りの理由を示して取得した場合には、住民基本台帳法や戸籍法の罰則の対象となります。

調べ方によっては、ご自身が責任を問われることがある

 相手の身元を確かめたい一心で次のような行動をとると、相手との関係で不利になるだけでなく、ご自身が法的な責任を問われるおそれがあります。

行動問題になり得る主な法律・責任
相手のスマートフォンを無断で見るプライバシー侵害による損害賠償
相手のIDとパスワードでSNSやメールに無断でログインする不正アクセス禁止法違反
相手の車や持ち物にGPS機器や紛失防止タグをひそかに付け、位置情報を得るストーカー規制法の規制対象行為
自宅や勤務先を突き止めようとして、尾行や待ち伏せをするストーカー規制法・迷惑防止条例の規制対象行為
SNSに相手の写真や事情を投稿し、情報提供を呼びかける名誉毀損・プライバシー侵害による損害賠償
偽りの理由で住民票や戸籍を取り寄せる住民基本台帳法・戸籍法の罰則


 ストーカー規制法では、GPS機器を使った位置情報の無承諾取得がすでに規制されていましたが、令和7年12月30日からは、紛失防止タグを使って位置情報を取得する行為や、タグをひそかに取り付ける行為なども規制の対象に加わりました。交際中や別れた直後の相手に対する行為は、好意の感情やそれが満たされなかったことへの怨恨の感情によるものと評価されやすく、ご自身は「身元を確かめたいだけ」のつもりでも、つきまとい等として扱われる可能性があります。

 ネット上で特定や公表を試みると、かえって相手から損害賠償を求められる立場になりかねません。関連する論点は、他人の個人情報をネットに書き込んだ|特定と晒しの責任やGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪でも取り上げています。

弁護士が使える調査の仕組み

 相手に何かを請求するために氏名や住所が必要な場合、弁護士は個人では使えない制度を利用できます。代表的なものが、弁護士会照会と職務上請求です。

弁護士会照会

 弁護士会照会は、弁護士法23条の2にもとづく制度です。弁護士が受任している事件について所属する弁護士会に申し出て、弁護士会から企業や公的機関に必要な事項の報告を求めます。照会は、弁護士会が申出の必要性や相当性を審査したうえで行われます。手がかりごとに、次のような照会が考えられます。

手元にある手がかり照会先の例分かる可能性がある情報
携帯電話番号携帯電話会社契約者の氏名・住所
LINEのIDLINEの運営会社登録された電話番号など(そこから携帯電話会社へ照会)
車のナンバー運輸支局など登録されている所有者・使用者の氏名・住所
勤務先勤務先の会社従業員として届け出ている住所など
マッチングアプリのアカウントアプリの運営会社登録されている情報


 照会を受けた側に回答を強制する罰則はないため、個人情報の保護などを理由に回答が得られないこともあります。どの手がかりからでも必ず判明するわけではない点は、あらかじめ理解しておく必要があります。

職務上請求

 相手の氏名と、過去のものでも住所の手がかりがあれば、弁護士は受任した事件の処理に必要な範囲で、住民票や戸籍の附票を取り寄せることができます。戸籍の附票には住所の移り変わりが記録されているため、転居していても現在の住民登録地にたどり着ける場合があります。戸籍を確認することで、婚姻しているかどうかや、婚姻した時期が分かることもあります。

 弁護士会照会で電話番号などから手がかりを得て、職務上請求で現在の住所や正しい氏名を確かめる、という順序で組み合わせて使うことが一般的です。

「調べるだけ」の依頼は受けられない

 弁護士会照会も職務上請求も、受任している事件を処理するために認められている制度です。そのため、「相手が本当は誰なのかを知りたい」という目的だけで、調査のみを弁護士に依頼することはできません。貸したお金の返還請求や慰謝料請求など、相手に何かを求める事件の依頼があり、その準備として調査を行う形になります。得られた情報も、その事件のためにしか使えません。

調べる前に、相手に何を求めたいのかを整理する

 弁護士による調査ができるかどうかは、相手に対して法的に何を求めるのかによって決まります。交際相手の身元が問題になりやすい場面と、求める内容の例は次のとおりです。

  • 貸したお金が返ってこない場合は、貸金の返還を求めることが考えられます。
  • 独身と偽られて交際していた場合は、貞操権侵害として慰謝料を求められることがあります。
  • 妊娠した後に相手と連絡が取れなくなった場合は、認知や養育費を求めることが考えられます。
  • 結婚をほのめかされて金銭を渡していた場合は、損害賠償を求められることがあります。
  • 相手からのつきまといが続いている場合は、接触をやめることや、その約束を書面にすることを求めることが考えられます。


 一方で、「別れた相手が今どこに住んでいるのか知りたい」といった目的だけでは、法的な請求の前提がなく、弁護士の調査の対象にはなりません。関係が終わった相手の所在を探すこと自体が、つきまといと受け取られるおそれもあります。

探偵に依頼する場合に知っておきたいこと

 探偵業者に相手の身元や住所の調査を依頼する方法もあります。探偵業法では、探偵業者は契約にあたって、調査結果を犯罪行為や違法な差別的取扱いに用いない旨を示す書面を依頼者から受け取らなければならず、調査結果が犯罪行為などに用いられると知ったときは、業務を行ってはならないとされています。

 また、改正ストーカー規制法により、令和8年3月10日からは、過去に警告などを受けた人物が探偵業者などに相手方の情報を求めていることを警察が把握した場合、その業者に対して情報を提供しないよう求める通知ができるようになりました。交際が終わった相手の所在を探すことが目的の場合には、依頼を断られることもあり得ます。

 請求を前提とする場合でも、探偵費用の全額を相手に負担させられるとは限らないため、見込まれる回収額との釣り合いを考えておくことが大切です。費用の負担については、【不貞慰謝料】探偵費用は相手に負担させられるのかで解説しています。

手がかりは時間とともに失われていく

 電話番号の解約、LINEのブロックやアカウントの削除、アプリの退会、転居などによって、照会の起点となる手がかりは時間の経過とともに使えなくなっていきます。違和感を持った段階で、まず手元の情報を保存しておくことが、後の選択肢を残すことにつながります。

 時効にも目を向けておく必要があります。慰謝料の請求は原則として損害と加害者を知った時から3年、貸したお金の返還請求は原則として請求できることを知った時から5年で時効にかかります。相手を特定できていない間の扱いは事案によって判断が分かれるため、時間がたっている場合は早めに確認しておくと安心です。

よくあるご質問


LINEしか知らない相手でも、住所を調べられますか

 LINEのIDが分かれば、運営会社への弁護士会照会で登録された電話番号などの回答を受け、そこから携帯電話会社に照会するという流れが考えられます。ただし、運営会社が回答に応じない場合もあり、表示名やトーク画面だけでは照会が難しいことがあります。IDを確認できるうちに控えておくことをおすすめします。

名乗っていた名前が偽名でも、請求はできますか

 聞いていた名前が偽名であっても、電話番号や車のナンバーなど、客観的な手がかりから本名にたどり着ける場合があります。聞いていた名前を前提にせず、手元にある情報をそのまま弁護士に伝えてください。

依頼するかどうか決めていなくても、相談できますか

 相談だけでも可能です。調査は事件の依頼が前提になりますが、相談の段階で、手元の手がかりからどの程度の特定が見込めるか、そもそも相手に請求できる事情があるかを一緒に確認することができます。相談の前に用意しておくとよい資料は、法律相談の前に用意する資料チェックリスト|手元に何もない場合はどうするかにまとめています。

関連する解説記事



相手の身元に疑問を持ったときは

 相手の名前や住所が本当か分からないという不安は、一人で調べようとするほど判断を誤りやすいものです。手がかりを保存したうえで、相手に何を求めたいのか、そのために調査が必要かどうかを整理するところから始めることが、ご自身を守りながら前に進むための近道になります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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