【男女トラブル】同棲中の生活費|別れた後に家計を清算する
本記事は、2026年10月時点の法令と、公表されている裁判例・実務の一般的な考え方にもとづいて解説しています。個別の事案の結論は、交際の経緯や残っている記録によって変わります。
交際していた相手に離婚歴があった、前の配偶者との間に子どもがいた――そうした事実を、交際がある程度進んでから知ることがあります。「最初から言ってくれていれば」という思いや、「だまされていたのでは」という不信感が生じるのは自然なことです。
ただ、法律の面から見ると、「隠されていた」というだけで直ちに慰謝料を請求できるわけではありません。一方で、婚約していた場合や、「離婚した」という説明自体が事実と違っていた場合には、扱いが大きく変わることがあります。本記事では、隠されていた中身と交際の段階ごとに、考え方の分かれ目と、発覚した後に取れる対応を整理します。
最初に確かめたいのは「何が隠されていたのか」
| 隠されていたこと | 法的な見方の出発点 | 問題になりやすい場面 |
|---|---|---|
| 離婚歴(離婚はすでに成立している) | 過去の事実であり、交際や結婚の妨げにはならない | 婚約の前後に尋ねたのに、婚姻歴はないと偽られた場合 |
| 前の配偶者との子ども | 親子関係と養育費の支払義務は、離婚後も続いている | 結婚後の家計や相続を考える場面 |
| 「離婚した」と聞いていたが、実際は婚姻が続いていた | 既婚であることを隠した交際にあたる | 貞操権の侵害、相手の配偶者からの請求 |
同じ「隠されていた」でも、離婚が成立しているかどうかで、検討する法律問題はまったく別のものになります。まずは、相手の説明のどこが事実と違っていたのかを切り分けることが出発点です。
交際中に話さなかったこと自体は、ただちに違法とはいえない
交際している者どうしでも、自分の過去をすべて打ち明ける法的な義務があるわけではありません。離婚歴や子どもの存在をいつ、どこまで話すかは、基本的には本人の判断に委ねられています。そのため、すでに離婚が成立している相手が、交際の初期にその事実を話していなかったというだけでは、慰謝料の請求が認められる可能性は高くないと考えられます。
また、婚約に至っていない交際であれば、事実を知って関係を終えることは自由です。別れを選んだことについて、どちらかが責任を問われるものでもありません。
もっとも、次のような事情が重なる場合には、評価が変わることがあります。
- 結婚を前提とした交際で、離婚歴や子どもの有無をこちらから直接尋ねていたこと。
- 尋ねられた際に、相手が「結婚したことはない」などと積極的に事実と違う説明をしていたこと。
- その説明を信じて、退職や転居、高額な支出など、生活に関わる決断をしていたこと。
婚約者に借金の有無を確認したのに「ない」と答えられていた事例について、弁護士ドットコムで、単に言わなかったのではなく尋ねられて偽った点を重く見て、違法性が認められうると説明する回答が紹介されています。離婚歴や子どもの存在についても、同じように「黙っていた」のか「尋ねられて偽った」のかが一つの分かれ目になると考えられます。
プロフィール上の説明が事実と違っていた場合の考え方は、【男女トラブル・マッチングアプリ】プロフィールの嘘はどこから違法になるか|年収・職業・独身の詐称でも解説しています。
婚約していた場合は「婚約を解消する正当な理由」になりうる
婚約が成立した後に、正当な理由なく一方的に婚約を破棄すると、破棄した側が慰謝料などの賠償責任を負うことがあります。反対に、正当な理由がある解消であれば、賠償責任は生じないと考えられています。
重要な事実を偽っていたことは、正当な理由として検討される
婚約破棄の正当な理由が認められる典型として、婚約者が収入や職業など重要な事情について事実と大きく異なる説明をしていた場合が挙げられています。離婚歴や子どもの存在は、結婚後の家計や家族関係に直接関わる事情ですので、これを偽っていたことが婚約を解消する理由として評価される可能性はあります。
ただし、離婚歴や子どもの存在が判明すれば必ず正当な理由になる、というものではありません。こちらが尋ねていたかどうか、偽り方の程度、婚約がどこまで進んでいたか、発覚した後に相手がどう説明したかなどを踏まえて、個別に判断されます。
婚約を解消する際の正当な理由の考え方は、結婚をやめたい|婚約の解消で慰謝料を払わずに済む「正当な理由」とはで詳しく整理しています。
相手に慰謝料や準備費用を求める場面
相手の偽りが原因で婚約の解消に至った場合、解消を招いた側に責任があるとして、慰謝料や、式場のキャンセル料・新居の準備費用などの負担を求める余地があります。結婚を前提に渡したお金がある場合は、その性質ごとに返還を求められるかを検討することになります。この点は結婚を前提に渡したお金・結納金は返還請求できるかもご参照ください。
「離婚した」という説明が事実と違っていた場合
相手が「離婚した」「バツイチだ」と説明していたものの、実際には婚姻が続いていた場合は、離婚歴を隠していた場合とは問題の性質が異なります。既婚であることを隠して結婚を意識させる交際を続けた場合には、貞操権の侵害を理由とする慰謝料の請求が考えられます。報道された例では、離婚が成立していると偽ってシングルマザーと交際した男性に対し、慰謝料の一部の支払いを命じた判決もあります。
この場合に注意したいのは、相手の配偶者から、不貞行為を理由に慰謝料を請求される可能性があることです。相手が既婚であることを知らず、知らなかったことに落ち度もなかったといえれば、支払義務は否定される方向に働きます。そのためにも、「離婚した」と説明されていたやり取りを残しておくことが大切です。
また、既婚であると分かった後も交際を続けると、知らなかったという主張が通りにくくなることがあります。関係の終え方を含めて、次の記事で詳しく解説しています。
子どもの存在が分かったときに整理しておきたいこと
交際相手に前の配偶者との子どもがいると分かった場合、関係を続けるかどうかを考えるうえで、法律上の関係を知っておくと判断の材料になります。
- 離婚しても親子関係は続くため、相手は子どもに対する養育費の支払義務を負い続けます。
- 結婚しても、相手の子どもと自分との間に法律上の親子関係は生じず、養子縁組をした場合に限って親子となります。
- 前の配偶者との子どもは、相手が亡くなった場合の相続人になります。
- 2026年4月からは、離婚後も父母の双方が親権を持つ形が選べるようになったため、相手と前の配偶者との間で、子どもの養育についてのやり取りが続く場合があります。
子どもの存在を知ったうえで交際を続けるかどうかは、法律が決めることではありません。ただ、結婚後の家計や家族の形に関わる事情ですので、相手に事実を確認し、養育費の負担や子どもとの関わり方について話し合っておくことが望ましいといえます。
本当のことを確かめる方法と、その限界
相手の説明が事実かどうかを確かめる方法として、相手本人に戸籍謄本を取り寄せて見せてもらうことが考えられます。ただし、本籍を移す(転籍する)などして新しい戸籍が作られると、過去の離婚の記載は新しい戸籍に引き継がれないため、現在の戸籍謄本だけでは離婚歴が分からないことがあります。過去の婚姻歴まで確認するには、それ以前の除籍謄本などをさかのぼって見る必要があります。
他人の戸籍を本人に無断で取り寄せることは、原則としてできません。弁護士が職務上の必要から戸籍を請求できる制度もありますが、受任した事件の処理に必要な範囲に限られており、交際相手の身元を調べる目的では使えません。また、独身証明書が示すのは現在婚姻していないことであり、過去の離婚歴や子どもの有無までは分かりません。この点は【不貞慰謝料】独身証明書は何を証明しているのか|提出制でも防げないことでも触れています。
発覚した後にしておきたいこと・避けたいこと
しておきたいこと
- 離婚歴や子どもの有無について相手がどう説明していたか、メッセージや録音などの記録を残しておきます。
- 婚約の有無が問題になりうる場合は、両親への挨拶や式場の予約など、結婚に向けた準備の経過を整理しておきます。
- 相手に渡したお金や立て替えた費用があれば、日付と金額、渡した理由を一覧にしておきます。
避けたいこと
- 相手の離婚歴や子どもの存在をSNSなどに書き込むと、名誉毀損やプライバシーの侵害として、こちらが責任を問われるおそれがあります。
- 相手の元配偶者や子ども、勤務先に直接連絡することは、新たなトラブルの原因になりやすいため控えるのが無難です。
- 感情的に高額な金銭を要求すると、要求の仕方によっては、こちらの行為が問題にされることがあります。
相手の嘘を信じてお金を渡していた場合の整理は、【男女トラブル】病気や不幸の話を信じてお金を渡していた|嘘だと分かった後も参考になります。
よくあるご質問
交際して数か月で別れた場合でも、慰謝料を請求できますか
婚約に至っていない短期間の交際で、離婚歴や子どもの存在を話していなかったというだけでは、慰謝料の請求が認められる可能性は高くないと考えられます。ただし、相手が実際には離婚しておらず既婚者であった場合は、交際期間が短くても、貞操権の侵害として検討する余地があります。
相手が「聞かれなかったから言わなかっただけ」と説明しています
こちらから尋ねていなかった場合、相手の説明どおり「言わなかっただけ」と評価されることは少なくありません。一方で、結婚の話が具体的に進んでいたのに重要な事実を伏せ続けていたような場合には、話さなかったことの評価が変わる可能性もあります。いつ、どのような話をしていたのかを時系列で書き出しておくと、見通しを立てやすくなります。
弁護士に相談するとよい場面
離婚歴や子どもの存在を隠されていたと分かったとき、関係を終えるだけであれば、ご自身で区切りをつけられることも少なくありません。一方で、婚約の解消をめぐって慰謝料を求めたい、あるいは求められている場合や、相手の配偶者から請求を受けるおそれがある場合、渡したお金の返還を求めたい場合には、法的な見通しを踏まえて動くことが大切です。相手と直接話し合うことに負担を感じる場合は、弁護士が窓口となって交渉する方法もあります。当事務所の対応については【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご案内しています。
交際相手の過去を後から知ったとき、それが法的な問題になるかどうかは、隠されていた中身と交際の段階、そして相手がどのように説明していたかによって変わります。気持ちの整理がつかないうちは判断が難しいものですが、記録を手元に残し、何を求めたいのかを落ち着いて考えるところから始めてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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