不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された|減額・拒否できるケース
この記事は、2020年4月施行の改正民法を前提に解説しています。書面によらない贈与について、改正前は「撤回」と表現されていたものが、改正後は「解除」と表現されています(民法550条)。
交際中、食事代や旅行代、ホテル代などを相手が多めに負担していたというのは、珍しいことではありません。ところが別れ話が出たとたん、「今まで払ったデート代を返して」「せめて半分は返すのが筋だ」と求められることがあります。中には、レシートや決済アプリの履歴をもとに、細かな金額まで計算した一覧を送ってくる方もいます。
インターネット上の法律相談でも、別れる条件としてデート代の半額を求められた、元交際相手の代理人弁護士から交際期間中のデート代と慰謝料を求める書面が届いた、といった相談が繰り返し寄せられています。
結論からお伝えすると、交際中に相手が自分の意思で支払ったデート代を、別れたことだけを理由に返す義務が生じることは、通常は考えにくいとされています。ただし、立て替えの約束があった場合など、結論が変わる場面もあります。この記事では、返す必要がないとされる理由と例外になりうる場面、そして請求を受けたときの対応の順序を整理します。
こんなお悩みはありませんか
- 別れを切り出したら、交際中のデート代を全部返せと言われた。
- 「払わないなら会社や家族に話す」とメッセージが来た。
- 付き合っていた期間の食事代を一覧にした請求書が届いた。
- 割り勘にする約束だったと言われたが、そんな話をした覚えがない。
- 早く関係を終わらせたいので、言われた金額を払ってしまおうか迷っている。
交際中のデート代は、原則として「贈与」と考えられる
デート代を相手が支払うとき、多くの場合、その場で「後で返してね」という約束はありません。法律上は、相手が自分の財産を無償で与える意思を示し、こちらがそれを受け入れた「贈与」(民法549条)にあたると考えるのが一般的です。食事をご馳走になる、旅行の費用を出してもらうといった場面も、同じように整理されます。
支払いが済んだ部分は、後から解除できない
贈与契約書などの書面を作らない贈与は、各当事者が解除できるとされています。ただし、すでに履行が終わった部分は解除できません(民法550条)。デート代はその場で店に支払われ、食事やサービスも提供されているため、履行はすでに終わっています。そのため、後から「あの贈与はなかったことにする」と言っても、支払った分を取り戻す根拠にはなりにくいのです。
「別れたから返せ」は、それだけでは理由にならない
交際は、互いの意思で始め、互いの意思で終えられる関係です。別れたこと自体が、過去に贈与したお金を返す理由になるわけではありません。「結婚するつもりだったから払った」「好きだったから出した」という気持ちがあったとしても、それは支払った側の動機にとどまり、別れたら返すという約束にはならないと考えられています。
交際期間の長さや、どちらが多く負担していたかも、それだけで結論を左右するものではありません。この点は【男女トラブル】交際期間の長さは金銭の清算に影響するのかでも解説しています。また、「交際に費やした時間を返せ」という形で金銭を求められた場合については、【男女トラブル】別れを告げたら「今までの時間を返せ」と言われた|時間の対価は請求できるのかをご覧ください。
返還が問題になりうる4つの場面
原則は上のとおりですが、支払った当時の約束や事情によっては、返還が問題になることがあります。判断の基準は、別れた後の気持ちではなく、支払った時点で二人の間にどのような合意があったかです。
| 場面 | 相手の主張の例 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 立て替えの約束 | 「後で返してもらう約束だった」 | その場のやり取りやメッセージに返済の話が残っているか |
| 割り勘の取り決め | 「割り勘のはずだった」 | 割り勘の合意が事前にあり、精算が残っていたか |
| 別れたら返す条件 | 「別れたら返す約束だった」 | 条件をつけたことを示す記録があるか |
| だまされて支払った | 「最初から交際する気がなかった」 | 偽りの事情や、それを知りながら支払わせた事情があるか |
立て替えや割り勘の約束があった場合
「今日は立て替えておくから、後で半分ちょうだい」と言われて了承していた場合は、贈与ではなく立て替えとして、未精算の分を返す義務が生じることがあります。割り勘を前提に一方がまとめて払い、精算が残っていた場合も同様です。反対に、そうした約束がなく、お礼を伝えて終わっていたのであれば、贈与と見るのが自然でしょう。
「あげたのではなく貸した」と言われた場合
別れた後に「あれは貸しただけだ」と主張されることもあります。お金を貸したことを理由に返済を求める場合、貸したことを示す責任は請求する側にあります。返済の約束が読み取れるメッセージや借用書などがなければ、貸し借りと認められる可能性は高くありません。交際中に立て替えたお金をめぐる考え方は、交際中に立て替えた生活費・プレゼント代は返してもらえる?でも整理しています。
「別れたら返す」という条件がついていた場合
支払いの時点で「別れたら返す」と取り決めていた場合は、その条件に沿って返還が問題になることがあります(解除条件付きの贈与)。ただし、日々のデート代にこうした条件をつけることはまれで、条件があったことは請求する側が示す必要があります。なお、別れ話の最中に「返すよ」と口にしてしまうと、新たな約束と受け取られるおそれがあるため、注意が必要です。
だまして支払わせたといえる事情がある場合
交際する意思がないのに好意を装い、デート代を出させ続けていたなど、相手をだましていたといえる事情があれば、詐欺による取消し(民法96条)が問題になることもあります。もっとも、交際中の気持ちの変化は誰にでも起こり得るもので、「好きでなくなった」「別れた」という事実だけで詐欺にあたるわけではありません。
請求を受けたときに避けたい対応
- その場の勢いで「返します」「払います」とメッセージで送ること。
- 相手が作った一覧の金額を、中身を確かめないまま支払うこと。
- 「直接会って話をつけろ」という求めに、一人で応じること。
- 相手から届いたメッセージや通話の記録を削除すること。
- 相手が用意した借用書や誓約書に、その場で署名すること。
とくに「返します」というメッセージは、後に支払いを約束した証拠として扱われるおそれがあります。早く終わらせたいという気持ちから応じてしまうと、かえって次の要求を招くこともあります。すでに書面に署名してしまった場合は、【男女トラブル】別れ際に書いた誓約書を撤回したい|強く迫られて書いた書面をご覧ください。
請求の仕方が行き過ぎている場合
デート代の返還を求めること自体は、根拠が乏しくても、それだけで違法になるわけではありません。一方で、「払わなければ職場や家族に交際のことを話す」「写真をネットに載せる」などと告げて支払いを迫る場合は、請求の範囲を超え、脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(刑法249条)が問題になることがあります。自宅や職場への押しかけ、深夜の連続した連絡が続く場合は、ストーカー規制法の対象となる場面も考えられます。
こうしたメッセージは消さずに保存し、日時と内容がわかる形で残しておきましょう。身の危険を感じる場合は、ためらわずに警察に相談してください。届いた言葉をどう受け止めればよいかは【男女トラブル】既読無視をしたら脅すようなメッセージが来た|返信しないことの位置づけと、届いた言葉の見分け方で、記録の残し方は男女トラブルの証拠の集め方|LINE・録音・写真を法的に有効にするで詳しく扱っています。
内容証明や裁判所からの書類が届いたとき
相手やその代理人から内容証明郵便が届くことがあります。内容証明は、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明する仕組みであり、届いたことで支払義務が生まれるわけではありません。ただ、記載された請求の中身や回答の期限は今後の進め方を考える材料になりますので、放置せずに内容を確認しておきましょう。
一方、裁判所から訴状や支払督促が届いた場合は、期限内の対応が欠かせません。支払督促は、受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てないと、相手の申立てにより仮執行宣言が付され、強制執行に進むおそれがあります(民事訴訟法391条)。訴状についても、答弁書を出さずに期日を欠席すると、相手の言い分どおりの判決が出ることがあります。請求に根拠が乏しいと考える場合でも、手続には必ず応じてください。
早く関係を終わらせたいときの考え方
法的な支払義務がないとしても、「連絡を断ちたい」「職場に来られるのが不安」といった事情から、一定の解決金を払って区切りをつけたいと考える方もいます。その選択自体は不合理なものではありません。
ただ、その場合も口約束で支払うのではなく、清算条項(この合意のほかに互いに請求しないことの確認)と接触禁止の条項を入れた合意書を作り、和解として終えることが大切です(民法695条・696条)。書面がないまま支払うと、後日「まだ足りない」と追加の請求を受けるおそれがあります。すでに一度合意している場合の考え方は、【男女トラブル】一度は合意したのに相手が追加の要求をしてきた|前回の合意で終わっている範囲の見分け方をご覧ください。
相手と直接やり取りをしたくない場合は、弁護士が窓口となる方法もあります。弁護士から通知を送り、以後の連絡を弁護士あてにするよう求めることで、本人どうしのやり取りを終えられる場合があります。流れについては【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるで紹介しています。求められるまま長期間支払いを続けていたケースで、弁護士の通告後に支払いと接触が止まった例として、【解決事例】元交際相手から遊興費の返還を求められ4年近く毎月15万円を支払っていた女性|弁護士の通告で支払いと接触が止まった事例もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
デート代の半分だけなら返すべきでしょうか
割り勘の約束がなかったのであれば、半額であっても返す義務は通常ありません。「半分なら妥当」という考え方は相手の提案にすぎず、法的な基準ではありません。関係を穏やかに終えるために一部を払うという選択をする場合は、前述のとおり合意書を作ってから支払うようにしてください。
プレゼントや旅行代も同じように考えてよいですか
交際中に受け取ったプレゼントや、相手が負担した旅行代も、原則としてデート代と同じく贈与として扱われます。ただし、車の購入資金や住まいの費用など高額なものは、渡した経緯や当時のやり取りによって判断が分かれることがあり、個別の検討が必要です。同棲中の家賃や生活費については、【男女トラブル】同棲中の生活費|別れた後に家計を清算するで解説しています。
相手に知られずに弁護士へ相談できますか
相談しただけで、その内容が相手に伝わることはありません。相手に連絡をとるかどうかも、ご本人と方針を決めてから進めます。詳しくは【男女トラブル】相手に知られずに相談できるか|相談しただけで相手に伝わることはないをご覧ください。
まとめ
- 交際中に相手が自分の意思で支払ったデート代は、原則として贈与にあたると考えられます。
- 支払いが済んだ贈与は後から解除できず、別れたことだけを理由に返す義務は通常生じません。
- 立て替えや割り勘の約束、「別れたら返す」という条件があった場合は、返還が問題になることがあります。
- 「貸した」「条件があった」という主張は、請求する側が裏づけを示す必要があります。
- 職場や家族に知らせるなどと告げて支払いを迫られた場合は、脅迫や恐喝が問題になり得るため、記録を残して相談してください。
- 解決金を払って終える場合も、清算条項と接触禁止条項を入れた合意書を作ってから支払うことが大切です。
「デート代を返せ」という請求は、金額がそれほど大きくなくても、関係を終えようとしている時期に届くため、精神的な負担が大きくなりがちです。払う必要があるのか、どう返事をすればよいのかが分からない段階でも、当時のやり取りを整理することで見通しが立つことがあります。当事務所のサービス内容は、【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご案内しています。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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