【男女トラブル】交際相手に頼まれて買ったブランド品は、別れたら返してもらえる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

交際中に相手から「これが欲しい」と頼まれ、ブランドのバッグや財布、時計などを買って渡したものの、その後に別れることになった。そうした場面で、「あれだけ高い物を買ったのだから、返してもらいたい」と考える方は少なくありません。結論からお伝えすると、頼まれて買った物であっても、プレゼントとして渡した物は、原則として返還を求めにくいと考えられています。ただし、買ったときのやり取りによっては、代金の支払いや品物の返還を求められる余地が残る場合もあります。本記事では、その分かれ目と、返還を求める場合の進め方を整理します。

本記事は、婚約に至っていない交際関係を主な前提として、2026年10月時点の民法の規定をもとに解説しています。婚約や内縁の関係にある場合は、別の考え方が加わることがあります。


交際相手に買ったブランド品は、原則として「贈与」にあたる

 自分のお金で品物を買い、見返りを求めずに相手へ渡す行為は、法律上「贈与」と呼ばれる契約にあたります。民法549条は、一方が財産を無償で与える意思を示し、相手がそれを受け入れることで贈与の効力が生じると定めています。契約書を作っていなくても、「買ってあげる」「ありがとう」というやり取りがあれば、贈与は成立します。

 書面によらない贈与は、民法550条により解除できるとされています。ただし、同じ条文のただし書きで、すでに品物を渡し終えた部分については解除できないとされています。交際中に買って渡したブランド品は、渡した時点で贈与が履行済みとなるため、後から「やはり返してほしい」と一方的に取り消すことは、原則として難しいと考えられます。

 また、別れの原因がどちらにあるかは、贈与の効力そのものには通常影響しません。相手の心変わりや浮気が別れのきっかけだったとしても、それだけを理由に、渡したブランド品の返還を求めることは難しいというのが一般的な考え方です。これに対し、品物を「貸していただけ」で、持ち主が自分のままである場合には、返還を求めることができます。

「頼まれて買った」ことで結論は変わるのか

 相手からねだられた、繰り返し頼まれて断りきれなかったという事情があっても、それだけで贈与でなくなるわけではありません。結論を左右するのは、頼まれたかどうかよりも、買って渡すときに二人の間でどのような約束があったかです。代表的なパターンを整理すると、次のようになります。

購入時のやり取りの例法的な整理返還を求められる可能性
「誕生日だから買ってあげる」贈与低い
「立て替えておくから、後で払ってね」代金の立替(貸付)あり
「お金が入ったら返すから、先に買って」代金の立替(貸付)あり
「婚約の証として」「結婚の記念に」結婚を前提とした贈与婚約の成否や経緯による
好意を装い、品物を得ることが目的だった詐欺・不法行為の問題あり(立証が課題)


 以下、贈与以外の整理になりうる場面を順に見ていきます。

「後で払う」という約束があった場合

 購入時に「代金は後で払う」「立て替えておいて」といった約束があった場合、品物を贈ったのではなく、代金を立て替えた、つまりお金を貸したと整理できる余地があります。この場合に求めることになるのは、品物そのものの返還ではなく、立て替えた代金の支払いです。

 問題になりやすいのは、相手が「プレゼントだと思っていた」と主張したときです。口約束だけでは、どちらの言い分が正しいかを示すことは簡単ではありません。「立て替えてくれてありがとう、来月返すね」といったメッセージや、一部を返してもらった振込記録など、立替だったことをうかがわせる記録が重要になります。立替金の考え方は交際中に立て替えた生活費・プレゼント代は返してもらえる?でも解説しています。

結婚や婚約を前提に買った場合

 婚約指輪や結納のように、結婚が成立することを前提に渡された物は、婚約が解消されて結婚に至らなかった場合に、返還の対象となることがあります。結婚が実現しないことで、受け取っておく理由がなくなると考えられるためです。ただし、婚約解消の主な原因が贈った側にある場合には、返還を求めることは認められにくいとされています。

 一方、交際の段階で誕生日やイベントに合わせて買ったブランド品は、結婚を前提とした贈与とは評価されにくいのが通常です。「いずれ結婚するつもりだった」という気持ちがあっただけでは足りず、婚約が成立していたか、その品物が婚約や結婚と結びついて渡されたかが問われます。詳しくは結婚を前提に渡したお金・結納金は返還請求できるかをご覧ください。

品物目当てに好意を装われていた場合

 相手に最初から交際する意思がなく、ブランド品を手に入れるために好意を装っていたといえる場合には、詐欺を理由に贈与を取り消す(民法96条)、あるいは不法行為として損害賠償を求める(民法709条)という道が考えられます。結婚をほのめかして高額な品物を買わせていたような場合も、同じ観点から検討されます。

 もっとも、交際中に相手に好意があったかどうかは外から見えにくく、立証のハードルは高くなりがちです。同じ時期に複数の人へ同様の依頼をしていた、受け取った直後に売却していた、別れた途端に連絡を絶ったといった事情が、判断の材料になることがあります。結婚をほのめかされていた場合については、結婚詐欺に遭ったかも|結婚詐欺の立証と損害賠償請求もあわせてご覧ください。

条件をつけて買っていた場合

 「〜してくれるなら買う」と条件をつけて渡した物は、民法553条の負担付贈与として、相手が約束を守らなければ解除を検討できる場合があります。ただし、「別れないこと」「交際を続けること」を条件とする約束は、相手の交際の自由を制約する内容であるため、法的な効力が認められにくいと考えられます。別れたことだけを理由に、条件違反として返還を求めるのは難しいのが実情です。

返還を求める前に整理しておきたい記録

 返還を求められるかどうかは、最終的には残っている記録によって判断されます。手元に次のようなものがないか、確認しておくことをおすすめします。

  • 品物を頼まれたときのLINEやメッセージ。
  • 「後で払う」「返す」など、支払いの約束が読み取れるやり取り。
  • 購入日と金額がわかるレシート、保証書、クレジットカードの利用明細。
  • 品物を渡した日と、そのときの状況がわかる記録。
  • 婚約していた場合は、婚約の事実を示す記録(両家への挨拶、式場の予約など)。
  • 別れに至った経緯がわかるやり取り。


 なお、相手がすでに品物を売却している場合、物そのものを取り戻すことは現実的には難しくなります。その場合は、代金に相当する金額の支払いを求められるかという問題に置き換えて考えることになります。

返還を求める進め方と、避けたい行動


話し合いでは、求める内容を具体的にする

 まずは、何を、なぜ返してほしいのかを具体的に伝えることが出発点になります。「全部返して」と感情的に求めるよりも、「立て替えた代金を、いつまでに振り込んでほしい」のように、根拠と金額、期限をはっきりさせたほうが、相手も応じるかどうかを判断しやすくなります。やり取りは、後から確認できるよう文字で残しておくと安心です。

応じてもらえない場合の手続

 話し合いで解決しない場合には、内容証明郵便で請求の内容を正式に伝える方法があります。それでも支払いがない場合、請求額が60万円以下の金銭の支払いであれば、原則として1回の期日で審理を終える少額訴訟を利用できます。少額訴訟は金銭の支払いを求める手続のため、品物そのものの返還を求める場合や、金額が60万円を超える場合は、通常の訴訟などを検討することになります。金銭の回収の進め方は恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?でも整理しています。

自分で取り返す・何度も連絡するのは避ける

 返してもらえないからといって、相手の部屋に入って品物を持ち出すと、たとえ自分が代金を払った物であっても、住居侵入罪や窃盗罪に問われるおそれがあります。法律上の手続を経ずに自分の力で権利を実現すること(自力救済)は、原則として認められていません。

 また、返還を求める目的の連絡であっても、何度も電話やメッセージを送る、自宅や職場の近くで待つといった行動が重なると、つきまといとして扱われるおそれがあります。相手の家族や勤務先に事情を伝えて圧力をかけることも、新たなトラブルにつながりかねません。この点は【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で詳しく解説しています。連絡の頻度や方法に不安がある場合は、弁護士を窓口にすることも一つの方法です。

ローンや分割払いが残っている場合

 ブランド品を自分名義のクレジットカードの分割払いやローンで買っていた場合、別れた後も、支払いの義務を負うのは契約者である自分です。相手と別れたことで、カード会社やローン会社への支払いがなくなるわけではありません。

 相手に代金を負担してもらえるかどうかは、先に見た「贈与か、立替か」という整理によって決まります。贈与と評価される場合には、残りの支払いを相手に求めることは難しく、立替だったといえる場合には、相手に支払いを求める余地があります。

よくあるご質問


相手の浮気が原因で別れた場合でも、返してもらえないのですか

 婚約に至っていない交際関係であれば、別れの原因がどちらにあるかは、贈与の効力に通常影響しません。浮気が原因だったとしても、それだけで渡したブランド品の返還を求めることは難しいと考えられます。ただし、婚約が成立していた場合には、正当な理由のない婚約破棄による損害賠償という別の観点から検討できることがあります。

交際期間が短くても、同じ考え方になりますか

 交際期間の長さは、贈与が成立しているかどうかの判断に直接は関係しません。ただ、知り合って間もない時期に高額な品物を繰り返し求められていたような場合には、品物目当てだった可能性を検討する一つの事情になることがあります。

逆に、受け取った側が「返して」と言われた場合はどうなりますか

 受け取った側から見ても、考え方は同じです。プレゼントとして受け取った物であれば、原則として返す義務はないと考えられます。ただし、立替や貸付の約束があった場合はこの限りではないため、当時のやり取りを確認しておくことが大切です。

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まとめ

 交際相手に頼まれて買ったブランド品は、プレゼントとして渡している限り、別れた後に返還を求めることは原則として難しいと考えられます。一方で、「後で払う」という約束があった場合や、婚約を前提にしていた場合、品物目当てに好意を装われていた場合には、支払いや返還を求められる余地があります。どの整理にあたるかは、購入時のやり取りや残っている記録によって変わるため、感情的に動く前に、まず事実を整理することが大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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