【風俗トラブル】指名を重ねていた女性から急に「無理やりだった」と言われたら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は、2026年10月時点の刑法(令和5年改正後の176条・177条、令和7年6月施行の拘禁刑を反映)、刑事訴訟法、民法の規定をもとに解説しています。個別の事案での見通しは、事情によって大きく変わります。


「1年近く同じ女性を指名して通っていた。これまで何も言われなかったのに、急に店から『無理やりだったと本人が言っている』と連絡が来た」。風俗店の利用をめぐるご相談では、このように長く続いた関係の中で、突然申告を受けたという方が少なくありません。一方で、店や女性の側からは「何度も来てくれるお客さんだったから、嫌だと言い出せなかった」という説明が示されることもあります。

 インターネット上では「同意があれば罪にはならない」「本番は同意があっても店の禁止行為」といった説明がよく見られます。いずれもそれ自体は誤りではありません。ただ、指名を重ねてきたという関係が、同意の判断の中でどう扱われるのか、なぜ時間が経ってから急に申告されるのかといった点は、一般的な説明からは見えにくいところです。

 この記事では、「常連」「指名」という継続した関係に特有の論点に絞って、同意の考え方、急な申告の背景の整理、最初の数日にしておきたいことを解説します。不同意性交等罪の成立要件そのものは「本番=即逮捕」ではない|不同意性交等罪の成立要件を条文から確認する、証拠の一般論は「同意があった」を証明できるか|風俗トラブルの証拠と限界で詳しく扱っています。

「常連だった」ことは同意の証明にならないが、無関係でもない

同意は一回ごと、行為ごとに問われる

 不同意性交等罪(刑法177条1項)は、暴行や脅迫、不意打ち、地位に基づく影響力など8つの類型(同法176条1項各号)やこれらに類する事情によって、相手が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にあるときに性交等をした場合に成立します。法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。

 ここで問われるのは、問題とされている「その日の、その行為」について同意があったかどうかです。「何度も指名していた」「以前は応じてくれていた」という事情だけで、その回の同意があったことにはなりません。前回までの経緯は、今回も同意していたことを当然に意味するものではないためです。

 なお、売春防止法には、対価を払って性交した客を処罰する規定はありません。もっとも、それは不同意性交等罪の問題とは別の話です。店のルールで禁止されている行為を以前から続けていたという事情は、客の側からは「お互いに了解していた」根拠として、女性の側からは「断り切れずに続いていた」根拠として、それぞれ逆の意味で持ち出されることがあります。

長く続いた関係が意味を持つ場面

 一方で、継続した関係がまったく考慮されないわけではありません。当日の言動をどう評価するかを考えるうえで、それまでの経緯は判断材料の一つになります。たとえば、当日までの個人的なやり取りの内容、当日の直後に交わしたメッセージ、問題とされた日の後も女性の側から次回の来店を促す連絡が続いていたかどうか、といった事情です。

 ただし、風俗店での関係は接客という仕事の中で生まれたものです。親しげなメッセージも、営業上のやり取りとして読まれる可能性があります。交際関係で継続的な関係が同意の判断にどう関わるかについては、交際中・夫婦間でも成立するのか|継続的関係と同意の推認で整理していますが、風俗店の指名客の場合は、交際の場合よりも慎重に読まれると考えておくのが現実的です。

「指名を失いたくなくて断れなかった」という説明

 指名を重ねる客は、女性にとって収入に関わる存在でもあります。そのため、「断れば指名がなくなると思った」という説明がされることがあります。刑法176条1項8号は「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」を類型の一つに挙げています。

 この類型は、上司と部下のように一方が相手の立場を左右できる関係を典型として想定したものです。指名客という立場がこれに当たるかどうかは個別の事情次第で、常連客であることだけで直ちに当たるとは考えにくいところです。それでも、主張の材料として持ち出されることはあり得ます。各類型の読み方はどの類型で立件されているのか|不同意性交等罪の8つの要因の読み方、拒絶の言葉がなかった場合の考え方は拒絶の言葉がなかった|「同意しない意思の形成・表明・全うが困難」の意味をご参照ください。

「急に」言われた背景を整理する

どの日の、どの行為についての話なのか

 最初に確かめたいのは、「無理やりだった」という申告が特定の1回についての話なのか、それとも「これまでずっと嫌だった」という話なのかです。常連の場合、後者の形で申告されることが少なくありません。対象が複数回にわたると、請求される金額の考え方や、刑事手続での扱いも変わってきます。

 相手の言い分を受け止める前に、まず「いつの、何についての話か」を特定することが出発点になります。何年も前の利用まで含まれている場合は、時効との関係も問題になります。不同意性交等罪の公訴時効は15年です(刑事訴訟法250条3項2号)。詳しくは風俗トラブルの時効早見表|公訴時効と民事の消滅時効はいつ終わるのかをご覧ください。

関係の変化と申告の時期が重なっていないか

 長く続いた関係の中で急に申告がされる場合、その前後に関係の変化があることが少なくありません。たとえば、次のような事情です。

  • 店の外で会うようになった、あるいは店外で会うことを断った・断られた。
  • 個人的な連絡をやめた、または頻度が大きく変わった。
  • 女性が退店や引退を考えていた、あるいは交際相手や家族に利用客との関係を知られた。
  • 贈り物や金銭の貸し借りがあり、その扱いをめぐって話がこじれた。


 こうした事情は、経緯として整理しておく価値があります。ただし、申告の時期に何らかのきっかけがあったからといって、申告の内容がそのまま事実と異なることにはなりません。動機の話と、当日に何があったかの話は分けて考える必要があります。店の外での関係が絡む場合のリスクは風俗嬢と店外・プライベートで会ってトラブルに|「店を通さない」リスクでも解説しています。

誰から連絡が来たかで、最初の動きが変わる

 申告がどの経路で届いたかによって、最初に気をつける点が異なります。

連絡してきた相手最初に意識したいこと
女性本人(個人のLINEなど)返信で事実を認めたり、説得を試みたりしない
店のスタッフ・責任者その場で書面に署名しない、金額を即答しない
女性の代理人弁護士書面の内容と回答期限を確認し、こちらも弁護士を通す
警察呼出しの日時と用件を確かめ、出頭の前に相談する


 女性本人から個人的に連絡が来た場合の扱いは【風俗トラブル】キャスト本人から個人のLINEで連絡が来た|店を通さない請求の扱い、警察が関わっている場合は【風俗トラブル】被害届が受理されたと言われた|その後の流れと呼び出しまでの期間で詳しく扱っています。

最初の数日にしておきたいこと・避けたいこと

手元の記録を消さずに残す

 常連客には、一度きりの利用客にはない記録が残っていることが多くあります。次のようなものは、内容にかかわらず消さずに保存しておきます。

  • 予約確認のメールやアプリの履歴、決済の記録など、指名の回数と時期が分かるもの。
  • 女性との個人的なやり取り(一部ではなく全体を、日付が分かる形で)。
  • 問題とされた日の入室・退室の時刻、支払い、その後の連絡の流れ。
  • 贈り物や金銭のやり取りが分かるもの。
  • 店や女性から届いた連絡の内容。


 自分に不利に見えるやり取りがあっても、削除すると、その行為自体が後で不自然に見られるおそれがあります。どの記録をどう使うかは、弁護士に全体を見せたうえで判断するのが安全です。整理の仕方は【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料を参考にしてください。

女性に直接連絡して説得しない

 長く指名してきた相手だからこそ、「直接話せば分かってもらえる」と考えるのは自然なことです。しかし、申告を受けた後に本人へ連絡し、申告の撤回を求めたり事情を説明したりすると、相手の受け止め方によっては圧力と受け取られかねません。刑事手続に進んだ場合には、証拠隠滅や関係者への働きかけのおそれがあると見られ、身柄拘束の判断に影響する可能性もあります。刑法には、事件の関係者に面会を強請したり威迫したりする行為を処罰する規定もあります(刑法105条の2)。

 謝罪や説明をしたい気持ちがある場合も、弁護士を通じて伝える方法を検討するのが適切です。

その場で認める書面に署名しない・すぐに払わない

 店から「無理やりしたことを認める」という内容の書面への署名や、規約に基づく違約金の支払いを求められることがあります。事実関係を確認しないまま署名すると、後でその書面が不利な資料として扱われるおそれがあります。

 また、お金を払っても、書面に清算条項や宥恕(許すという意思表示)の条項がなければ、後から追加の請求や被害届が出る可能性は残ります。なお、弁護士ではない店の関係者が報酬を得る目的で示談交渉を代行することは、弁護士法72条に触れる可能性があると指摘されています。示談をするときの書面の作り方は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで解説しています。

刑事と民事、それぞれの見通し

刑事|被害届・告訴が出た場合

 被害届や告訴が出されると、警察から任意での事情聴取の連絡が来るのが一般的な流れです。事案によっては逮捕されることもあります。当日の行為について自分の認識と異なる説明がされている場合、取調べでどう話すかは、その後の処分に大きく関わります。

 常連の事案では、取調べで「これまで何回利用したか」「店外で会っていたか」といった関係の全体について聞かれることが多くなります。事前に弁護士と時系列を整理しておくことで、記憶違いによる説明のぶれを防ぎやすくなります。

民事|慰謝料などの請求

 刑事手続とは別に、女性の側から不法行為(民法709条)に基づく慰謝料などを請求されることもあります。店が規約に基づく違約金や営業損害を主張してくることもありますが、規約の金額がそのまま認められるとは限りません。請求の中身を項目ごとに分けて検討することが大切です。

争うか、合意で終えるか

 当日の認識に食い違いがある場合でも、刑事手続にかかる時間や負担、職場や家族への影響を考えて、解決金を支払って合意で終える選択をすることがあります。合意で終える場合でも、「無理やりだったことを認める」という文言を入れるかどうかなど、書面の言葉の選び方は慎重に検討する必要があります。どちらを選ぶかは、記録の内容や相手の要求、ご本人の事情によって変わるため、早い段階で方針を立てておくことが望まれます。

よくあるご質問

以前は何度も応じてくれていたのに、それでも罪に問われるのですか?

 同意の有無は、問題とされた回ごとに判断されます。以前に応じていたという事情だけで、その回の同意があったとはされません。ただし、それまでの経緯は当日の言動を評価する材料の一つにはなります。誘われた場合の考え方はデリヘル嬢から誘われた本番でも罪になる?「同意していた」が通用しない理由もご参照ください。

女性と親しげなLINEのやり取りが残っています。見せれば疑いは晴れますか?

 やり取りは大切な資料になり得ますが、それだけで疑いが晴れるとは限りません。接客の一環としてのやり取りと読まれる可能性があるためです。一部だけを切り取って示すと、かえって不自然に見られることもあります。全体を保存したうえで、どの部分をどう示すかは弁護士と相談して決めるのが安全です。

店から「出禁だ」と言われた後、何も連絡がありません。終わったと考えてよいですか?

 連絡が途絶えたことだけで、問題が終わったとは言い切れません。不同意性交等罪の公訴時効は15年と長く、時間が経ってから被害届が出されることもあります。記録を保存し、連絡が来たときに慌てずに対応できるよう備えておくことが大切です。出入り禁止と請求の関係は【風俗トラブル】「ブラックリストに載せた」「出禁だ」と言われた|出入り禁止と請求の関係で解説しています。

まとめ


  1. 不同意性交等罪は、同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態での性交等で成立し、同意は問題とされた回ごとに判断される(刑法177条1項、176条1項各号)。
  2. 「何度も指名していた」「以前は応じてくれた」という事情だけで、その回の同意があったことにはならない。
  3. 継続した関係は当日の言動を評価する材料の一つにはなるが、接客上のやり取りとして読まれる可能性もある。
  4. 指名客の立場が「地位に基づく影響力」に当たるかは個別の事情次第である(刑法176条1項8号)。
  5. まず「いつの、何についての申告か」を特定する。公訴時効は15年である(刑事訴訟法250条3項2号)。
  6. 記録は消さずに保存し、女性本人への直接の連絡や、認める内容の書面への署名は避ける(刑法105条の2参照)。
  7. 民事の請求(民法709条)や店の違約金は項目ごとに検討し、合意する場合も書面の文言を慎重に選ぶ。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店の利用をめぐるトラブルのご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。店や女性の代理人との交渉、警察から連絡が来た後の対応まで、ご事情に応じて方針を一緒に考えます。

指名を重ねてきた女性から急に「無理やりだった」と言われ、どう受け止めればよいか分からない方も、すでに店や代理人から請求を受けている方も、手元の記録を消さずにお持ちいただき、早めにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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