【風俗トラブル】店から「弁護士を入れたら話は終わりだ」と言われた
この記事は、2026年11月2日時点の刑法、民法、民事訴訟法、個人情報の保護に関する法律の規定に基づいて書いています。刑罰の表記は、2025年6月1日に施行された改正刑法による「拘禁刑」に改めています。
「会社の代表番号に、名前をはっきり名乗らない男性から『〇〇さんはいらっしゃいますか』と電話があったと同僚から聞いた。数日前に風俗店ともめたばかりで、店からの電話ではないかと気が気でない」。風俗店とのトラブルの後、このようなご相談をいただくことがあります。用件を告げずに在籍だけを確かめる電話は、それだけで大きな不安を生むものです。
この記事では、店から勤務先に「在籍確認」とみられる電話がかかってきたときに、その電話が法的にどう位置づけられるのか、電話があった日に職場でできることは何か、会社にどこまで話すべきかを順に整理します。勤務先を書面に書かされた後に起こり得ることの全体像は【風俗トラブル】勤務先や実家の住所を書かされた後、何が起こり得る?で、名刺や社員証から職場を知られた場合については【風俗トラブル】名刺や社員証を見られてしまったら、職場に連絡されることはある?で取り上げています。
店が勤務先に在籍確認の電話をかけてくる理由
店が客の勤務先に電話をかけてくる目的は、一つとは限りません。よく見られるのは次のような場面です。
- 誓約書や念書に書かせた勤務先が実在するかどうかを確かめようとしていることがあります。
- 本人の携帯電話がつながらなくなり、連絡の手がかりを探していることがあります。
- 「職場も把握している」と本人に伝わるようにして、支払いを促そうとしていることがあります。
いずれの場合も、電話の段階では用件を告げず、個人名や取引先のような名前を名乗ることが少なくありません。一方で、勤務先に連絡をしてくるのは店だけではないため、相手が誰なのかを切り分けておくことが大切です。
| 連絡してくる相手 | 連絡の形の傾向 | 考えられる用件 |
|---|---|---|
| 店や店の関係者 | 個人名や取引先を装った電話が多く、用件を言わないことが多い | 在籍の確認、本人への接触、支払いの催促 |
| キャストの知人を名乗る人物 | 個人名での電話や来訪 | 本人への接触、金銭の要求 |
| 警察 | 会社への照会は書面で行われることが多く、本人への連絡は携帯電話や自宅が中心 | 捜査上の確認 |
| 裁判所 | 住所に送れない場合などに限り、勤務先に書類が送られることがある | 訴状や支払督促の送達 |
| 相手方の弁護士 | 弁護士名と事務所名を名乗る | 代理人としての連絡 |
警察が会社に確認をするときは、「捜査関係事項照会」として書面で届くのが通常で、用件を伏せて在籍だけを尋ねる電話とは形が異なります。会社に照会が届いた場合の考え方は【刑事事件】会社に捜査関係事項照会が届いた|従業員として知っておくことで取り上げています。また、裁判所からの書類が勤務先に送られるのは、住所や居所が分からない場合や、そこに送ることに支障がある場合に限られています(民事訴訟法103条2項)。
在籍確認の電話は、それ自体が違法なのか
電話で何を言ったか、何のためにかけたかによって、法的な評価は変わります。
在籍を確かめるだけの電話
「〇〇さんはいらっしゃいますか」と尋ね、トラブルの内容に触れずに切る電話が一度あっただけでは、直ちに犯罪にあたるとはいいにくいのが実情です。ただし、店は客の個人情報を扱う事業者として、不当な行為を助長するおそれのある方法で情報を使うことを禁じられています(個人情報保護法19条)。支払いを迫る目的で勤務先の情報を使っている場合には、利用の停止を求める根拠になり得ます(同法35条1項)。
事情を告げる電話や、繰り返される電話
電話に出た同僚や上司に、風俗店でのトラブルの内容を告げた場合には、名誉毀損(刑法230条)やプライバシーの侵害(民法709条、710条)の問題になり得ます。名誉毀損が成立するには、不特定または多数の人に伝わる状況が必要とされていますが、聞いた人を通じて社内に広がるおそれがある場合には、その要件を満たすと判断されることもあります。また、業務に支障が出るほど電話をかけ続けたり、身分を偽って取り次がせたりする行為は、業務妨害(刑法233条、234条)にあたる可能性があります。
支払いの要求と結びついた電話
在籍確認の電話と前後して、「払わなければ会社に事情を話す」といった連絡が本人に届いている場合には、勤務先への電話そのものが圧力の一部として評価され得ます。金銭を支払わせる目的で勤務先への連絡をちらつかせれば恐喝(刑法249条)、義務のないことをさせる目的であれば強要(刑法223条)の問題になり得ます。脅しを受けたときの考え方は「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法で整理しています。
ここまでの内容をまとめると、次のようになります。
| 電話の内容 | 問題になり得る点 |
|---|---|
| 在籍だけを尋ねる電話が一度あった | 直ちに犯罪とはいいにくい。支払いを迫る目的であれば、個人情報の不当な利用にあたり得る(個人情報保護法19条) |
| 同僚や上司にトラブルの内容を告げた | 名誉毀損(刑法230条)、プライバシーの侵害(民法709条、710条) |
| 業務に支障が出るほど繰り返す、身分を偽って取り次がせる | 業務妨害(刑法233条、234条) |
| 支払いの要求と結びつけている | 恐喝(刑法249条)、強要(刑法223条) |
電話があった日に、職場でできること
電話があったと聞くと、すぐに店へ連絡して止めてもらいたくなるかもしれません。ただ、慌てて動く前に、職場の中で整えておけることがあります。
電話を受けた人に、聞き取った内容を残してもらう
同僚や受付の方が電話を受けた場合は、可能な範囲で次の点をメモしてもらうよう頼んでおくと、後で相手を特定したり、行為の内容を示したりする材料になります。
- 電話があった日時。
- 相手が名乗った名前や会社名。
- 着信した番号(表示されていた場合)。
- 相手が話した内容(できるだけ言われたままの言葉)。
- 折り返しを求められた連絡先。
頼む際に、トラブルの中身まで説明する必要はありません。「私用の件で心当たりのない電話が来ているので、取り次がずに用件と連絡先だけ聞いておいてほしい」と伝える程度で足りることが多いでしょう。会社によっては、外部からの在籍の問い合わせには答えない扱いにしているところもあります。
自分に取り次がれてしまった場合
電話が自分につながってしまった場合は、職場の中でトラブルの話を続けないことを優先します。「今は業務中なので、この電話ではお話しできません」とだけ伝えて切ることも一つの方法です。その場で支払いや面会の約束をする必要はありません。また、職場の電話から相手の番号に折り返すことは避けたほうがよいでしょう。周囲に会話を聞かれるおそれがあるためです。
自分の手元の記録を整える
店やキャストからの携帯電話への着信履歴、メッセージ、留守番電話は消さずに保存しておきます。勤務先への電話と、本人への支払いの催促が時期的に重なっていることを示せれば、電話が圧力の一部であったことを説明しやすくなります。店からの着信に折り返すかどうか迷う場合の考え方は【風俗トラブル】帰宅途中に店から着信が続いている|折り返す前に決めておくことで取り上げています。
しないほうがよい対応
勤務先に電話が来ると、「会社にだけは知られたくない」という気持ちから、次のような対応をとってしまうことがあります。いずれも、かえって状況を長引かせるおそれがあります。
- 会社への電話をやめてもらう代わりに、求められた金額を支払うこと。
- 電話を止める条件として、新しい誓約書や念書に署名すること。
- 店の事務所や指定された場所に、一人で出向くこと。
- 同僚や上司に、事実と異なる説明を先回りしてしておくこと。
- 店からの連絡を、内容を確かめないまますべて削除すること。
支払えば電話が止まるという保証はなく、「勤務先に連絡すれば応じる人だ」と受け止められて、要求が続くこともあります。
会社に事情を話すべきか
在籍確認の電話が一度あっただけの段階であれば、自分から会社に詳しい事情を説明する必要はないことが多いと考えられます。違法な行為を伴わない風俗店の利用は私生活上の事柄であり、会社に報告する義務があるわけではありません。
他方で、電話が繰り返されて業務に影響が出ている場合や、相手が会社を訪ねてくるおそれがある場合には、上司や総務の担当者に「私用のトラブルで不審な電話が来ており、弁護士に相談している」とだけ伝えておくことも考えられます。伝える相手や範囲、言い方は、相談のうえで決めると安心です。会社に知られる経路と、懲戒などの影響については風俗トラブルが原因の失職・懲戒|会社にバレる典型ルートと防止策で、通知制度と事実上の伝達の違いは勤務先に伝わる経路|通知制度と事実上の伝達を分けるで整理しています。
弁護士に窓口を移すと、何が変わるのか
弁護士が依頼を受けると、店やキャストに対して受任を知らせる通知を送り、今後の連絡は弁護士にするよう、本人や勤務先、家族へは直接連絡しないよう求めます。通知の働きについては受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで解説しています。
通知を送れば必ず電話が止まるというものではありません。ただ、連絡の窓口が明確になることで、店の側が勤務先に電話をかける理由は乏しくなります。通知の後も勤務先への電話が続く場合には、記録をもとに改めて中止を求めるほか、業務妨害や恐喝などとして警察に相談すること、損害賠償を求めることなども検討することになります。もとになったトラブルについての話し合いも、並行して弁護士が進めます。
よくあるご質問
電話の相手が店だという確証がありません。それでも相談してよいですか?
確証がない段階でも、ご相談いただいて差し支えありません。電話の時期や話し方、店とのやり取りの経過を伺ったうえで、店からの電話として備えるべきか、ほかの可能性を考えるべきかを一緒に整理します。
会社の人が「在籍しています」と答えてしまいました。もう手遅れでしょうか?
在籍していると答えただけで、トラブルの内容が会社に伝わったわけではありません。相手が確かめられたのは、書かれた勤務先が実在するという点にとどまります。そこから先の連絡をどう止めるかを考えることが大切です。
弁護士に相談したことが、会社に伝わることはありますか?
弁護士には守秘義務があり、ご本人の了解なく会社に連絡することはありません。連絡の方法や書類の送付先についても、ご希望を伺って配慮します。職場や家族に知られずに進める考え方は家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説で取り上げています。
まとめ
- 店が勤務先に在籍確認の電話をかけてくるのは、書かれた勤務先の確認、連絡の手がかり探し、支払いを促す圧力などの目的によることが多いです。
- 警察や裁判所からの連絡は形が異なることが多いため、まず相手を切り分けます。
- 在籍を尋ねるだけの電話が一度あっただけでは直ちに犯罪とはいいにくいものの、事情を告げたり繰り返したりすれば、名誉毀損や業務妨害の問題になり得ます。
- 支払いの要求と結びついていれば、恐喝や強要の問題になり得ます。
- 電話を受けた人にはメモを残してもらい、自分は職場で話を続けず、手元の記録を保存しておきます。
- 電話を止めるための支払いや新たな署名は避け、必要に応じて連絡の窓口を弁護士に移します。
勤務先への電話は、たとえ一度でも、仕事が手につかなくなるほどの不安につながるものです。ただ、電話の中身や前後のやり取りを整理すると、急いで何かを決めなくてよい場面も少なくありません。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


