情状証人の陳述書はどう作るのか|文例と想定質問
この記事は、刑事訴訟法(39条・60条・81条・89条・147条・198条・223条)、刑法(104条・105条・105条の2)、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(116条・117条・218条・219条・220条・222条・224条)をもとに、2026年10月時点の内容で解説しています。拘禁刑の導入(2025年6月施行)後の条文の表記に合わせています。成人の事件を前提としており、少年事件の手続には触れていません。面会の時間や回数などの細かな運用は、警察署や拘置所によって異なります。
ご家族が逮捕され、本人が容疑を否認しているという方からは、「面会で『本当にやっていないの』と聞いてしまい、気まずいまま時間が終わってしまった」というご相談をいただきます。一方で、事件が一段落した後のご本人から、「家族に『認めれば早く出られるんじゃないか』と言われ、気持ちが揺らいだ」という話を聞くこともあります。
家族の面会については「事件の話はせず、励ましの言葉を中心に」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、本人が否認している事件では、どこまでが「事件の話」にあたるのか、家族自身が抱く疑問をどこへ持っていけばよいのかが、その説明だけでは見えにくいところです。
この記事では、否認しているご家族と面会する場面に絞って、面会がどのような場なのか、伝えてよいことと控えたいこと、家族が本人の話を信じきれないときの向き合い方を整理します。面会できるかどうかの確かめ方は【刑事事件】逮捕された家族に今日会えるか|接見禁止の見分け方、差し入れの実務は留置場への差し入れと手紙|家族ができる支援の実務で扱っています。
否認している家族との面会は、どのような場なのか
面会には職員が立ち会い、内容は記録される
警察署の留置施設にいる本人と家族が面会するときは、留置担当の職員が立ち会い、またはその状況が録音・録画されることになっています(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律218条1項。以下「刑事収容施設法」)。拘置所に移った後も、同じように立会いなどが行われます(同法116条1項)。
面会の時間や回数も制限されており、多くの警察署では1日1回、15分から20分程度とされています(同法220条5項・6項)。限られた時間の会話を、職員が聞いているという前提で話すことになります。
罪証隠滅につながる発言は制止され、面会が打ち切られることもある
本人や面会に来た家族が、罪証の隠滅の結果を生ずるおそれのある内容の発言をしたときは、職員がその発言を制止し、面会を一時停止させることができます(同法219条1項3号)。そのまま面会を続けるのが相当でないと判断されれば、面会が終了となることもあります(同条2項)。
否認事件では、事実関係に争いがあるため、何気ない一言でも「口裏合わせ」や「関係者への働きかけ」と受け取られやすくなります。家族にそのつもりがなくても、本人にとって不利な見られ方をするおそれがある点は、意識しておきたいところです。
否認事件では接見禁止がつくこともある
勾留中でも、裁判官が「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」と判断すると、弁護人以外の人との面会や手紙のやり取りを禁じる決定が出されることがあります(刑事訴訟法81条、207条1項による準用)。否認している事件や共犯者がいる事件では、この決定がつくことが少なくありません。
また、勾留や保釈の判断でも、罪証隠滅のおそれは重要な考慮事情とされています(同法60条1項2号、89条4号)。面会でのやり取りが問題視されると、その後の身柄の判断にも影響しかねないため、面会の場での話題選びには慎重さが求められます。接見禁止がついた場合の動きは接見禁止がついて家族が会えない|解除に向けた動きをご覧ください。
面会で伝えてよいこと・伝えたいこと
体調や生活への気遣いと、家族の近況
逮捕・勾留されている本人は、外の情報がほとんど入らない環境で、取調べを受けながら日々を過ごしています。体調はどうか、眠れているか、食事はとれているかといった気遣いは、それだけで本人の支えになります。体調が優れないときは、留置担当の職員に申し出て診察を受けられることも伝えておくとよいでしょう。
家族が元気にしていること、子どもや親の様子など、日常の近況を伝えることも大切です。否認している本人は、「家族は自分をどう見ているのか」を気にしていることが多く、普段どおりの話題が安心につながる場合もあります。
仕事・住まい・お金など、外での段取りの報告
勤務先への連絡、家賃や公共料金の支払い、郵便物の扱いなど、本人が気にかけている生活上の用事について、家族がどこまで対応したかを伝えることは、面会の大切な役割の一つです。
このときは、事件と結びつけずに、事実だけを短く伝えるようにします。たとえば「会社には体調不良で休むと伝えてある」「家賃は今月分を払っておいた」といった伝え方であれば、問題になることは通常ありません。必要な差し入れの品を聞いておくのもよいでしょう。
弁護人がついていること、取調べの相談は弁護人にすること
家族が弁護士に依頼した場合は、そのことと、弁護士がいつ頃接見に来る予定かを伝えておくと、本人は落ち着いて次の接見を待つことができます。弁護人は、警察官の立会いなく本人と面会でき(刑事訴訟法39条1項)、接見禁止がついていても会うことができます。
取調べへの向き合い方や、黙秘するかどうか、調書に署名するかどうかといった防御の方針は、弁護人と本人が話し合って決めるものです。家族からは「取調べのことは弁護士の先生に相談してね」と伝えるにとどめ、具体的な助言は弁護人に任せるのが安全です。黙秘の考え方については黙秘したほうがよいのか|黙秘の効果とリスクの整理で解説しています。
否認しているときに伝えてはいけないこと
事件の中身を確かめる質問や、話の食い違いの指摘
「あの日は何時に帰ってきたの」「本当にその場にいなかったの」といった、事件当日の行動や言い分を確かめる質問は控えたいところです。本人の説明に家族が知っている事実と違う点があっても、それを面会の場で指摘することは避けます。
家族の側から事実関係を持ち出すと、記憶のすり合わせや口裏合わせと受け取られるおそれがあります。また、本人が家族の言葉に合わせて説明を変えてしまうと、後に供述が変わったこととして評価されかねません。供述の変遷については供述が途中で変わると不利になる理由|変遷の評価をご参照ください。
被害者・目撃者・共犯者など関係者に関する話
被害を訴えている人や目撃者、事件に関わったとされる知人などについて、「あの人がこう言っていた」「連絡してみようか」といった話題は避けます。関係者からの伝言を家族が預かって本人に伝えることや、本人からの伝言を関係者に届けることも同様です。
刑事事件の証人などに対して、面会を強く求めたり威迫したりする行為は、それ自体が犯罪とされています(刑法105条の2)。家族に悪意がなくても、関係者に接触すると働きかけと受け取られるおそれがあるため、関係者への対応は弁護人に任せるのが基本です。
「認めれば早く出られる」と供述の方針を促すこと
否認していると身柄の拘束が長引く傾向があるため、家族としては「認めて早く出てきてほしい」と考えることもあるかもしれません。しかし、面会の場で家族が自白を勧めることは控えたいところです。
本人がやっていないと言っている事実を、家族の勧めで認めてしまうと、後からその内容を覆すのは容易ではありません。反対に、本人が本当は事実を認めたいと考えている場合でも、その判断は弁護人と相談しながら進めるべきものです。取調べで同じような働きかけを受けたときの問題は、「正直に話せば早く帰れる」と言われた|虚偽自白が生まれる仕組みで解説しています。
証拠になりうる物やデータの扱いを話すこと
「スマホのデータは消しておこうか」「部屋にあった物は片付けておいた」といった、証拠になりうる物の扱いについての話は、面会では避ける必要があります。
他人の刑事事件の証拠を隠したり壊したりすれば、証拠隠滅罪にあたります(刑法104条)。家族が本人のために行った場合は刑が免除されることがありますが(同法105条)、犯罪にあたること自体は変わりません。それ以上に、本人の罪証隠滅のおそれが強いと見られ、勾留や保釈の判断で不利に働くおそれがあります。家の中の物は手を付けずにそのままにし、扱いに迷うときは弁護人に相談してください。詳しくは証拠を消した・口裏を合わせた|証拠隠滅罪と量刑への影響をご覧ください。
ここまでの内容を、話題ごとに整理すると次のとおりです。
| 話題 | 面会での扱いの目安 |
|---|---|
| 体調・食事・睡眠 | 伝えてよい。差し入れの希望も聞いておく |
| 家族・仕事・住まいの近況 | 伝えてよい。事件と結びつけず事実だけを短く伝える |
| 弁護人の選任・接見の予定 | 伝えてよい。取調べの相談先は弁護人だと伝える |
| 事件当日の行動や言い分の確認 | 控える。弁護人の接見で扱ってもらう |
| 被害者・目撃者・共犯者に関する話 | 控える。伝言の取次ぎもしない |
| 自白や供述の変更を促すこと | 控える。方針は本人と弁護人が決める |
| スマホや物の処分・保管の相談 | 控える。手を付けずに弁護人へ相談する |
家族が本人の話を信じきれないとき
家族の疑問は面会ではなく弁護人に預ける
本人が否認していても、警察からの説明や報道などを見聞きして、家族のほうが「本当にやっていないのだろうか」と迷うことは珍しくありません。その疑問を抱えたまま面会に行くと、問いただすような言葉が出てしまいがちです。
家族が抱いた疑問は、面会で本人にぶつけるのではなく、弁護人に伝えて確かめてもらうのが一つの方法です。弁護人は立会いのない接見で本人の言い分を詳しく聞くことができ、家族に伝えてよい範囲についても本人と相談したうえで説明することができます。本人が家族と話したがらない場合の対応は、本人が事実を認めない・家族と話さない|家族が相談できる範囲で扱っています。
「信じている」と言えなくても、伝えられる言葉はある
家族として、心から「信じている」と言える状況ばかりではありません。無理に言葉にしようとすると、かえってぎこちなくなることもあります。
そのようなときは、「あなたの味方でいる」「弁護士の先生とよく相談してほしい」「外のことは心配しなくていい」といった、事件の真偽に触れない言葉でも、本人にとっては十分な支えになります。否認している本人は、家族の態度の変化に敏感になっていることが多いため、事件の結論とは切り離して、変わらずに関わり続ける姿勢を示すことが大切です。
手紙や伝言で伝えるときの注意
手紙も検査され、内容によっては差し止められる
面会の時間が短いため、手紙で気持ちを伝えようと考える方もいらっしゃいます。ただ、勾留中の本人が受け取る手紙は職員が検査することになっており(刑事収容施設法222条1項)、罪証の隠滅の結果を生ずるおそれがある内容は、差し止められたり、その部分を削除されたりすることがあります(同法224条1項6号)。
手紙でも、面会と同じく事件の中身や関係者の話題には触れず、近況や気遣いを中心に書くのが基本です。弁護人を通じて手紙を届ける方法との違いは、弁護人名義の手紙と本人名義の手紙|どちらで届けるかで解説しています。
弁護人を通じた伝言にも限りがある
接見禁止がついている場合や、面会の時間では伝えきれない場合には、弁護人の接見の際に家族の伝言を届けてもらうことができます。
ただし、弁護人も罪証隠滅につながる伝言や、関係者への口止めになるような内容は取り次ぐことができません。家族が伝えたい内容を事前に弁護人に相談し、伝えてよい形に整えてもらうことで、本人に安心して届けられる伝言になります。
よくあるご質問
面会で本人から「やっていない」と言われたら、どう返せばよいですか。
「分かった、話してくれてありがとう」と受け止め、それ以上は事件の内容に踏み込まないのがよいでしょう。そのうえで、「詳しいことは弁護士の先生と相談してね」と伝え、話題を体調や生活のことに移すと、限られた面会時間を本人の支えとして使うことができます。
家族が警察から事件について話を聞かれることはありますか。
事件の内容によっては、家族が参考人として事情を聞かれることがあります(刑事訴訟法223条1項)。これは任意の手続です。また、裁判で証人として呼ばれた場合でも、配偶者や一定の範囲の親族は、本人が刑事訴追を受けたり有罪判決を受けたりするおそれのある証言を拒むことができます(同法147条)。面会で聞いた話を警察に伝えるべきか迷う場面も含め、事情を聞かれたときは、事前に弁護人に相談しておくと落ち着いて対応できます。
否認していても、被害者に謝罪や弁償をしたほうがよいのでしょうか。
否認している事件で被害者に謝罪や弁償をするかどうかは、事件の見通しや本人の意向をふまえて判断する必要があり、一律には決められません。少なくとも、家族が独自に被害者へ連絡を取ることは、働きかけと受け取られるおそれがあるため控えたほうがよいでしょう。考え方については無実でも示談すべき?否認と示談のジレンマをご参照ください。
まとめ
- 家族の面会には職員が立ち会い、録音・録画されることもある(刑事収容施設法218条1項、116条1項)。
- 罪証隠滅につながる発言は制止され、面会が一時停止・終了されることがある(同法219条1項3号・2項)。
- 否認事件では接見禁止がつくことがあり、面会でのやり取りが勾留や保釈の判断に影響するおそれもある(刑事訴訟法81条、60条1項2号、89条4号)。
- 面会では、体調や生活への気遣い、家族の近況、外での段取り、弁護人がついていることを伝える。
- 事件当日の行動の確認、関係者の話題、自白を促すこと、証拠になりうる物の扱いの相談は控える(刑法104条・105条・105条の2)。
- 家族の疑問は面会で本人に問いただすのではなく、立会いなしで接見できる弁護人に預ける(刑事訴訟法39条1項)。
- 手紙も検査され、罪証隠滅のおそれがある内容は差し止められることがある(刑事収容施設法222条1項、224条1項6号)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、刑事事件に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。ご家族が否認していて面会で何を話せばよいか迷っている場合や、接見禁止がついて本人の様子が分からない場合には、弁護士が接見に伺い、本人の言い分を確かめたうえで、ご家族からの伝言をお届けします。
ご家族として本人を支えたいと考えている方も、本人の話をどう受け止めればよいか悩んでいる方も、まずは現在の状況をお聞かせください。


