【親子問題】子の一人暮らしの部屋を、親が見に行ってもいい?
この記事は、2026年10月時点の障害者総合支援法に基づく制度をもとに書いています。2025年10月に始まった「就労選択支援」の扱いなど、運用は自治体によって異なることがありますので、実際の手続はお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
成人した子が一般企業での仕事に就けない、あるいは就いても続かない状態が長く続くと、親としては「何か別の働き方はないのか」と考えるようになります。その選択肢の一つとして名前が挙がるのが、障害福祉サービスの「就労継続支援」です。
ただ、A型とB型の違いや、そもそも子が利用できるのかどうか、親がどこまで関われるのかは、制度の説明だけでは分かりにくいところがあります。この記事では、親子問題のご相談を受けてきた立場から、就労継続支援が子の働き方の選択肢になる場面と、利用を考えるときに親が押さえておきたい点を整理します。
就労継続支援とはどのような制度か
就労継続支援は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。障害や難病などがあって一般企業で雇用されることが難しい人に、働く場と、働くための知識や能力を身につける訓練の機会を提供します。利用者は事業所に通い、軽作業、清掃、データ入力、飲食店での調理や接客、農作業などに取り組みます。
A型とB型の違い
| 項目 | A型 | B型 |
|---|---|---|
| 雇用契約 | 事業所と結ぶ | 結ばない |
| 受け取るお金 | 賃金(最低賃金が適用される) | 工賃(生産活動の収入から支払われる) |
| 利用開始の年齢 | 原則65歳未満 | 上限なし |
| 働き方の特徴 | 一定の勤務日数・時間を前提にすることが多い | 体調に合わせて日数や時間を調整しやすい |
| 利用期間 | 定めなし | 定めなし |
大きな違いは、雇用契約を結ぶかどうかです。A型は事業所の従業員として働くため最低賃金が保障され、都道府県が公表している令和6年度の平均賃金を見ると、月額8万円台から9万円台のところが多くなっています。B型は雇用契約を結ばないため、決まった時間働くことが難しい人でも通いやすい一方、工賃は全国平均で月額2万円台にとどまっています。
つまり、A型は「働く」ことに比重があり、B型は「通う習慣をつくり、作業に慣れる」ことに比重がある、と考えると分かりやすいでしょう。どちらが上ということではなく、子の体調や生活リズムに合うかどうかで選ぶものです。
一般就労や就労移行支援との関係
障害者向けの就労系サービスには、一般企業への就職を目指して原則2年間訓練を受ける「就労移行支援」もあります。B型からA型、A型から一般就労へと段階的に進む人もいれば、B型で長く安定して通い続ける人もいます。厚生労働省の検討会でも、決まった順番に当てはめるのではなく、本人の状態に合わせてサービスを選ぶ考え方が示されています。
子が利用できるかどうかの目安
就労継続支援は障害福祉サービスなので、利用するには障害があると認められる必要があります。障害者手帳を持っていれば分かりやすいのですが、手帳がなくても、医師の診断書や自立支援医療の受給などをもとに対象と判断されることがあります。
注意したいのは、「ひきこもっている」「仕事が続かない」ということ自体は利用の要件ではない点です。背景に精神疾患や発達障害などがあるかどうかを、まず医療機関で確かめることが出発点になります。この見極めについては、【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断で詳しく解説しています。
B型を新たに使う場合は「就労選択支援」を経る
2025年10月から、新しい障害福祉サービスとして「就労選択支援」が始まりました。短期間の作業体験や面談を通じて、本人の希望や得意・不得意を整理し、どの働き方が合うかを一緒に考える仕組みです。
就労経験がなく、新たにB型を利用したい人は、原則としてこの就労選択支援を経ることになりました。一方、50歳以上の人や障害基礎年金1級を受給している人などは、希望に応じて利用する扱いです。A型や就労移行支援についても、今後は原則として就労選択支援を経る方向で制度が進められています。子にとっては、自分に合う働き方を第三者と一緒に考える機会にもなります。
利用料は親の収入で決まるわけではない
障害福祉サービスの利用料は原則1割負担で、所得に応じた月額の上限があります。18歳以上の人が利用する場合、所得を判定する範囲は本人と配偶者に限られ、同居している親の収入は含まれません。本人に収入がほとんどなければ、自己負担がかからないことも少なくありません。
利用を始めるまでの流れ
- 市区町村の障害福祉の窓口や相談支援事業所に相談する。
- 気になる事業所を見学し、可能であれば体験利用をする。
- 診断書などを添えて、市区町村に利用を申請する。
- 相談支援事業所が、サービス等利用計画案を作成する。
- 市区町村の支給決定を受け、受給者証が交付される。
- 本人が事業所と利用契約を結び、通所を始める。
ここで押さえておきたいのは、申請も事業所との契約も、子本人が行うものだということです。親は情報を集めたり、見学や窓口に同行したりすることはできますが、本人の意思を飛ばして親が決め、通わせることはできません。本人の判断能力に大きな課題がある場合には、成年後見などの制度を検討する場面もあります。
親が知っておきたい注意点
A型は雇用なので、労働のルールが関わる
A型の利用者は労働者として扱われるため、最低賃金、労働時間、解雇の手続などのルールが適用されます。2024年度の報酬改定の後には、経営が成り立たなくなった事業所の閉鎖などで、まとまった人数の利用者が解雇された例が厚生労働省の資料でも報告されています。事業所を選ぶときは、作業内容や支援体制とあわせて、事業所の運営が安定しているかにも目を向けておくと安心です。
賃金や工賃は子本人のお金
A型の賃金もB型の工賃も、受け取るのは子本人です。生活費として家に入れてもらうことを話し合うのはよいとしても、親が当然のように管理するものではありません。金銭管理に不安がある場合は、【親子問題】金銭管理を第三者が担う仕組み|日常生活自立支援事業と民間の支援者の違いも参考にしてください。
生活保護や障害年金との関係
生活保護を受けながら就労継続支援を利用することはできます。賃金や工賃は収入として申告する必要がありますが、働いて得た収入には一定の控除が設けられています。障害年金を受給している場合は、働いている状況が更新時の審査で考慮されることもあるため、通院先や年金の窓口に確認しておくとよいでしょう。生活保護の考え方は、【親子問題】ひきこもりの子に生活保護は使えるのか|世帯分離の考え方で解説しています。
事業所は見学してから選ぶ
事業所によって作業内容、雰囲気、送迎の有無、支援員の関わり方はかなり違います。都道府県の多くは事業所ごとの工賃実績を公表しているので、比較の材料になります。就労継続支援は公的な指定を受けたサービスですが、合わなければ事業所を変えることもできます。高額な費用を前払いする民間の施設とは仕組みが異なりますので、民間施設を検討している場合は【親子問題】民間の自立支援施設を選ぶ前に確認すべきこと|契約・担い手・解約・本人の意思もあわせてご覧ください。
子が「行きたくない」と言うとき
親が良い制度だと思っても、子が通う気持ちになれなければ続きません。「障害者向けのサービス」という言葉に抵抗を感じる人もいます。説得を急ぐより、まずは見学や体験だけ、と小さな一歩から提案するほうが受け入れられやすいことがあります。
障害の有無にかかわらず使える就労支援もあります。地域若者サポートステーションなどについては【親子問題】就労支援の選択肢|サポステ・就労準備支援事業の実際、職歴に空白がある場合の仕事探しについては【親子問題】仕事探しの現実|職歴の空白をどう埋めるかで取り上げています。支援のゴールをどこに置くかという視点は、【親子問題】「自立」と「自律」|支援のゴールをどこに置くかも参考になるはずです。
家庭内の問題が重なっている場合
子の暴力や金銭の要求が続いている家庭では、働き方を考える以前に、親の安全と生活を守ることを優先しなければならない場面があります。親子が近い距離にいるまま話し合おうとしても、本人が窓口や事業所につながるところまで進まないことも少なくありません。
当事務所では、弁護士が親の代理人として子との窓口を担い、自立支援カウンセラーが住まい探しや仕事探し、福祉サービスの利用手続などの生活面を支える形で、親子問題に取り組んでいます。詳しくは【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
まとめ
- 就労継続支援は、一般企業で働くことが難しい人のための障害福祉サービスで、雇用契約を結ぶA型と結ばないB型があります。
- 利用するには障害があると認められる必要があり、まず医療機関で背景を確かめることが出発点になります。
- B型を新たに利用する場合は、原則として就労選択支援を経ることになりました。
- 申請や契約の主体は子本人で、親は情報収集や同行といった形で支えることになります。
- 家庭内に暴力や金銭の問題がある場合は、安全と距離の確保を先に考える必要があります。
就労継続支援は、子の状態によっては無理なく社会とつながる入口になり得る制度です。一方で、子が利用に前向きになれない、家の中の緊張が高く話し合いそのものが難しいといった事情があると、制度があっても使えないまま時間が過ぎてしまうこともあります。親だけで抱え込まず、外の力を借りることを考えてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


