保釈保証書発行事業の使い方|手元に現金がない場合
「投稿を消してしまえば、この話は終わるのだろうか」。SNSに書き込んだ後で相手方の反応を知り、そう考える方は少なくありません。投稿だけを消すか、アカウントごと消すか、それとも残したまま様子を見るか。判断がつかないまま日が過ぎてしまうこともあります。
この記事では、特定されにくくする方法や、記録が残らないようにする方法は扱いません。削除の手順そのものも扱いません。書いてしまった投稿について、消す、あるいは残すという操作が、その後の手続とどう関わるのかを整理します。
前提として、投稿の向こうには書かれた側の方がいます。すでに画面を見て保存している場合もあります。消すかどうかを考えるときは、この点を出発点に置くことになります。
「消す」といっても操作は一つではない
ひとくちに消すといっても、実際にできる操作はいくつかに分かれます。それぞれ画面上で起きることが違い、後から説明を求められる場面も違います。
| 操作 | 画面上で起きること | 後から問題になりやすい点 |
|---|---|---|
| 投稿だけを削除する | その投稿が表示されなくなる | 投稿した時期と消した時期の説明 |
| アカウントを削除する | 投稿のほか、やり取りや通知もまとめて見られなくなる | 自分の側にも記録が残らなくなること |
| 非公開の設定にする | 承認した相手だけが見られる状態になる | 公開されていた期間の扱い |
| 表示名やプロフィールを変える | 表示は変わるが投稿そのものは残る | 同じアカウントであることの説明 |
どの操作を選んだかによって、後から確かめられることの範囲が変わります。まとめて消すほど、確かめられることは少なくなります。
消しても、投稿があったこと自体は残る
画面から表示が消えても、その投稿が存在したという事実まで消えるわけではありません。書かれた側が画面を保存している場合、印刷している場合、通知の文面が手元に残っている場合があります。引用や再投稿の形で、他の方の画面に残っていることもあります。
責任の有無は、投稿がされた時点の内容と状況をもとに判断されます。後から表示を消したことによって、投稿がなかったものとして扱われるわけではありません。
手続で見られているのは、表示ではなく通信の記録
書かれた側が投稿者を知ろうとする場合、情報流通プラットフォーム対処法にもとづく発信者情報の開示請求という方法があります(同法五条)。裁判所に発信者情報開示命令を申し立てる方法も用意されています(同法八条)。
ここで開示の対象になっているのは、画面に表示されている文章そのものではありません。投稿に用いられたアカウントに登録された電話番号やメールアドレス、そのアカウントを作成したときの通信の記録、投稿の時刻に近いログインの通信の記録といった項目が挙げられます。投稿そのものの通信だけでなく、ログインやアカウント作成の通信も対象になりうる建て付けです。
これらの記録は、サービスを運営している側や、通信を媒介した回線の側が持っているものです。利用者の操作で消える範囲とは、置かれている場所が違います。表示を消すことと、記録が残っているかどうかは、別の事柄として動きます。
開示命令の手続には、審理の間に記録が消えてしまうことを防ぐための仕組みも設けられています。他の事業者に情報を提供させる提供命令(同法十五条)と、事件が終わるまでの間、発信者情報を消してはならないと命じる消去禁止命令(同法十六条)です。なお、この手続の中で投稿の削除まで求めることはできず、削除を求める場合は別の手続によることになります。
削除済みであることは、あらかじめ想定されている
裁判所が公表している発信者情報開示命令の申立書の記載例には、関連する事情を書き込む欄が設けられています。そこには、対象の投稿のなかにサイト上から削除済みのものがあるという項目があり、該当する投稿と削除の時期を書くようになっています。投稿したアカウントの活動が数か月止まっている、または停止されているという項目もあります。
投稿が消えている状態や、アカウントが動いていない状態は、手続の側であらかじめ想定されている状態の一つだということです。消えているから手続が始まらない、という関係にはなっていません。記録が失われる時期が近づいているという事情は、消去を禁じる命令を求める理由として説明されることもあります。
もっとも、時間の経過によって記録が残っていない場合もあります。ただ、それがどの時点でどうなるかは、相手方がいつ動くかによって変わります。投稿した側が見通しを立てられる事柄ではありません。
刑事の手続には、別の保全の仕組みがある
刑事の捜査では、公務所や公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができるとされています(刑事訴訟法百九十七条二項)。あわせて、通信の履歴について、消さないよう求める仕組みも設けられています。
捜査機関は、差押えなどのために必要があるとき、電気通信の事業を営む者などに対し、その業務上記録している通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定して、三十日を超えない期間を定め、消去しないよう書面で求めることができます(同条三項)。特に必要があるときは三十日を超えない範囲で延長できますが、通じて六十日を超えることはできません(同条四項)。
ここでいう通信履歴は、送信元、送信先、通信日時といった記録であり、通信の内容そのものは含まないと説明されています。また、この仕組みは、事業者に新たな記録を義務づけるものではなく、すでに業務上記録されているものを一定の期間だけ消さないよう求めるものです。端末そのものが押収されて調べられる場面は、これとは別の話になります。
消したこと自体が罪になるのか
証拠隠滅等の罪を定めた刑法百四条は、「他人の刑事事件に関する証拠」を対象としています。自分の事件について自分で消した場合は、この罪の対象から外れると解されています。
ただし、人に頼んで消させた場合や、頼まれて消した側については、評価が変わってきます。また、他人のアカウントに無断でログインして投稿を消すような場合は、別の問題になります。不正アクセス禁止法は、権限のない者が他人の利用者名やパスワードを使ってログインする行為などを禁じており(同法三条)、違反した場合の罰則は三年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金とされています(同法十一条)。家族や交際相手のアカウントであっても、本人以外は他人にあたります。
そして、罪に問われないことと、不利に働かないことは別です。
手続の中で「消したこと」はどう見られるか
刑事では、逮捕の必要があるかどうか(刑事訴訟法百九十九条二項ただし書)、勾留の理由があるかどうか(同法六十条一項二号)、保釈を認めるかどうか(同法八十九条四号)、起訴するかどうか(同法二百四十八条)といった場面で、証拠を隠すおそれや犯罪後の事情が考慮されます。消したという事実だけが取り出されるのではなく、いつ、どういう状況で行われたのかが見られることになります。
民事にも近い規定があります。民事訴訟法二百二十四条二項は、相手方の使用を妨げる目的で、提出の義務がある文書を滅失させたときなどについて定めています。ここには「相手方の使用を妨げる目的で」という要件が置かれており、無関係な理由による操作が直ちにこれにあたるわけではありません。
見方は一方向ではありません。連絡を受けてすぐに公開を止めた対応として説明できる場面もあります。一方で、相手方や捜査機関が動き出した後にまとめて消した場合は、時期と理由の説明を求められやすくなります。分かれ目になるのは、いつ、なぜ行い、それを説明できるかという点です。
アカウントごと消すと、失われるのは自分の側の材料
アカウントを削除すると、問題になっている投稿だけでなく、その前後のやり取りも見られなくなります。どのような経緯で書いたのか、誰に向けたものだったのか、相手方から先にどのような言葉があったのか、どこまでが自分の投稿でどこからが別の方の投稿なのか。こうした点を後から示すための材料が、自分の手元からなくなります。
書かれた側は、自分に関係する部分を保存していることが多くあります。その状態でアカウントを消すと、同じやり取りについて片方だけが資料を持っている形になります。
連絡の経路が閉じることもあります。相手方からの連絡や、サービスからの通知が届かなくなるためです。一方で、開示請求の手続で送られる意見照会の書面は、回線を契約している方の住所あてに届くことが多く、アカウントを消していても書面が届くことはあります。
相手から削除を求められている場合
相手方が求めているものが何かによって、進め方は変わります。削除だけなのか、賠償なのか、謝罪なのか、繰り返さないという約束なのか。ここを確かめないまま先に消してしまうと、話し合いの材料が一つ減った状態で交渉に入ることになります。
削除を条件に含む合意は、実際によく行われています。その場合は、どの投稿をいつまでに消すのか、消したことをどのように確認するのかを書面で決めてから動くほうが、後の行き違いが少なくなります。なお、投稿の削除を求める制度は権利を侵害された側のために設けられたものであり、投稿した本人からの依頼にサイト側が応じるとは限りません。
いま整理しておきたいこと
- 対象になっている投稿の内容、投稿した日時、アカウント名。
- すでに消したものがある場合は、消した時期と、そのときの状況。
- 同じ話題について投稿した回数と、使っていたアカウントの数。
- 相手方や関係する方とのやり取りが残っている場所。
- 届いた書面の種類と、回答の期限。
- 投稿するに至った経緯と、そのときに見ていた情報。
- 勤務先や学校など、影響が及びうる範囲。
控えたほうがよい対応
- 相手方や関係する方に直接連絡して、取り下げや削除を求めること。
- 家族や友人に頼んで、代わりに投稿を消してもらうこと。
- 別のアカウントを作って、経緯の説明や反論を続けること。
- 届いた書面を放置したまま、回答の期限を過ぎてしまうこと。
- 記憶があいまいなまま、断定的な説明を書面に残すこと。
よくあるご質問
非公開の設定にすれば足りますか
非公開にすれば新たに見られる範囲は狭くなりますが、公開されていた期間があったことは変わりません。その間に保存されている場合もあります。設定の変更によって問題そのものが終わるという整理にはなりません。
もう消してしまいました。不利になりますか
消したという一事だけで結論が決まるわけではありません。見られるのは、いつ、どういう状況で消したのか、そのときに何を考えていたのかという点です。消した時期と理由を思い出せる形で書き留めておくと、後の説明がしやすくなります。
アカウントを消したのに書面が届きました
開示請求の手続では、回線を契約している方に意見照会の書面が送られることがあります。アカウントの有無とは別の経路で届くため、消した後に届くという事態は起こりえます。回答の期限が定められていることが多いので、内容を確かめたうえで対応を検討してください。
まとめ
- 消すという操作は一つではなく、投稿の削除、アカウントの削除、非公開の設定、表示名の変更で残るものが違う。
- 表示が消えても、投稿があったこと自体は、保存された画面や引用の形で残ることがある。
- 開示の手続で対象になっているのは画面の文章ではなく、投稿やログインの通信の記録である。
- その記録はサービス側や回線側にあり、利用者の操作が届く範囲とは場所が違う。
- 裁判所の申立書の記載例には、削除済みであることやアカウントの活動が止まっていることを書く欄がある。
- 刑事では、すでに記録されている通信履歴について、期間を定めて消さないよう求める仕組みがある。
- 自分の事件の証拠を自分で消した場合は証拠隠滅等の罪の対象から外れるが、手続の判断材料から外れるわけではない。
- アカウントごと消すと、経緯を説明するための材料が自分の側からも失われる。
SNSの投稿についてお悩みの方へ
投稿を消すかどうかは、それだけを取り出して決められる問題ではありません。相手方が何を求めているか、手続がどの段階にあるか、説明できる材料が手元にあるかによって、答えは変わります。判断を急ぐ前に、いま何が起きているのかを一度整理しておくことをおすすめします。
当事務所では、SNSの投稿をめぐるご相談を無料でお受けしています。すでに書面が届いている場合も、まだ何も起きていない段階でも、状況をうかがったうえで、いまできることを一緒に検討します。


