【ストーカートラブル】相手が釈放される|時期を知る方法と、その日に備えること

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

本記事は2026年10月時点の法令と、法務省・警察庁が公表している犯罪被害者支援の制度説明に基づいています。刑罰は、2025年6月1日施行の改正刑法による「拘禁刑」の表記で統一しています。通知制度の運用は、事件の内容や担当する検察庁・警察署によって異なる場合があります。


「相手が逮捕されたと警察から聞いたが、いつ出てくるのかを誰も教えてくれない」「判決で執行猶予がつき、相手がその日のうちに外に出ていたことを後から知った」。ストーカー被害のご相談では、相手の身柄がどうなっているのか分からないまま過ごす不安を伺うことが少なくありません。

 被害者向けの解説では、「被害者等通知制度を使えば加害者の出所時期を知ることができる」と案内されるのが一般的で、それ自体は誤りではありません。ただ、知らされる情報は手続の段階によって異なり、逮捕・勾留中の釈放は自分から申し出ておかないと伝わらないことがあります。通知が釈放の後になる場面もあるため、制度を知っているだけでは、その日に間に合わないことがあります。

 この記事では、相手が釈放されうる場面を手続の段階ごとに整理し、時期を知るための窓口と、釈放の日に備えて準備できることを説明します。示談書に入れる条項の詳細は【ストーカートラブル】示談に入れる条件|接触禁止・転居・違約金で、接近を禁じる手続の全体像は接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで扱っています。

相手が外に出る時期は、手続の段階ごとに異なる

 ストーカー事案で相手が逮捕されても、判決まで身柄の拘束が続くとは限りません。釈放されうる場面は大きく3つの段階に分かれ、どこで外に出るかによって、時期の見通しも知る方法も変わります。

段階相手が外に出る主な場面時期の目安
逮捕・勾留(起訴前)勾留されずに釈放、処分保留で釈放、不起訴、略式命令(罰金)逮捕から数日〜最長で23日程度
起訴後(裁判中)保釈、判決(執行猶予・罰金)保釈は起訴後に請求でき、判決までの期間は事件により異なる
判決確定後(受刑中)仮釈放、刑期満了による釈放有期刑では刑期の3分の1を経過した後に仮釈放の対象となりうる


逮捕・勾留の段階では、短い期間で外に出ることがある

 逮捕された相手は48時間以内に検察官へ送られ、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます(刑事訴訟法203条1項・205条1項)。勾留が認められると原則10日間、延長されるとさらに最長10日間、身柄が拘束されます(同法208条)。勾留請求がされなかった場合や、裁判官が勾留を認めなかった場合は、逮捕から数日で釈放されることもあります。

 勾留の期間内に起訴するかどうかが決まらなければ、「処分保留」として釈放され、捜査は相手が自宅にいる状態で続きます。処分保留の位置づけは処分保留で釈放された|終わったわけではない状態で説明しています。罰金で終わる略式命令の手続がとられた場合や、不起訴となった場合も、その時点で身柄は解かれます。起訴前の釈放は判断から実行までが短く、被害者が予定を知る前に起きやすいという点を押さえておく必要があります。

起訴された後は、保釈と判決が分かれ目になる

 起訴されると、相手側は保釈を請求できます(刑事訴訟法88条)。保釈が認められれば、裁判が続いている間でも外に出ることになります。もっとも、被害者やその親族の身体・財産に害を加えたり、畏怖させたりする行為をすると疑うに足りる相当な理由があるときは、権利としての保釈は認められず(同法89条5号)、裁判所が事情を踏まえて裁量で判断します(同法90条)。

 判決で執行猶予がついた場合や罰金刑となった場合は、勾留状が効力を失い(同法345条)、判決の日に身柄が解かれるのが通常です。被害者が判決の日を把握していなければ、相手が外に出たことを後から知ることになります。

刑務所に入った後は、仮釈放と満期釈放がある

 実刑判決が確定した場合、刑期が満了すれば釈放されます。有期刑では、刑期の3分の1を経過し、改悛の状があるなどの事情が認められれば、それより前に仮釈放されることもあります(刑法28条)。

 ストーカー行為罪の法定刑は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です(ストーカー規制法18条・19条1項)。他の罪とあわせて処罰される場合を除けば、受刑の期間はそれほど長くならないことも多いため、刑務所に入った後も、早めに出所時期の情報を得る準備をしておくことが大切です。

釈放の時期を知るための窓口

 相手の釈放を知る方法は、検察庁の通知制度と、警察の再被害防止の取組みの2つが中心です。どちらも、被害者の側から希望を伝えることで動き出す部分があります。

被害者等通知制度|身柄の状況は自分から申し出る

 検察庁には、事件の処分結果、裁判が行われる日時、裁判の結果などを被害者に知らせる「被害者等通知制度」があります。通知の対象には加害者の「身柄の状況」も含まれており、これは相手が釈放(保釈を含む)されたかどうかを指します。

 注意したいのは、処分結果などと異なり、身柄の状況については、原則として検察官の側から通知を希望するかどうかを確認しない運用になっていることです。釈放や保釈を知りたい場合は、担当の検察官・検察事務官または被害者支援員に、その事項の通知を希望すると自分から伝えておく必要があります。各地方検察庁には、被害者専用の電話窓口として「被害者ホットライン」が設けられています。

刑務所に入った後の出所情報

 実刑判決が確定した後は、同じ制度により、収容されている刑務所の名称、満期出所の予定時期、受刑中の処遇状況、釈放された年月日、仮釈放の審理が始まった日や仮釈放が決定した日などの通知を受けることができます。申出は裁判が確定した後であればいつでもでき、事件を扱った検察庁に書面を提出して行います。

 ただし、この制度で知らされる釈放の年月日は、実際に釈放された後に通知されるものです。満期出所の予定も「年月」の単位にとどまります。

再被害防止のための釈放予定の通知

 これとは別に、特に再被害防止のために必要がある場合に限って、受刑者の釈放直前に、釈放予定の時期を通知する仕組みがあります。時期は通常「月の上旬・中旬・下旬」の単位で知らされ、特に必要があるときは、釈放後の住所地が通知されることもあります。

 この通知は、転居など相手との接触を避ける措置をとる必要があって被害者が特に希望し、犯罪の動機、加害者との関係、加害者の言動などに照らして検察官が相当と認めた場合に行われます。ストーカー事案では、これまでの接触の経過や、相手が口にした言葉などを具体的に伝えたうえで申し出ることが大切です。

警察の再被害防止の取組み

 警察は、加害者の再犯によって生命や身体に被害を受けるおそれが大きい被害者を「再被害防止対象者」に指定した場合、必要に応じて加害者の釈放等に関する情報を提供しています。事件を担当した警察署の担当者と連絡が取れる状態を保ち、釈放の見込みや、その前後の警戒について相談しておくことが、検察庁の通知と並ぶもう1つの窓口になります。

通知だけに頼らず準備しておく理由

 通知制度は被害者にとって重要な情報源ですが、すべての場面で事前に知らせてもらえるわけではありません。限界を知ったうえで、通知以外の準備を並行して進めておくことが現実的です。

通知が釈放の後になる場面がある

 起訴前の釈放や、執行猶予判決による釈放は、判断から実行までの時間が短く、被害者への連絡が釈放の後になることがあります。刑務所からの釈放についても、通常の通知は釈放後に年月日を知らせるものです。釈放を事前に知ることを前提にした準備だけでは、間に合わない場面があることを念頭に置いておきます。

希望しても通知されない場合がある

 被害者等通知制度は「できる限り」情報を提供する制度であり、事件の性質などから通知しないほうがよいと検察官が判断した場合は、希望があっても全部または一部が通知されないことがあります。再被害防止のための釈放予定の通知も、検察官が相当と認めた場合に限られます。

弁護士を代理人として通知を受ける

 通知を受けられる人には、被害者本人や親族のほか、弁護士である代理人も含まれます。窓口を弁護士にしておけば、ご本人が直接連絡を受ける負担を減らせるうえ、通知を受けた後に禁止命令の申出や住所の秘匿などをすぐ検討できます。代理人を立てることの意味は【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で説明しています。

釈放の日に備えて準備しておくこと

 釈放の時期が分かった場合も、分からないままの場合も、準備できることは共通しています。相手に課される制限の確認、住所と生活の動線の見直し、示談をする場合の書面づくりの3つに分けて整理します。

相手に課される制限を確認しておく

 釈放された後に相手がどのような制限を受けるかは、釈放の理由によって異なります。主なものは次のとおりです。

  • 禁止命令は、公安委員会がつきまとい等を禁じる命令で、有効期間は1年、必要があれば延長される(ストーカー規制法5条)。
  • 保釈の条件として、裁判所は住居の制限などを付けることができ(刑事訴訟法93条3項)、被害者への接触禁止が定められることがある。
  • 保護観察付きの執行猶予や仮釈放の場合は、守るべき事項として被害者への接近の禁止などが定められることがある。


 禁止命令が出ていない段階で釈放が近いと分かった場合は、釈放の前に警察へ禁止命令の申出について相談しておくことが考えられます。保釈が請求されたときは、裁判所が検察官の意見を聴くことになっているため(刑事訴訟法92条1項)、不安があることを担当の検察官にあらかじめ伝えておくことも1つの方法です。保釈の条件に違反した場合の扱いは保釈の条件(制限住居・接触禁止・渡航制限)に違反したらどうなるかで説明しています。

 受刑中の相手について仮釈放の審理が始まった場合は、地方更生保護委員会に対し、仮釈放や釈放後の生活環境の調整、保護観察についての意見を述べることができます(更生保護法38条)。相手の帰住先として被害者の住まいの近くが検討されていないかといった不安も、この機会に伝えることができます。

住所と生活の動線を見直す

 相手に住所を知られているかどうかで、準備の重点は変わります。いずれの場合も、次の点を確認しておくと安心につながります。

  • 住民票の写しなどの交付を制限する「DV等支援措置」を、お住まいの市区町村に申し出る。
  • 郵便物、SNSの投稿、位置情報の共有設定から、現在の居場所が伝わらないかを確認する。
  • 通勤・通学の経路や帰宅の時間帯、勤務先や学校への伝え方を決めておく。
  • 釈放の前後の期間だけでも、実家や知人宅など一時的な滞在先を確保しておく。


 居場所を知られない工夫は引っ越したのに住所を突き止められた|居場所を知られない対策で、住まいの設備でできる対策は【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで取り上げています。

示談をするなら、釈放後の約束を書面に残す

 相手が身柄を拘束されている間は、相手側の弁護人から謝罪や示談の申入れを受けることがあります。示談に応じるかどうかは被害者が決めることで、応じなければならないものではありません。

 応じる場合は、釈放された後に相手が守るべき約束を、連絡の手段や近づかない場所、違反した場合の扱いまで具体的に書いておくことが重要です。示談が成立すると相手の処分や釈放の時期に影響することがあるため、釈放の日を見据えて条件を考える必要があります。申入れへの向き合い方は【ストーカートラブル】相手が弁護士を通じて「会って謝りたい」と言ってきた|面会を断っても謝罪や示談の道は残るで整理しています。

釈放された後に接触があったとき

 準備をしていても、釈放後に相手が接触してくる可能性を完全になくすことはできません。その場合に備えて、取るべき行動の順番を決めておきます。

その場の安全を優先する

 自宅や職場の近くで相手を見かけた、待ち伏せされたといった場合は、相手と話し合おうとせず、人のいる場所へ移動して110番通報することを優先します。禁止命令が出ていることや、事件の担当警察署を伝えると、状況が伝わりやすくなります。

記録を残し、手続を重ねる

 接触があった日時、場所、手段、内容は、その都度記録しておきます。禁止命令に違反した場合は罰則の対象となり(ストーカー規制法19条・20条)、保釈中であれば、被害者を畏怖させる行為などを理由に保釈が取り消されることがあります(刑事訴訟法96条1項4号)。釈放後の接触は、記録があってはじめて次の手続につなげられるため、小さな出来事でも残しておくことが大切です。

よくあるご質問

相手の弁護士に、釈放の時期を問い合わせてもよいですか。

 問い合わせること自体はできますが、相手の弁護人は依頼者の利益のために活動する立場にあり、守秘義務も負っているため、教えてもらえるとは限りません。釈放の時期を知りたい場合は、検察庁の被害者等通知制度や、事件を担当した警察署の担当者を窓口にするのが基本です。

相手が出てきたら、また住所を調べられるのではないかと心配です。

 住民票の写しなどの交付を制限するDV等支援措置を、市区町村に申し出ることができます。刑事手続の中でも、一定の要件のもとで、起訴状などに記載される被害者の氏名や住所を相手に明らかにしない措置がとられることがあります。気になる場合は、担当の検察官や被害者支援員に確認しておくとよいでしょう。

釈放されたと知ったら、引っ越したほうがよいのでしょうか。

 必ずしも転居が必要になるわけではありません。相手が今の住所を知っているか、これまでの接触の経過、禁止命令などの制限があるかによって判断は変わります。ストーカー被害のために転居した場合、その費用を損害として相手に請求できる余地もあります。請求の組み立ては【ストーカートラブル】ストーカー被害の慰謝料|請求できる項目と組み立てで説明しています。

まとめ


  1. 逮捕後は48時間以内に検察官へ送られ、勾留は原則10日、延長で最長さらに10日となり、その間の不起訴・処分保留・略式命令でも釈放されうる(刑事訴訟法203条1項・205条1項・208条)。
  2. 起訴後は保釈が請求でき、被害者等に害を加えるおそれなどがあるときは権利保釈が認められず、裁判所の裁量判断となる(同法88条・89条5号・90条)。
  3. 執行猶予や罰金の判決では勾留状が効力を失い、判決の日に釈放されるのが通常である(同法345条)。
  4. 被害者等通知制度では釈放・保釈の有無も通知されるが、身柄の状況は原則として自分から通知を希望する必要がある。
  5. 刑務所からの出所情報は釈放後の通知が基本で、釈放直前の予定時期の通知は再被害防止のため特に必要な場合に限られる。
  6. 釈放後の相手には、禁止命令、保釈の条件、保護観察の遵守事項などの制限が課されることがあり、釈放前から確認と相談をしておく(ストーカー規制法5条、刑事訴訟法93条3項)。
  7. 仮釈放の審理では被害者が意見を述べることができ、釈放後の接触は記録して禁止命令違反や保釈の取消しなどの手続につなげる(更生保護法38条、ストーカー規制法19条・20条、刑事訴訟法96条1項4号)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。相手が逮捕された後の見通しを知りたい方、釈放の時期に向けて通知の申出や禁止命令、住所の秘匿などの準備を進めたい方は、釈放が決まる前の段階からご相談ください。

相手側の弁護人から謝罪や示談の申入れを受けている方も、応じるかどうかを決める前に、釈放後の安全をどう確保するかとあわせて一緒に整理いたします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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