【男女トラブル】交際中のLINEを親に見せると言われた|見せる中身と引き換えの条件で分けて考える

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年10月7日時点の刑法、民法、ストーカー行為等の規制等に関する法律、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の規定に基づいて書いています。


「別れたいと伝えたら、これまでのLINEを全部親に見せると言われた」「相手は親とも顔見知りなので、本当に送られてしまうかもしれない」。男女間のトラブルのご相談では、この一言をきっかけに別れ話が進まなくなった方からのご連絡が少なくありません。反対に、「自分が送った言葉の中にも、親には見られたくないものがある。だから強く言い返せない」と打ち明けられる方もいます。

 インターネット上では「親に見せると告げることは脅迫罪にあたる」「実際に見せる人は多くない」といった説明がよく見られます。いずれもそれ自体は誤りではありません。ただ、交際中のLINEには自分の言葉と相手の言葉が混ざっており、何が書かれているのか、相手が見せない代わりに何を求めているのかによって、使える手段も気をつけるべき点も変わります。この点はあまり整理されていません。

 この記事では、交際相手や元交際相手から「LINEを親に見せる」と言われた方に向けて、状況の分け方と、その後の動き方を順に整理します。家族や職場への告知全般の違法性は「家族と職場にバラす」と言われた|告知の中身別に見る違法性を、性的な写真や動画を持たれている場合は別れた相手が裸の画像を持っている|拡散される前に削除させる交渉をあわせてご覧ください。

「親に見せる」と言われたら、まず二つに分けて考える

 同じ「親に見せる」という言葉でも、何を見せようとしているのか、何と引き換えにしているのかによって、法的な評価も対応の順序も変わります。最初にこの二点を書き出しておくと、その後の判断がしやすくなります。

見せると言われている中身は何か

 交際中のLINEに残っているものは人によってさまざまです。ご相談で多いのは、次のような中身です。

  • 日常のやり取りや、交際していたこと自体が分かる内容。
  • けんかの際の強い言葉や、相手を責めた発言。
  • お金の貸し借りや、交際中の支出に関するやり取り。
  • 性的な内容のメッセージや、写真・動画。
  • 友人や家族など、第三者の事情に触れた内容。


 中身によって、見せられた場合の影響の大きさは大きく異なります。性的な写真や動画が含まれる場合は、通常のメッセージとは別の法律の枠組みが関わるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

何と引き換えに言われているのか

 もう一つの軸は、相手が「見せない」ことと引き換えに何を求めているかです。求められていることごとに、問題になりうる規定は次のように分かれます。

相手が求めていること問題になりうる規定確かめておきたい点
復縁や、会って話すこと強要罪(刑法223条1項)、ストーカー規制法同じ要求が繰り返されているか
お金の支払い恐喝罪(刑法249条1項)請求に根拠のある部分が含まれているか
謝罪文や反省文強要罪(刑法223条1項)書面の内容と、相手が考えている使い道
特に何も求めていない脅迫罪(刑法222条1項)告げられた時期と回数


 相手が何も求めていない場合でも、名誉に害を加える旨を告げることは脅迫罪の問題になりえます。また、お金の話が出ている場合、交際中に借りたお金の返済など、請求の一部に根拠があることもあります。ただ、根拠のある請求であっても、親に見せると告げて支払いを迫る方法が許されるわけではありません。交際中のお金の性質については別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いで整理しています。

交際中のLINEを親に見せることは、どう評価されるのか

 「見せる」と告げる段階と、実際に見せた段階とでは、問題になる法律が異なります。

告げられた段階で問題になること

 見せると告げた時点で、相手の行為はすでに法的な評価の対象になります。後になって実際には見せなかったとしても、告げた行為の評価が消えるわけではありません。復縁や会うことを求める流れで告げられた場合の刑事上の対応は、元恋人からの脅迫・強要|「別れるなら〜」への刑事対応(脅迫罪・強要罪)で詳しく扱っています。

実際に見せられた場合に問題になること

 名誉毀損罪(刑法230条1項)は、事実を「公然と」示すことを要件としています。親一人に見せただけの場合は、この要件との関係で、直ちに成立するとはいえない場面もあります。一方、民事では事情が異なります。交際の中身のように私生活に関わり、一般に知られておらず、通常であれば他人に知られたくないと感じる内容を見せることは、見せた先が親一人であっても、プライバシーの侵害として損害賠償の対象になりえます(民法709条、710条)。私生活の暴露と刑事責任の関係は私生活を暴露した|プライバシー侵害は犯罪になるのかで整理しています。

「自分に届いたLINEだから自由に見せてよい」とはいえない

 相手からは「自分に送られてきたものだから、誰に見せても自由だ」と言われることがあります。確かに、LINEのやり取りは双方の端末に残り、こちらから相手の手元の記録を消すことはできません。また、個人情報の保護に関する法律は主に事業者による個人情報の取扱いを定めた法律で、私的な交際の中でのやり取りを直接規律するものではありません。しかし、記録を手元に持っていることと、それを第三者に見せてよいかどうかは別の問題です。見せる目的や方法、中身によっては、先に述べた民事上の責任が生じえます。

復縁を求める流れで言われた場合|ストーカー規制法という視点

 別れ話の最中や別れた後に「戻らないなら親に見せる」と言われる場合、刑法とは別に、ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」)が関わることがあります。

親に向けられた行為も対象になる

 ストーカー規制法は、恋愛感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で、特定の者に一定の行為をすることを「つきまとい等」と定めています(ストーカー規制法2条1項)。この行為の向かう先には、本人だけでなく、その配偶者、直系や同居の親族なども含まれています。相手が親御さんに繰り返し連絡をしたり、LINEの画面を送りつけたりする行為も、目的によってはつきまとい等として扱われる余地があります。

名誉を害する事項を告げる行為

 つきまとい等には、面会や交際など義務のないことを要求すること(同項3号)、名誉を害する事項を告げたり、知り得る状態に置いたりすること(同項7号)、性的羞恥心を害する事項を告げたり、知り得る状態に置いたりすること(同項8号)も含まれます。「戻らないなら見せる」という言葉は、復縁の要求と結びついている点で、これらの規定との関係を検討する意味があります。警察による警告や、公安委員会による禁止命令の流れはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで解説しています。

同棲していた相手の場合

 生活の本拠を共にしていた交際相手であれば、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の保護命令の対象になる場合があります。2024年4月1日施行の改正により、自由、名誉又は財産に対する脅迫を受けた場合も、接近禁止命令の申立てができるようになりました。ただし、生命又は心身に重大な危害を受けるおそれが大きいことが要件とされており、生活の本拠を共にしたことのない交際相手には、この制度は及びません。

親と面識のある相手だからこそ起きること

 交際相手が家族と顔を合わせていた場合、知らない相手からの脅しとは異なる難しさがあります。

親の連絡先をすでに知っている

 実家を訪ねたことがある、親御さんとLINEでつながっている、といった場合、相手は親御さんに直接連絡する手段を持っています。相手がどの手段で連絡できる状態にあるのかを確かめておくことが、備えの出発点になります。友人など親御さん以外にも接触が広がっている場合は、別れた相手が家族や友人に接触してくる|第三者を巻き込む嫌がらせへの対応も参考になります。

親御さんが相手と直接話をつけようとする

 面識があるぶん、親御さんが相手に電話をかけて謝ったり、「お金で済むなら」と支払いを約束したりすることがあります。成人した子の交際のトラブルについて、親が当然に支払義務を負うことはありません。ただ、親御さんが書面に署名すると、話が変わることがあります。脅されて書いた書面の扱いは脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで整理しています。親御さんには、相手から連絡が来ても約束や署名はせず、内容を控えておくようお願いしておくことが、行き違いを防ぎます。

親に先に話しておくかどうか

 先に話しておくか、話さずに備えるかは、相手がどこまで連絡手段を持っているか、家族の事情はどうかによって判断が分かれます。先に話す場合も、LINEの中身まで説明する必要はありません。実家への連絡に備えて親御さんと共有しておきたいことは、【風俗トラブル】実家の住所を知られていた|親に知らせると言われたときの備えで経路ごとに整理しています。

言われた直後にしておきたいこと

 「親に見せる」と言われた直後の動き方は、その後の交渉の進み方に影響します。

自分の側のLINEを消さない

 見られたくない内容があると、自分の端末からトークを消したくなるかもしれません。しかし、自分の側を消しても相手の手元の記録は残ります。消えてしまうのは、相手が「親に見せる」と告げた言葉や、その前後の経緯といった、こちらにとって必要な記録の方です。保存の方法はLINE・メール・録音データの保存と渡し方|消してはいけない理由で解説しています。

言い返しや弁解を重ねない

 強く言い返したり、長い弁解を送ったりすると、そのメッセージも新たに見せられる材料になります。相手の言葉はそのまま残し、こちらからの返信は最小限にとどめるのが基本です。別れ話の場面での記録の作り方は、【男女トラブル】別れ話を録音しておくべきか|交際を終える話し合いでの記録の作り方も参考になります。

期限を切られても、その場で約束しない

 「今日中に返事がなければ親に送る」と期限を切られると、急いで応じたくなるかもしれません。ただ、一度要求に応じると、同じ材料を使って次の要求が続くことは珍しくありません。返事を保留し、早めに相談につなげてください。

かえって状況を悪くしやすい対応

 LINEを見せられたくない気持ちが強いほど、次のような行動をとりたくなることがあります。いずれも、後の交渉や手続でこちらの立場を弱くするおそれがあります。

  • 相手のスマートフォンを取り上げたり、無断で操作してトークを消そうとしたりする。
  • 相手の親に、相手側の見られたくない内容を見せ返す。
  • 要求に応じて、二人きりで会いに行く。
  • 言われるままに謝罪文や反省文を書いて渡す。
  • 経緯をSNSに書き込み、周囲に相手の行為を訴える。


「消させる」ための実力行使

 相手の端末を取り上げたり無断で操作したりすれば、その行為自体が別の問題を生み、相手に新たな主張の材料を与えることになります。相手の手元の記録の扱いは、力関係で決めるものではなく、合意の中で取り決めるものと考えてください。

「見せ返す」ことの危うさ

 相手の側にも見られたくない内容がある場合、こちらも相手の親に見せると返したくなるかもしれません。しかし、それはこちらが相手と同じ評価を受ける行為になりえます。問題を相手の行為に絞っておくことが、後の交渉でこちらの立場を保つことにつながります。

弁護士が入ると何が変わるのか

 弁護士が代理人として入ると、「親に見せるかどうか」をめぐるやり取りは、ご本人と相手の間から、代理人を通じた取り決めに移っていきます。

連絡の窓口を代理人に移す

 弁護士が依頼を受けると、相手に対し、今後の連絡は代理人宛てにするよう求める通知を送ります。その中で、ご本人だけでなく、親御さんなどご家族への連絡も控えるよう求めます。通知の性質については受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかをご覧ください。

合意書で「見せない・送らない」を取り決める

 相手の手元の記録がすべて消えたことを、外から確かめるのは困難です。そのため、削除を求めるだけでなく、第三者に見せない・送らないこと、家族に接触しないこと、違反した場合の取り決めをあわせて書面に残すことが現実的な備えになります。条項の作り方は接触禁止条項の書き方|今後の連絡を止める設計と口外禁止条項はどこまで効くのか|違反されたときにできることで扱っています。

それでも続く場合

 通知や合意の後も親御さんへの連絡が続く場合は、記録をもとに、警察への相談や被害届・告訴を検討します。どちらを選ぶかは被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶで整理しています。元交際相手から金銭を求められ、勤務先への電話も続いた事案の解決例として、【解決事例】元交際相手からの金銭要求と勤務先への電話|接触禁止の誓約書を取得し、支払いなく解決した事例もご参照ください。

よくあるご質問

見せると言われたLINEの中に、自分の強い言葉も残っています。それでも相手の行為を問題にできますか。

 問題にできます。ご自身の発言に気がかりな部分があったとしても、それを材料に「親に見せる」と告げて何かを求めることは、別の行為として評価されます。秘密を握られたときの考え方は「バラすぞ」と言われた|秘密を人質に取られたときの考え方で詳しく扱っています。ただし、ご自身の発言の中身によっては、相手から責任を問われる余地が残る場合もあります。ご相談の際には、隠さずにお伝えください。

まだ交際中ですが、けんかのたびに「親に見せる」と言われます。この段階でも相談できますか。

 ご相談いただけます。交際が続いている段階でも、言われた日時と言葉を記録しておくと、後に別れ話を進める際や、別れた後に同じ言葉が繰り返された際の判断材料になります。別れ方の段取りから一緒に考えることもできます。

親に知られずに弁護士へ相談できますか。

 弁護士には守秘義務があり、ご本人の同意なく、ご相談の内容を親御さんに伝えることはありません。連絡方法や書面の送付先も、ご希望に合わせて調整できます。詳しくは弁護士に相談した内容は家族や警察に伝わる?守秘義務の範囲をご覧ください。

まとめ


  1. 「親に見せる」と言われたときは、見せると言われている中身と、引き換えに求められていることの二点を分けて書き出す。
  2. 何も求められていなくても名誉に害を加える旨の告知は脅迫罪の問題になりえ、復縁や謝罪を求めれば強要罪、金銭を求めれば恐喝罪が問題になりうる(刑法222条1項、223条1項、249条1項)。
  3. 親一人に見せる行為は、公然性の要件との関係で名誉毀損罪が直ちに成立するとはいえない場面がある一方、民事ではプライバシーの侵害として損害賠償の対象になりうる(刑法230条1項、民法709条、710条)。
  4. 恋愛感情や怨恨の感情を充足する目的で親御さんに向けて行われる行為も、つきまとい等にあたる余地がある(ストーカー規制法2条1項)。
  5. 同棲していた相手から名誉に対する脅迫を受けた場合は、要件を満たせば接近禁止命令の申立ての対象になりうる(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)。
  6. 自分の側のLINEは消さず、言い返しや期限内の約束を避け、親御さんには約束や署名をしないよう伝えておく。
  7. 弁護士が入ると窓口が代理人に移り、削除に加えて「見せない・送らない」「家族に接触しない」ことを合意書で取り決められる。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。交際中や別れ際に「LINEを親に見せる」と言われて身動きが取れなくなっている方も、すでに親御さんに連絡が届いてしまった方も、状況を伺ったうえで、今できることを一緒に整理します。

ご相談の内容が親御さんに伝わらないよう、連絡方法や書面の送付先にも配慮します。ご自身の送った言葉に気がかりな点がある段階でも、お気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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