【男女トラブル】別れを告げたら相手が自分の上司に話した|職場への影響を抑える

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年10月時点の法令・判例に基づいて作成しています。名誉毀損・プライバシー侵害の考え方、懲戒処分に関する判例、男女雇用機会均等法とセクシュアルハラスメント防止の指針の内容を踏まえています。


「別れを伝えた翌日、相手が会社に電話をかけて、上司に交際していたことを話してしまった」「上司から呼び出されて事情を聞かれたが、何をどこまで説明すればよいのか分からない」。交際を終えた後のご相談では、このような声をお聞きします。反対に、「交際中に受けた扱いを相手の上司に相談しただけなのに、名誉毀損だと言われた」と戸惑う方からのご相談もあります。

 この種の問題では、相手を名誉毀損で訴えられるかどうかに関心が向きやすく、それ自体は大切な検討です。ただ、上司に話が伝わった直後の段階では、法的な責任を問うことよりも先に、職場での立場をどう保つか、話がそれ以上広がらないようにどう手当てするかを考える必要があります。この順序を誤ると、相手への対応が職場をさらに巻き込む結果になることがあります。

 この記事では、別れを告げた後に元交際相手が自分の上司に話をしてしまった場面を前提に、上司への説明、会社との関係、相手の行為の法的な評価、弁護士が関わる場合の対応を順に整理します。同じ職場で働く元交際相手との接触を減らす方法は【男女トラブル】別れた相手が同じ職場にいる|職場での接触を減らす方法、社外から職場への電話や押しかけが続いている場合は元恋人が職場へ電話・押しかけ|会社を巻き込む嫌がらせへの対応、まだ伝えられてはおらず「職場にバラす」と予告されている段階の考え方は「家族と職場にバラす」と言われた|告知の中身別に見る違法性で扱っていますので、あわせてご覧ください。

まず、上司に何が伝わったのかを確かめる

 対応を考える前提として、相手が上司に何を伝えたのかを把握する必要があります。伝わった内容によって、上司への説明の仕方も、法的に検討できることも変わるためです。

伝えられた内容を4つに分けて考える

 元交際相手が上司に伝える内容は、おおむね次の4つに分けて考えることができます。

伝えられた内容考え方の目安
交際していたという事実だけそれ自体で職場での評価が大きく下がることは通常考えにくく、説明は短くて足ります
別れ方への不満や人柄についての評価上司にとっては一方の言い分にすぎず、業務への影響がないことを示せば足りる場合が多いといえます
性的な事柄、家族、健康、借金など私生活の具体的な事情伝える必要のない私生活上の事柄であり、プライバシーの問題として検討する余地があります
事実と異なる内容(「お金を返さない」「ハラスメントを受けた」など)放置すると誤解が残るため、否定する部分と根拠を整理する必要があります


 複数の内容が混ざっていることも少なくありません。どの内容が、どの程度具体的に伝わったのかによって、その後の対応の重さが変わります。

上司に確認しておきたいこと

 上司から事情を聞かれた際は、こちらから説明するだけでなく、相手が何を伝えたのかを確認させてもらうことが大切です。次のような点を、可能な範囲で教えてもらうとよいでしょう。

  • いつ、電話・メール・来社などのどの方法で連絡があったか。
  • 誰に対して、どのような内容を伝えたか。
  • 写真やメッセージの画面など、資料を示したり送ったりしたか。
  • 上司以外の人にも伝えているか、伝えると言っているか。
  • 相手から今後の要求や再度の連絡の予告があったか。


 上司が話しにくそうにしている場合は、無理に全てを聞き出す必要はありません。少なくとも、資料が渡っているかどうかと、他の人にも伝わっているかどうかは確認しておくと、その後の判断がしやすくなります。

メールや手紙は保存してもらう

 相手からの連絡がメールや手紙で届いている場合は、削除せずに保存しておいてほしいと上司にお願いしておきます。電話の場合も、日時と話の要旨をメモに残してもらえると、後で相手の行為を説明する材料になります。自分の手元のやり取りの保存方法は男女トラブルの証拠の集め方|LINE・録音・写真を法的に有効にするで説明しています。

上司への説明は「短く、事実と業務への影響に絞る」

 上司が知りたいのは、多くの場合、交際の詳しい経緯ではなく、業務に支障が出ないかどうかです。説明の重点もそこに置きます。

交際の経緯を詳しく話す必要はない

 私生活上の交際について、上司にどこまで話すかは本人が決めてよい事柄です。たとえば「以前、私的に交際していた相手で、すでに関係は終わっています。業務に影響が出ないよう対応しますので、ご迷惑をおかけしないようにします」といった程度の説明で足りることが多いでしょう。

 相手の言い分に一つ一つ反論しようとして、別れの原因や相手の言動を詳しく話すと、今度は自分が相手の私生活を職場に伝える形になります。説明は短く、事実と業務への影響に絞ることが、自分の立場を守ることにもつながります。

事実と異なる部分は、落ち着いて否定する

 「借りたお金を返していない」「交際中にハラスメントをした」など、事実と異なる内容が伝わっている場合は、その部分は事実ではないと、落ち着いて伝えておきます。その場で相手を強く非難する必要はありません。必要であれば、やり取りの記録など根拠を示せることも伝えておくと、上司も一方の話だけで判断せずに済みます。

 お金の貸し借りなど、相手の主張に一部でも思い当たる点がある場合は、上司の前で結論を出さず、弁護士に相談したうえで整理する方が安全です。交際中のお金をめぐる考え方は別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いで扱っています。

会社にお願いしておきたいこと

 説明とあわせて、会社にお願いしておくと職場への影響を抑えやすくなる点があります。

  • この件を社内で共有する範囲を、必要な人に限ってもらう。
  • 相手から再び連絡があった場合は、取り次がずに用件と日時を記録してもらう。
  • 自分の勤務予定、所属、連絡先などを相手に伝えないようにしてもらう。
  • 相手が来社した場合の対応(受付で用件を聞く、面会させないなど)を決めておいてもらう。


 会社の側も、従業員が安全に働けるよう配慮する義務を負っています(労働契約法5条)。私生活の問題だからと遠慮しすぎず、業務を守るための対応として具体的にお願いするとよいでしょう。

交際が終わったことで、会社から処分を受けるのか

 上司に話が伝わると、処分や評価への影響を心配される方が少なくありません。ここでは基本的な考え方を整理します。

私生活上の行為は、原則として懲戒の対象にならない

 会社が懲戒処分を行えるのは、企業秩序の維持のためであり、従業員の私生活上の行為は、原則としてその対象になりません。判例も、私生活上の行為を理由とする懲戒は、会社の事業活動に直接関連するものや、会社の社会的評価を損なうおそれがあるものに限られるという考え方をとっています(最高裁昭和49年3月15日判決など)。

 独身の者どうしの交際や、交際を終えたことは、それ自体が懲戒の理由になるものではありません。元交際相手が会社に連絡してきたという事情だけで、処分を受けることは通常考えにくいといえます。

注意が必要な場面

 もっとも、次のような場面では、会社が事実関係を確認するために事情を聞くことがあります。

  • 相手が同じ会社の従業員で、職場での言動が問題とされている場合。
  • 相手が取引先や顧客で、業務上の関係と交際が重なっていた場合。
  • 交際の当時、上司と部下など職務上の上下関係があった場合。
  • どちらかが既婚者で、不貞行為の問題を含んでいる場合。


 特に、相手が「ハラスメントを受けた」と会社に申し出た場合、会社は事実関係を迅速かつ正確に確認する義務を負っています(男女雇用機会均等法11条1項、同法に基づく指針)。この場合は、事情聴取に誠実に応じ、事実と異なる点は記録に基づいて説明します。聴取の結果を待たずに相手に直接連絡をとり、申出の取下げを求めるような行動は、かえって状況を悪くするおそれがあるため控えてください。不倫関係が会社に知られた場合の処分の考え方は【不貞慰謝料】不倫を理由に会社から処分を受けることはあるかで詳しく扱っています。

異動や退職を勧められたとき

 話が伝わった後、上司から異動や退職を勧められることがあります。勧めに応じるかどうかは本人が決めることであり、その場で返答する必要はありません。理由を確認し、説明の内容を記録したうえで、持ち帰って検討してください。相手からの連絡によって職場にいづらくなったという事情は、相手に対して法的な対応を検討する際の事情にもなり得ます。

上司に話した相手の行為は、法的にどう評価されるのか

 元交際相手が上司に話をした行為が、法的な責任を問えるものかどうかは、伝えた内容と伝え方によって分かれます。

名誉毀損|「誰に、どこまで伝わるか」が分かれ目

 名誉毀損は、人の社会的評価を低下させる事実を示すことで成立します。刑事上の名誉毀損罪は「公然と」事実を示すことが要件とされており(刑法230条1項)、上司一人に伝えただけでは、この要件を満たさないと判断される場合があります。もっとも判例は、伝えた相手が少数でも、そこから多くの人に広がっていく可能性がある場合には、公然性を認める考え方をとっています(最高裁昭和34年5月7日判決)。

 民事上の損害賠償(民法709条、710条)でも、限られた相手に伝えただけで社会的評価が下がったといえるかどうかが争点になりやすく、上司を通じて社内に広まったか、広まることを相手が予期していたかといった事情が考慮されます。なお、名誉毀損は、伝えた内容が事実であっても成立し得る点に注意が必要です。

プライバシー侵害|伝える必要のない私生活の事柄

 性的な事柄、家族や健康の事情、交際中のやり取りなど、私生活上の事柄で、本人が公開を望まず、一般に知られていないものを第三者に伝えた場合は、プライバシーの侵害として不法行為になる可能性があります。名誉毀損と違い、社会的評価が下がったかどうかではなく、伝える必要のない私生活の事柄を伝えたかどうかが問題になります。上司に伝えた内容が、交際していた事実を超えて具体的な私生活に及んでいる場合は、この観点から検討することになります。

連絡や来社が繰り返される場合

 一度の電話にとどまらず、会社への電話や来社が繰り返され、業務に支障が出ている場合は、業務妨害(刑法233条、234条)として警察に相談できる場面があります。また、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で、勤務先付近での待ち伏せや、拒んだ後の連絡の繰り返しを伴っている場合は、ストーカー規制法の対象になり得ます。手続の流れはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れをご覧ください。

性的な画像を見せた・送った場合

 相手が交際中に撮影した性的な画像を上司に見せたり送ったりした場合や、そうすると告げている場合は、他の場面とは緊急度が異なります。画像がさらに広がる前に対応する必要があるため、早めにご相談ください。考え方は別れた相手が裸の画像を持っている|拡散される前に削除させる交渉で説明しています。

職場への影響を広げないために控えたい行動

 上司に話が伝わった直後は、気持ちが動揺しやすい時期です。この段階での対応が、その後の職場での立場に影響することがあります。

相手への抗議や言い返しは控える

 相手に抗議の連絡を重ねる、相手の勤務先や家族に事情を伝え返すといった行動は、相手に新たな言い分を与え、場合によっては自分が名誉毀損やプライバシー侵害の責任を問われる側になります。次のような行動は控えてください。

  • 相手に抗議や謝罪要求のメッセージを繰り返し送る。
  • 相手の勤務先や家族に、交際中の出来事や相手の言動を伝える。
  • SNSで経緯を説明したり、相手を批判したりする投稿をする。
  • 共通の知人を通じて相手に圧力をかける。


同僚に経緯を説明して回らない

 上司以外の同僚にも誤解されていないか心配になり、自分から経緯を説明したくなることがあります。しかし、説明して回るほど、話を知る人の範囲は広がります。社内で話をする相手は、上司や人事など必要な人に限ることが、話を広げないための基本です。同僚から尋ねられた場合も、「私的なことなので、業務には影響させません」と短く答える程度にとどめるとよいでしょう。

弁護士が間に入る場合にできること

 相手が今後も会社に連絡すると言っている場合や、伝わった内容に事実と異なる部分や性的な事柄が含まれている場合は、弁護士が間に入ることを検討します。

勤務先への連絡をやめるよう、代理人から求める

 弁護士が代理人として相手に通知を送り、勤務先への連絡や本人への直接の連絡を控えるよう求めることができます。連絡の窓口が弁護士に一本化されることで、相手が会社に連絡する理由をなくす効果も期待できます。通知の意味については受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで説明しています。

 通知を送る時期や書き方は、職場の状況に合わせて検討します。相手が同じ会社の従業員である場合は、業務上の連絡まで妨げることのない書き方にする必要があります。

合意書で「勤務先への連絡禁止」「口外禁止」を定める

 交際中のお金や物の扱いなど、清算すべき問題が残っている場合は、それらを含めて合意書の形で整理し、勤務先への連絡をしないこと、交際中の事柄を第三者に話さないことを条項として定めることが考えられます。条項の作り方と限界は接触禁止条項・口外禁止条項の書き方と限界をご覧ください。

損害賠償を求めるかどうかは、目的に照らして判断する

 相手の行為が名誉毀損やプライバシー侵害に当たる場合でも、損害賠償を求めるかどうかは別に判断します。訴訟になれば、相手が交際中の出来事を改めて主張し、職場に関わる事柄が書面に記されることもあります。職場への影響を抑えることが目的であれば、まず相手の連絡を止め、口外しない約束を取り付けることを優先する方が適している場合があります。

 勤務先への連絡をめぐって弁護士が関わった例として、【解決事例】元交際相手からの金銭要求と勤務先への電話|接触禁止の誓約書を取得し、支払いなく解決した事例、【解決事例】結婚を伝えた相手から退職と慰謝料を求められた|受任通知の届け方を整え、接触が止まった事例もご覧ください。

よくあるご質問

上司から相手に「もう連絡しないでほしい」と伝えてもらってもよいですか?

 会社として、業務に関係のない連絡を控えてほしいと相手に伝えることは、業務を守るための対応として考えられます。ただ、上司が相手とやり取りを重ねると、上司が交渉の窓口のようになり、かえって話が長引くこともあります。会社からは「業務に関係のない連絡には対応しない」と一度伝えてもらう程度にとどめ、それでも連絡が続く場合は、弁護士を窓口にすることを検討してください。

相手が「ハラスメントを受けた」と会社に申し出ています。どうすればよいですか?

 会社は、申出があれば事実関係を確認する義務を負っているため、事情聴取が行われることがあります。聴取には誠実に応じ、交際していた期間、関係が終わった時期、職場でのやり取りの実際などを、記録に基づいて説明してください。会社には、相談者だけでなく行為者とされた側のプライバシーを保護することも求められていますので、聴取の内容が社内で広まらないよう配慮を求めることもできます。説明の内容に不安がある場合は、聴取の前に弁護士に相談しておくと安心です。

相手を名誉毀損で訴えれば、上司の誤解は解けますか?

 訴訟で名誉毀損が認められれば、相手の言い分が事実でなかったことを示す材料にはなります。ただ、判決までには時間がかかり、その間に職場での評価が固まってしまうこともあります。上司の誤解を解くには、まず事実と異なる部分を落ち着いて伝え、業務に影響させない姿勢を示すことが近道です。訴訟を検討するのは、相手の行為が繰り返されている場合や、職場での評価への影響が大きい場合など、他の方法では足りないときと考えるのが現実的です。

まとめ


  1. 上司に何が伝わったのか(交際の事実、相手の評価、私生活の具体的な事情、事実と異なる内容)を確かめ、資料が渡っているか、他の人にも伝わっているかを確認する。
  2. 上司への説明は短く、事実と業務への影響に絞り、事実と異なる部分は落ち着いて否定する。
  3. 会社には、共有範囲の限定、相手からの連絡の記録、個人情報を伝えないことをお願いしておく(会社は労働契約法5条の安全配慮義務を負う)。
  4. 私生活上の行為は原則として懲戒の対象にならず、交際を終えたこと自体は処分の理由にならない(最高裁昭和49年3月15日判決など)。
  5. ハラスメントの申出があれば会社は事実確認を行うため、聴取に誠実に応じ、相手への直接の働きかけは控える(男女雇用機会均等法11条1項)。
  6. 相手の行為は、伝えた範囲によって名誉毀損(刑法230条1項、民法709条・710条)、伝えた内容によってプライバシー侵害が問題になり、繰り返しの連絡は業務妨害やストーカー規制法の対象になり得る。
  7. 職場への影響を抑えるには、相手への抗議や同僚への説明を控え、代理人による連絡の停止と合意書での口外禁止を優先して検討する。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。別れを告げた後に元交際相手が上司や勤務先に話をしてしまった場合も、職場での立場を保つことを第一に、上司への説明の仕方や相手への伝え方を含めて、状況に合った対応を一緒に検討します。

元交際相手からの勤務先への連絡に悩んでいる方はもちろん、相手の上司に事情を伝えたところ「名誉毀損だ」と言われて戸惑っている方からのご相談もお受けしています。お一人で抱え込まず、早い段階でご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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