【風俗トラブル】キャストに怪我をさせたと言われたが身に覚えがない

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月1日時点の民法、刑法、刑事訴訟法、弁護士法などの規定に基づいて書いています。個別の事情によって見通しは変わりますので、具体的な対応はご相談のうえで判断してください。


「終わった後、キャストから『痛い、ケガをした』と言われたが、そんな強さで触れた覚えはない」「帰宅してから店に電話で『うちの子がケガをした。治療費を払ってほしい』と言われた」。風俗店やデリヘル、メンズエステを利用した方から、このようなご相談をいただくことがあります。

 ケガをさせたことを前提にした解説は多くありますが、「そもそも身に覚えがない」という場面で何を確かめればよいかは、あまり整理されていません。身に覚えがないからといって強く言い争えば、その場の言動が後に残ります。一方で、早く終わらせたい一心で謝ったりお金を払ったりすると、ケガをさせたことを認めた資料として扱われるおそれがあります。

 この記事では、利用した客の方を想定し、キャストや店から「ケガをさせた」と言われたものの身に覚えがないときに、その場と、その後の数日で何をするかを整理します。相手のケガを軽く見たり、被害の申告を疑ってかかったりすることを勧める趣旨ではありません。事実を正確に確かめることが、双方にとって納得できる解決の前提になるという考え方でお伝えします。

まず結論|今日すること・しないこと

 最初に結論をまとめます。理由は後の章で説明します。

  • いつ、どこを、どのようにケガをしたと言われたのかを、言われた言葉のまま書き留めること。
  • 入店・退室の時刻、予約の記録、店とのやり取りを消さずに残すこと。
  • その場では「事実関係を確認したうえで、あらためて連絡します」と短く伝えること。
  • その日のうちに弁護士へ相談し、店やキャストとの窓口をどうするか決めること。


 反対に、次のような行動は、後から自分の立場を苦しくするおそれがあります。

  • 早く終わらせたい気持ちから、事実と異なる内容まで含めて謝ること。
  • 内容を確かめないまま、現金を渡したり書面に署名したりすること。
  • 身分証を預けたり、勤務先や家族の連絡先を伝えたりすること。
  • キャストの体を見せるよう求めたり、声を荒らげて言い争ったりすること。


「身に覚えがない」にはいくつかの形がある

 一口に「身に覚えがない」といっても、中身は人によって異なります。どの形に近いかで、確かめるべきことが変わります。

自分の認識よくある例まず確かめること
ケガそのものを見ていないその場では何も言われず、後日店から電話で告げられたどこに、どのようなケガがあるとされているか
ケガはあるが、自分の時間に生じたとは思えないあざやすり傷を示されたが、そうなる場面に心当たりがないケガに気づいた時期と、受診までの経過
触れたことはあるが、ケガになるとは思っていない体をつかむ、押さえるなどの接触はあった接触の強さと、ケガとのつながり
記憶がはっきりしないお酒に酔っていて細部を覚えていない覚えていることと覚えていないことの区別


 この記事で主に扱うのは、表の上の二つです。三つ目のように接触自体に心当たりがある場合は、「傷害」にあたるかどうかという別の問題になります。四つ目の場合は、覚えていないことを「なかった」と言い切らないことが大切です。記憶があいまいな部分まで否定しきってしまうと、後で記録と食い違ったときに、ほかの説明まで信用されにくくなるおそれがあります。

相手にけがをさせた自覚がない|傷害罪の「傷害」はどこからか
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ケガの存在と原因は、請求する側が示すのが原則


金銭を請求される場合

 治療費や慰謝料を請求する根拠は、多くの場合、不法行為に基づく損害賠償(民法709条)です。この請求が認められるには、客の行為があったこと、ケガという損害が生じたこと、その行為によってケガが生じたこと(因果関係)が必要で、これらは請求する側が示すのが原則です。「ケガをさせていないことを証明しろ」と言われても、客の側が先にその証明を求められるわけではありません。

警察が関わる場合

 刑事事件になった場合も、犯罪にあたる事実を証明するのは検察官です。ケガをさせたとされれば傷害罪(刑法204条)が問題になり、性的な行為の過程で生じたとされれば、不同意わいせつ致傷罪や不同意性交等致傷罪(刑法181条)という重い罪が問題になることもあります。

それでも「否定すれば終わる」わけではない

 ただし、個室での出来事には第三者の目撃がなく、キャストの説明や診断書が重く見られやすいという事情があります。立証の負担が相手にあることは、何もしなくてよいという意味ではありません。こちらの認識を裏づける記録を残し、説明を一貫させておくことが、結果として自分を守ることにつながります。

「いつ、どこで」生じたケガかを確かめる


時間の前後を整理する

 キャストは、同じ日にほかの利用客への接客や移動をしていることがあります。ケガに気づいたのはいつか、受診したのは何日後か、といった経過によって、そのケガがあなたの利用時間に生じたといえるかの評価は変わり得ます。予約時刻、入室と退室の時刻、決済の記録などは、この時間の整理に役立ちます。

部位や程度と、説明が合っているか

 「強くつかまれた」「押し倒された」といった説明と、示されたケガの部位や形が合っているかも、確かめる視点の一つです。自分の記憶と違う説明があれば、どの点が違うのかを具体的に書き留めておきます。

診断書を示されたとき

 診断書の「受傷の原因」は、通常、受診した本人の説明をもとに書かれます。また「全治○週間」は、初診時点の見込みです。診断書があることと、あなたの行為でそのケガが生じたことは、分けて考える必要があります。

ケガをさせたと主張された場合|致傷の主張と診断書の読み方
「全治○週間」と言われた|診断書と傷害の重さの評価

 なお、ケガを確かめたいからといって、キャストに体を見せるよう求めたり、写真を送らせたりすることは控えてください。相手の負担になるだけでなく、それ自体が新たなトラブルの種になります。確認は、弁護士を通じて書面で資料を求める方法で行うのが穏当です。

その場と、その後のやり取りで気をつけること


認めるでも、否定しきるでもない伝え方

 その場で事実関係を言い争うと、感情的になりやすく、発言が後に残ります。「ケガをさせるようなことをした覚えはありません。事実関係を確認したうえで、あらためて連絡します」と短く伝える程度にとどめるのが一つの方法です。相手が痛がっている様子であれば、体調を気遣う言葉をかけることは差し支えありません。それはケガをさせたことを認めることとは別の話です。

一部だけ払う・謝罪文を書くことの意味

 「治療費だけでも」と言われて一部を払ったり、「今後気をつけます」という書面を書いたりすると、後日、ケガをさせたことを前提にした行動として受け取られるおそれがあります。すでに自分で連絡や支払いをしてしまった場合でも、その後の対応で整理できることはあります。

店が用意した示談書にサインする危険性|宥恕条項・清算条項の落とし穴
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身分証は預けず、連絡先は伝えて離れる

 身分証のコピーや勤務先の情報は、一度渡すと取り戻すことが難しくなります。一方で、連絡先も告げずに立ち去ると、逃げたと受け取られるおそれがあります。電話番号を伝え、弁護士を通じて連絡すると告げたうえでその場を離れるのが、後の見通しを悪くしにくい方法です。

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治療費や休業補償を示されたとき

 後日、治療費、通院費、休業補償、慰謝料などをまとめた金額を示されることがあります。示された金額と、支払う義務のある金額は同じではありません。仮にケガとの結びつきが認められる場合でも、治療費は実際に支出したことの裏づけが、休業補償は休んだ事実と収入の裏づけが、それぞれ必要になります。

 また、店が「罰金」や「店の損害」を上乗せしてくることもあります。店の損害とキャスト個人の損害は別に考えるもので、店に払ってもキャスト本人との関係が清算されるとは限りません。

治療費・検査費・休業損害は認められるのか|請求項目別の検討
誰に払うのか|店の損害とキャスト個人の損害は別

警察の話が出たとき

 キャストや店が警察に相談するかどうかを、客の側で止めることはできません。相談されたからといって、ただちに逮捕されるとは限らず、在宅のまま事情を聴かれることもあります。

 事情を聴かれる場合、言いたくないことは言わなくてよいとされています(刑事訴訟法198条2項)。作成された調書は読み聞かせを受け、違う点があれば訂正を求めることができ、内容に納得できなければ署名を断ることもできます(同条4項・5項)。身に覚えがないのであれば、その認識を一貫して伝えることが大切です。

 「払わなければ警察に行く」と金銭と結びつけて迫られた場合、要求の仕方や金額によっては恐喝罪(刑法249条)が問題になることもあります。ただし、ケガを申告すること自体は正当な行動であり、その線引きは簡単ではありません。言われた内容を記録したうえでご相談ください。

被害届が出る場合と出ない場合|キャスト・店の判断で何が変わるか
「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法

弁護士が入ると何が変わるのか


窓口が一本化される

 弁護士が依頼を受けると、店やキャストに対し、今後の連絡は弁護士にするよう求める通知を送ります。ご本人が店からの電話に一人で応じる必要がなくなり、家族や勤務先への連絡を控えるよう求めることもできます。

請求の根拠を書面で確かめられる

 弁護士からは、ケガの内容、受診日、診断書の写し、請求の内訳などを示すよう求めます。身に覚えがない事案では、これらの資料を見て初めて、争うべき点と話し合える点が見えてくることも少なくありません。

キャスト本人の意思を確かめた合意にする

 風俗トラブルでは、店のスタッフがキャストに代わって金額を示すことがよくあります。ただ、弁護士でない者が報酬を得る目的で他人の示談交渉を扱うことは、弁護士法72条との関係で問題になり得ます。合意をする場合も、誰が当事者で何を清算するのかを明確にし、後日の再請求を防ぐ条項を整えます。

店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点

 当事務所で、キャストのケガを主張された事案や、身に覚えのない請求を争った事案をお受けした例は、次の記事でご紹介しています。

【解決事例】デリヘル利用後にキャストの怪我を主張された男性が、店舗との合意書締結で解決した事例
【解決事例】メンズエステでの本番行為強要トラブル|身に覚えのない請求を争い65万円で解決した事例

 お電話は夜間・休日も受け付けています。店から「今日中に」と連絡が来ている場合でも、その夜のうちにご相談いただければ、翌日の受け答えを一緒に考えることができます。

よくあるご質問


少額なら、払って終わらせたほうが早いのではないですか

 早く終わらせたいというお気持ちは自然なものです。ただ、身に覚えがないまま払うと、ケガをさせたことを前提にした支払いと受け取られ、追加の請求や刑事の場面で不利に働くおそれがあります。払う場合でも、誰に、何の名目で、いくら払い、それで何が清算されるのかを書面で確かめられる形にしておく必要があります。

後日、店から電話で突然告げられました。その場で答える必要はありますか

 その場で認めるか否定するかを決める必要はありません。相手の名前、店名、日時、言われた内容を書き留め、「確認して、あらためて連絡します」と伝える程度で構いません。折り返す前に、何をどこまで話すかを決めておくと、不用意な発言を避けやすくなります。

相手のケガが本当なら、身に覚えがなくても責任を負うのですか

 ケガがあることと、それがあなたの行為によって生じたことは別の問題です。責任が問題になるのは、行為とケガの結びつきが認められる場合です。ただし、自分では気づかない程度の接触でケガが生じることもあるため、「覚えがない」だけで結論を出さず、経過を確かめたうえで判断することが大切です。

まとめ


  1. 「身に覚えがない」にも、ケガを見ていない、時期が合わない、接触はあった、記憶があいまい、といった形があり、どれに近いかで確かめることが変わります。
  2. 金銭の請求でも刑事でも、ケガの存在と原因は請求する側や検察官が示すのが原則ですが、記録を残し説明を一貫させることは欠かせません。
  3. ケガに気づいた時期、受診までの経過、部位と説明の対応を確かめ、診断書は見込みや本人の説明をもとにした書面として読みます。
  4. その場では認めるでも否定しきるでもなく短く伝え、謝罪文、一部の支払い、署名、身分証の預け入れは控えます。
  5. 示された金額と支払う義務のある金額は別であり、店の損害とキャスト個人の損害も分けて考えます。
  6. 弁護士が入ると、窓口の一本化、請求の根拠の確認、キャスト本人の意思を確かめた合意づくりができるようになります。


 「ケガをさせた」と言われた場面では、身に覚えがなくても、その日の受け答えがその後の交渉や手続に影響します。店やキャストからの連絡にどう答えるか迷ったときは、返事をする前にご相談ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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