【風俗トラブル】コンドームを外したと疑われたら、どう説明すればいい?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店を利用した後、店やキャストから「コンドームを外したでしょう」と指摘されることがあります。その場で強く問い詰められると、実際には外れていただけだった、あるいは自分では気づいていなかったという場合でも、相手の言い分に沿った説明をしてしまいがちです。本記事では、避妊具を外したと疑われたときに何が問題になり得るのか、どのような順序で事実を整理して説明すればよいのかを、刑事と民事の両面から解説します。

本記事は、2023年7月に施行された改正刑法(不同意性交等罪)を前提に作成しています。性行為の途中で同意なく避妊具を外す行為の刑事上の扱いについては、条文に直接の定めがなく、本記事で紹介するのは現時点で示されている考え方です。個別の事案での評価は、事情によって異なります。


「外したと疑われる」とき、何が問われているのか

 避妊具をめぐる指摘には、いくつかの異なる内容が含まれていることがあります。相手が何を問題にしているのかを最初に見極めることが、説明の出発点になります。

「外れた・破れた」のか、「自分で外した」のか

 避妊具は、行為の途中で外れたり破れたりすることがあります。こうした場合は、意図せずに起きた出来事として受け止められるのが通常です。これに対し、相手が問題にしているのが「客が自分の意思で外した」という点であれば、行為の評価は大きく変わります。

 同じ「避妊具が外れていた」という事実でも、偶然外れたのか、外れたことに気づいた後も続けたのか、自分の手で外したのかによって、法的な意味は異なります。店から連絡が来た段階では、相手もこの区別をはっきりさせないまま「外した」と表現していることが少なくありません。まずは、相手の主張がどの場面を指しているのかを確かめることが大切です。

風俗の場面では「本番の有無」と結びつきやすい

 多くの性風俗店では、性交(いわゆる本番行為)そのものが禁止されています。そのため、「避妊具を外した」という指摘は、その前提として性交があったという主張を含んでいることがあります。この場合、問題の中心は避妊具そのものではなく、性交について女性の同意があったかどうかに移ります。

 一方、個室内で性交に至ることが少なくない業態では、性交があったこと自体には争いがなく、避妊具の使用が条件になっていたかどうかが争点になりやすい傾向があります。自分が利用した業態と、相手の主張がどちらに重きを置いているのかを分けて考えておくと、説明すべき内容が見えやすくなります。罪名を告げられた場合の整理については、【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理で解説しています。

刑事上はどのように扱われるのか

 2023年の刑法改正により、相手の同意がないまま性交等を行う行為は、不同意性交等罪(刑法177条)として処罰の対象になりました。性行為の途中で相手の同意なく避妊具を外す行為は「ステルシング」と呼ばれることがありますが、これが不同意性交等罪にあたるかどうかについて、条文には直接の定めがありません。

 この点について、性交そのものには相手の同意があること、また、同条2項が定める誤信の類型は「わいせつな行為ではないとの誤信」と「人違い」に限られていることから、現行法の下では不同意性交等罪にはあたらないとする弁護士の見解が示されています。もっとも、これは一つの考え方であり、海外では処罰の対象としている国もあります。避妊具の使用を性交の条件としてはっきり伝えていたかどうかや、行為の具体的な状況によっては、別の評価がなされる余地も否定できません。

 また、同じ見解の中でも、避妊具を外した結果として相手に性感染症をうつした場合には、傷害罪(刑法204条)が問題になる可能性があると指摘されています。刑事上の罪にあたらない場合でも、相手が受けた精神的な苦痛について、民事上の慰謝料を請求される可能性は残ります。

問題になり得るもの主な論点
不同意性交等罪(刑法177条)性交そのものに同意があったか。風俗の場面では、本番の有無と同意の有無が争点になりやすい
傷害罪(刑法204条)性感染症をうつしたといえるか、その因果関係を示せるか
民事上の損害賠償(民法709条・710条)精神的な苦痛に対する慰謝料、アフターピルや検査にかかった実費


説明するときの基本的な考え方

 疑いを向けられたときにどう説明するかは、その後の交渉や手続の進み方に影響します。相手を納得させる言い回しを探すよりも、事実をそのまま、一貫した形で伝えることを優先してください。

覚えていることと、覚えていないことを分ける

 行為の最中のことは、時間がたつほど記憶があいまいになります。はっきり覚えている事実と、よく覚えていない部分とを分け、覚えていない部分は「覚えていない」と伝えるのが基本です。あいまいな部分を推測で補った説明は、後から別の事実が出てきたときに食い違いを生み、説明全体の信用を損なうおそれがあります。

その場の流れで認めない、事実に反して否定もしない

 店の事務所やホテルの部屋で問い詰められると、場を収めるために「外れたかもしれない」「外したのかもしれない」といった言葉を口にしてしまうことがあります。こうした発言は、後になって「本人も認めていた」と扱われることがあります。

 反対に、実際には外れたことに気づいていたのに「まったく知らない」と言い切ってしまうと、後から相手の証言や他の事情と合わなくなり、かえって不利になることがあります。認めるにしても否定するにしても、その場で結論を出す必要はありません。「事実関係を整理してから改めて回答します」と伝え、時間を置くことは十分に考えられる対応です。

「外れていた」と説明するときに押さえたい点

 意図せず外れた、あるいは破れたという場合は、その経過を具体的に説明できるかどうかが重要になります。誰が装着したのか、いつ外れていることに気づいたのか、気づいた後にどうしたのかといった点は、偶然の出来事だったことを示す手がかりになります。

 特に、外れていることに気づいた時点で行為を中断したか、相手に伝えたかは、評価を左右する事情の一つです。気づいた後も続けてしまったという場合は、その事実を隠すよりも、弁護士に経緯をありのまま伝えたうえで対応を検討するほうが、結果的に選べる手立てが残りやすくなります。

書面への署名はその場で決めない

 店から、事実を認める内容の書面や、支払いを約束する書面への署名を求められることがあります。書面に書かれた内容は、後から覆すことが簡単ではありません。内容を確認できないまま署名を急がされた場合は、持ち帰って検討したい旨を伝えてください。すでに書いてしまった場合の確かめ方は、【風俗トラブル】店の事務所で書かされた紙の写真を撮っていない|内容を後から確かめる方法で紹介しています。

説明の前に整理しておきたい事実


  • 利用した日時・店名・業態、受付で説明された禁止事項の内容。
  • 避妊具を装着したのが誰か、装着した時点。
  • 外れている・破れていることに気づいた時点と、気づいたのが誰か。
  • 気づいた後の行動(中断したか、相手に伝えたか)。
  • 終了後の相手の様子と、退店までのやりとり。
  • 店やキャストから届いた連絡の日時・内容・相手の名乗り。
  • その場で書いた書面や、提示・撮影された身分証の有無。


 これらは、記憶が新しいうちに日付を入れて書き留めておくことをおすすめします。メッセージの履歴や着信記録は、削除せずに残しておいてください。記録の作り方は、【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料でも詳しく取り上げています。

店から金銭を求められたとき

 避妊具をめぐるトラブルでは、店から「罰金」「アフターピル代」「検査費用」「慰謝料」など、さまざまな名目で金銭を求められることがあります。名目ごとに性質が異なるため、一括りにせず、分けて考えることが大切です。

 店のルール違反を理由とする罰金は、規約の内容や金額の相当性が問われ、示された金額がそのまま認められるとは限りません。アフターピルや性感染症の検査にかかる費用は、実際にかかった実費かどうかを確認する必要があります。偶然外れたという場合でも、話し合いの中で実費相当の負担を引き受けることはあり得ますが、その場合も金額の根拠を確かめたうえで判断してください。性感染症に関する請求については、【風俗トラブル】性病をうつしたと言われた|検査結果の扱いと請求への向き合い方で解説しています。妊娠を理由とする請求については、風俗・パパ活相手から妊娠を理由に金銭請求された|認知・養育費の考え方もご参照ください。

 慰謝料を請求できるのは、本来、被害を受けたとする女性本人です。店が本人に代わって示談交渉を行うことについては、弁護士法72条との関係で問題が指摘されており、店長らが同法違反の疑いで逮捕されたと報じられた例もあります。誰が、誰の権利に基づいて請求しているのかを確認することは、支払いを検討する前の重要な確認事項です。

警察から連絡が来た場合

 女性が被害を申告した場合、警察から事情を聴きたいと連絡が来ることがあります。任意の聴取であっても、そこで話した内容は供述調書として記録に残り、その後の手続で参照されます。

 聴取に応じる前に、先に整理した事実をもとに、どこまでを記憶として話せるのかを確認しておくことが大切です。店との間で話した内容と、警察で話す内容が食い違うと、その理由を問われることになります。連絡が来た段階で弁護士に相談しておけば、聴取に臨む前の準備を一緒に進めることができます。

弁護士に相談する意味

 避妊具をめぐる疑いは、行為の最中の出来事であるため、当事者の言い分が食い違いやすい問題です。弁護士にご依頼いただくと、店やキャストとの連絡窓口を弁護士に移し、ご本人が直接問い詰められる状況を避けることができます。

 また、相手の主張が「外れた」ことを問題にしているのか、「性交そのもの」を問題にしているのかを切り分け、請求の名目ごとに根拠を確認しながら交渉を進めることができます。示談に至る場合も、清算条項や接触禁止などの条項を整えることで、後から別の請求が来るおそれを減らすことにつながります。ご自身で対応するか迷われている方は、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情もあわせてご覧ください。示談書の内容については、風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで解説しています。

よくあるご質問


相手が「外すところを見た」と言っています。反論は難しいのでしょうか

 相手の証言があるからといって、その内容がそのまま事実として扱われるわけではありません。その時の体勢や照明、行為の流れなどから、相手がその場面を見ることができたのか、ほかの事情と矛盾がないかが検討されます。ご自身の記憶と異なる場合は、記憶している経過を具体的に整理しておくことが反論の土台になります。

外れたことに気づいていたのに、そのまま続けてしまいました

 気づいた後に続けたという事情は、偶然外れた場合とは異なる評価を受ける可能性があります。ただし、それだけで直ちに刑事責任が生じるとは限らず、当時の状況や相手とのやりとりによって判断は分かれます。事実を伏せたまま交渉を進めると、後から食い違いが生じたときに対応が難しくなるため、まずは弁護士に経緯をそのまま伝えてください。

アフターピル代だけなら、払えば終わりますか

 実費の支払いで話がまとまることもありますが、支払いの際に「これで解決した」ことを確認する書面がなければ、後から慰謝料など別の名目で請求されるおそれがあります。少額の支払いであっても、何に対する支払いなのか、これ以上の請求をしないことを明らかにした書面を残しておくことが大切です。

 避妊具を外したと疑われたときは、相手の言葉に合わせて説明を急ぐよりも、何が問題にされているのかを見極め、事実を一つずつ整理することが、結果的にご自身を守ることにつながります。説明の内容に迷う段階でも、早めにご相談いただければ、その後の進め方を一緒に検討することができます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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