【親子問題】家族会・当事者会の役割|弁護士に頼む前にできること
本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づいて作成しています。売春防止法については見直しの検討が進んでいるため、最新の情報もあわせてご確認ください。
「高校生の娘のスマートフォンに、見知らぬ大人とのやり取りと金額が並んでいた」「成人した子が、SNSで知り合った相手から継続して金銭を受け取っていると分かった」。親子の問題に関するご相談のなかで、子の売春やパパ活(男性の場合はママ活と呼ばれることもあります)をめぐるものは、発覚のきっかけも、ご家庭の状況もさまざまです。
インターネット上では「パパ活は犯罪になるのか」という解説が多く見られ、その内容自体は誤りではありません。ただ、法律事務所の解説の多くは相手方となった大人の刑事責任を中心に書かれており、親の立場から見て何ができ、何ができないのかという点は見えにくくなっています。そして、親がとれる手段は、子の年齢によって大きく変わります。
この記事では、子の年齢を「18歳未満」「18歳・19歳」「20歳以上」の3つに分け、それぞれの場面で親がとれる対応と、その限界を整理します。性的な画像の拡散、ホストクラブの売掛、スカウトへの対応といった個別の論点は、ここでは概要にとどめます。
最初に確かめたいのは子の年齢|対応は3つに分かれる
子が売春やパパ活に関わっていると分かったとき、最初に確認したいのは子の年齢です。同じ行為でも、年齢によって子の法的な位置づけ、相手方の大人が問われる責任、親が動ける範囲が変わります。
| 年齢 | 子の法的な位置づけ | 相手方の大人の責任 | 親がとれる主な対応 |
|---|---|---|---|
| 18歳未満 | 保護を受ける児童 | 児童買春などで処罰の対象になり得る | 親権者として警察・児童相談所に相談し、告訴もできる |
| 18歳・19歳 | 民法上は成年、少年法では特定少年 | 児童買春の規定は及ばない | 本人の意思を前提に、相談や支援につなぐ |
| 20歳以上 | 成人 | 売春の相手方になったこと自体の罰則は現行法にない | 本人の意思を前提に、トラブルが生じた部分で支える |
18歳未満の子は「被害を受けている子」として扱われる
18歳未満の子が対償を受けて性的な行為の相手方になった場合、法律はその子を処罰する対象ではなく、保護する対象として扱います。親は親権者として、子を守るための手続を自ら進めることができます。
18歳以上になると親の権限は大きく変わる
2022年4月から成年年齢は18歳です(民法4条)。18歳以上の子には親権が及ばないため、親が本人に代わって契約を取り消したり、行動を制限したりすることはできません。年齢によって「親として止める」場面から「本人の意思を前提に支える」場面へ移るという点を、まず押さえておくことが大切です。
18歳未満の子の場合|「保護」を軸に動く
18歳未満の子については、法律上の仕組みが比較的整っています。親が迷いやすいのは、どこに相談すれば子を責めることにならないか、という点です。
相手方の大人は処罰の対象になり得る
18歳未満の児童に対償を供与し、またはその約束をして性交等をした大人には、児童買春の罪が成立し得ます。法定刑は5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(児童買春・児童ポルノ禁止法4条)。対償は現金に限られず、食事や物品の提供が問題になる場面もあります(児童買春の『対償』とは何か|金銭以外の提供でも成立するのか)。このほか、事案によっては児童福祉法や各都道府県の青少年健全育成条例、未成年者誘拐罪(刑法224条)が問題になることもあります(児童福祉法違反と児童買春はどちらで立件されるのか)。
相談先は警察と児童相談所
相談先としては、警察署の少年相談の窓口や、性犯罪被害の相談電話(#8103)、児童相談所(189番でもつながります)があります。性的な被害が疑われる場合は、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)で、医療面の支援も含めて相談できます。各窓口の役割の違いは【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担で整理しています。子が被害者である場合、親は法定代理人として、子とは別に独立して告訴することができます(刑事訴訟法231条1項)。
子の行動が非行として扱われる場面もある
一方で、子が公衆の目にふれる方法で相手を勧誘していた場合などは、売春防止法5条の勧誘等に当たるとして、少年事件として家庭裁判所で扱われる可能性があります。また、将来罪を犯すおそれがあると判断された場合は、虞犯少年として扱われることもあります(少年法3条1項3号)。こうした場面でも、少年事件の手続は処罰よりも立ち直りを目的としており、付添人として弁護士が関わることができます。
18歳・19歳の子の場合|成年だが少年法の対象でもある
18歳・19歳の子は、法律ごとに扱いが異なるため、親にとって分かりにくい年齢です。
児童買春の規定は及ばない
児童買春・児童ポルノ禁止法の「児童」は18歳未満を指すため、18歳・19歳の子の相手方には同法が適用されません。各都道府県の青少年健全育成条例も、多くは18歳未満を対象としています。後で述べるとおり、売春防止法には現在のところ買う側の罰則がないため、相手方の大人の刑事責任を問える場面は、暴行や脅迫、不同意性交等罪など別の犯罪が関わる場合に限られてきます。
特定少年には虞犯の規定が適用されない
18歳・19歳の子は、少年法上「特定少年」と呼ばれます。特定少年には、虞犯少年として家庭裁判所の審判に付す規定が適用されません(少年法65条1項)。つまり、罪を犯していない限り、18歳未満のように少年審判の仕組みを通じて保護につなげることはできません。この年齢では、本人が相談や支援を受け入れるかどうかが対応の出発点になります。
20歳以上の子の場合|本人の意思が前提になる
成人した子の場合、親が「やめさせる」ための法的な手段はほとんどありません。そのうえで、親にできることを整理しておくことが大切です。
売春そのものに刑罰はなく、見直しの検討が進んでいる
売春防止法は売春と買春をともに禁止していますが(同法3条)、その行為自体に刑罰はありません。処罰の対象は、公衆の目にふれる方法での勧誘や客待ち、広告による誘引(同法5条)、周旋や場所の提供など、周辺の行為です。現行法では、勧誘等は売る側だけが処罰の対象とされています。この点について、法務省の有識者検討会は2026年9月17日、買う側の勧誘行為も処罰対象とすべきだとする報告書をまとめ、法改正に向けた検討が進められています。
親が介入できる範囲には限りがある
成人した子に対して、親は本人の同意なく代理人となることはできず、交友関係や収入の得方を法的に制限することもできません(【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲)。また、子が抱えた借金や金銭トラブルを、親が肩代わりする法的な義務もありません(【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのか)。
公的な支援につなぐという選択肢
2024年4月に施行された「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」により、各都道府県の女性相談支援センター(旧婦人相談所)などが、性的な被害や生活の困難を抱える女性への支援を担っています。子が支援を望む場合には、こうした窓口を一緒に調べることも、親にできる関わり方の一つです。
年齢を問わず確認したいこと|法的なトラブルに発展していないか
子の年齢にかかわらず、次のような事情がある場合は、家庭の中だけで抱えずに外部の専門家へ相談することをおすすめします。
- 相手から写真や動画の拡散、家族や学校・勤務先への連絡をほのめかされている。
- 相手につきまとわれている、または自宅や行動範囲を知られている。
- 子が借金を抱えている、または第三者に金銭を管理されている。
- 子が恋愛感情を装って多額の金銭を受け取るなど、加害の側に回っている可能性がある。
- スカウトや組織的なグループに取り込まれている様子がある。
- 妊娠や性感染症など、健康面の不安がある。
子が被害を受けている場合
脅しやつきまといがある場合は、恐喝や脅迫、ストーカー行為として警察に相談できる可能性があります。やり取りの記録が残っているうちに相談することが、子の安全を守るうえで大切です。
子が加害の側に回っている場合
恋愛感情を利用して相手から多額の金銭を受け取る行為が詐欺罪に問われ、実刑判決を受けた事件も報道されています。子が加害の側に関わっている可能性がある場合は、事態が大きくなる前に、刑事事件の対応に慣れた弁護士に相談することが考えられます。
子と話す前に|親が避けたい対応と、残しておきたい記録
発覚した直後は、強い不安や怒りから、とっさに動いてしまいがちです。ただ、最初の対応がその後の話し合いや手続に影響することがあります。
避けたい対応
相手方の大人に親が直接連絡して金銭の支払いを求めると、要求の仕方によっては恐喝と受け取られるおそれがあります。また、子のスマートフォンにある性的な画像を親が保存したり、転送したりすると、たとえ証拠のためであっても児童ポルノの保存や提供と評価されかねません。画像は保存せず、警察に相談するときにその存在を伝える形にとどめるのが安全です。未成年の子に対しても、体罰や子の人格を否定する言動は許されていません(民法821条)。
残しておきたい記録
記録としては、相手のアカウント名や連絡先、やり取りの日時、金銭の受け渡しの状況などを、文字でメモしておくことが役立ちます。そのうえで、責める前に、なぜそうした行動に至ったのかを聞くことが大切です。背景には、お金の問題だけでなく、家庭や学校での孤立、居場所のなさが隠れていることも少なくありません。親子の距離が近すぎて話し合いがかえって難しくなっている場合は、第三者を間に入れることで、落ち着いて向き合えることがあります。
弁護士が関わることで変わること
弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題について、弁護士が親の側の代理人として対応し、民間の自立支援カウンセラーと連携して子の生活面の支援を行う体制をとっています(【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応)。
親の側の窓口として
相手方との交渉や警察への相談の同行、脅しやつきまといへの対応など、親が一人で抱えやすい部分を弁護士が引き受けることで、親は子との関係に目を向けやすくなります(【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択)。ご相談いただいた内容は守秘義務の対象です(【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方)。
子の手続に関わる場合
子が少年事件の当事者になった場合には、子本人の付添人や弁護人としての活動も行っています。また、成人した子が生活の立て直しを望む場合は、仕事探しや住まい探し、金銭管理などをカウンセラーが日常的に支える形をとることができます。結果をお約束することはできませんが、親子それぞれが自立に向かうための道筋を一緒に考えます。
よくあるご質問
子のスマートフォンを取り上げてもよいのでしょうか。
18歳未満の子であれば、親権者は監護・教育の範囲で、利用時間の制限やフィルタリングの設定など合理的な措置をとることができます。ただし、子の人格を尊重し、体罰は用いないことが求められます(民法821条)。18歳以上の子については、本人の所有物を取り上げる権限は親にありません。
警察に相談すると、子が処罰されてしまうのではないでしょうか。
18歳未満の子が性的な行為の相手方になった場合、子は保護の対象として扱われ、処罰の中心は相手方の大人です。ただし、子自身が勧誘などを行っていた場合は少年事件として扱われることもあります。その場合も手続の目的は立ち直りにあり、弁護士が付添人として関わることができます。
相手方の大人に賠償を求めることはできますか。
未成年の子が被害を受けた場合、相手方に損害賠償を請求できる可能性があります。ただし、親が直接金銭を要求すると、言い方によっては恐喝と受け取られるおそれがあります。刑事手続との関係もあるため、請求する場合は弁護士を通じて行うことをおすすめします。
まとめ
- 子が売春やパパ活に関わっていると分かったときは、まず子の年齢を確認する。18歳未満・18歳19歳・20歳以上で、親がとれる手段が変わる。
- 18歳未満の子は保護の対象であり、相手方の大人は児童買春の罪に問われ得る(児童買春・児童ポルノ禁止法4条)。
- 18歳未満の子が被害者の場合、親は法定代理人として独立して告訴できる(刑事訴訟法231条1項)。
- 18歳・19歳の子は民法上の成年であり(民法4条)、特定少年には虞犯の規定が適用されない(少年法65条1項)。
- 売春そのものに刑罰はなく、処罰されるのは勧誘等の周辺行為である(売春防止法3条・5条)。買う側の勧誘の処罰について、見直しの検討が進んでいる。
- 成人した子については、本人の意思を前提に、脅しや金銭トラブルなど法的な問題が生じた部分で支えることになる。
- 相手方への直接の金銭要求や、子の性的な画像の保存・転送は避け、記録は文字で残す。
子の売春・パパ活でお悩みの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。遠方にお住まいの方からのご相談にも対応しています(【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際)。
子の年齢や状況によって、とれる手段と相談すべき窓口は変わります。お子さまを守りたいとお考えの方も、成人したお子さまとの関わり方に悩んでいる方も、どこから手をつければよいか分からない段階でご相談ください。相談の前に状況を整理しておきたい方は、【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報もあわせてご覧ください。


