マナーうんちく話2220《猛暑・激暑の中でも感性漂う葉月の歳時記》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

我が家の庭には、遅まきのヒマワリが大輪の花を逞しく咲かせています。
それとは対照的に、毎年自然に生えてくる「水引」がひっそりと咲いています。
水引はその紅白の小さな花や果実が祝儀袋の水引によく似ているので、それに例えて名づけられた多年草ですが、全国の山地や路傍などで見られます。
さらに朝顔や芙蓉も次々と花開き田舎の夏を楽しませてもらっています。
こちらは青空のもと、昼咲いてすぐしぼむ一日花ですが、この時期に多いのが特徴です。
ところで8月の和風月名は「葉月」ですが、葉月の由来も諸説あります。
一年で最も気温が高く、汗をいっぱいかいて過ごす時節ですが、木の葉が散り始める月という意味で「葉落ち月」が短縮された説が有力です。

まさに秋の始まる時で、令和6年8月7日は「立秋」で、古くから重要な季節の一つです。
従って、この日を過ぎればいくら暑くても「残暑見舞い」になります。
気温より暦が優先ということです。
ちなみに「残暑」とは立秋から秋分までの暑さのことです。

8月8日から12日頃は七十二候の「涼風至」です。
「マナーうんちく話」ですでに触れましたが、藤原敏行の《秋きぬと 目にはさやかにみえねども 風の音にぞ おどろかれねる》の歌はこの時期にぴったりですね。
秋になったと目に見ることはできないけれど、吹く風の音に、はっと秋の訪れを感じたという意味ですが、吹く風で季節の到来を察する感性は見事ですね。

私が幼い頃には「夕涼み」があり、大変ゆったりしたひと時を過ごしました。
現代人はこんな素晴らしい文化を失った気がしてなりません。
繊細な感性はこのような時間から生まれると思うのですが、実にもったいない限りです。

先人の繊細な感性の素晴らしさを感じる言葉はこれだけではありません。
戦国武将が発した「桐一葉落ちて天下の秋を知る」があります。
桐は数ある樹木の中でいち早く秋の到来を察して葉っぱを落葉させるので、桐の葉が落ちたら、秋が来たことが把握できるわけです。
戦いに明け暮れた時代の武将は、常に家来や領民を守るという大きな使命を背負っていただけに、本当に素晴らしい人が沢山存在したのでしょうね。
裏金作りに精を出していた政治家とは「人となり」が全く違う気がします。
またこの言葉には「ほんの些細な事象から未来を予知する」意味も含まれています。
ITもAIにも無縁だったこの時代に、ほんのわずかな自然現象から未来を予測するわけですから、どんな頭をしていたのでしょうか。
この格言の偉大さを感じます。

ところで春は東風が、夏は南風が運んできますが、秋は西風が連れてきます。
西の窓を大きく開けて、西風を初々しく迎えるのもお勧めです。

秋という言葉が全く頭をよぎらないくらいの猛暑が続いていますが、目に見えないところでは、季節が一生懸命秋になろうと努力をしています。
8月22日は二十四節気の一つ「処暑」です。
残暑が少し和らぐ時期とされていますが、ところどころで小さい秋を感じることができる頃です。
また野山を歩いていると「秋の七草」が目立ち始めます。
虫の美しい鳴き声も聞こえてきます。
昔ほどの威勢はなくなりましたが、夏の終わりを告げる風物詩「ひぐらし」の声が聞こえてきます。「薄羽黄トンボ」も飛び始めます。
「秋の味覚」も出回り始めます。
ことしの「秋刀魚」はどうでしょうか?

これまで経験したことがないような暑さに、すっかり慣れてしまった気がしますが、今も昔も四季の国日本では、冬は寒く、夏は暑かったと思います。
それに上手に同化して、少しでも快適に暮らせるよう様々な工夫を重ねてきたのが日本人だと思います。
季節に上手に同化できたからこそ、豊かな感性が身についたわけですが、クーラー生活や英語に慣れ切った現代人には、情緒や感性という言葉が次第に縁遠くなりそうな気がします。
小さい頃からの英語教育で、日本人独特の感性が薄れるのではと危惧する学者もいるようですが、私も同感です。
ただ、そうかといって、もはや風鈴や打ち水や浴衣や団扇だけでの暑気払いも難しいのが現実です。
せめて秋らしいイベントを取り入れるくらいでしょうか・・・。
そして先人が長い時間かけて築いてくれた多彩で豊かな文化に感謝しながら、和の心を尊重し、その素晴らしい精神性を、子や孫に語り繋いでいくことができればいいですね。私の講話はここに重きを置いています。

夏の終わりは不思議なもので、一抹の寂しさが漂います。
《送り火や 今に我らも あの通り》(小林一茶)

猛暑を乗り越えたご褒美ともいえるでしょうか、彩り豊かな多くの季語を始め、自然の美しさが待ち受けています。
また夏を惜しむ人もいれば、本格的な秋の到来を待ちわびている人もいるでしょう。
「夏の果て」という季語があります。
大変ユニークな言葉で、四季の中でも夏だけの表現ですね。

いずれにせよこの時節は、朝晩と日中の気温差が大きくなりますので体調管理をしっかり行い、猛威を振るっているコロナと熱中症にも細心の注意を払い、楽しいイベントが勢ぞろいの日本の夏をお楽しみ下さい。
次回は「祖霊信仰」と「お盆」に触れてみます。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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