マナーうんちく話2205《弥生3月、大切にしたい去り際の作法》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:マナーの心得

春爛漫の情景を思って、心が華やぐ季節です。
夢に向かって大いに羽ばたいていただきたいものです。

2月4日の「立春」から暦の上では春ですが、この時期は「春は名のみよ・・・」とうたわれるように厳しい寒さが続きます。
しかし3月の声を聞くと、春を身体全体で感じることができます。

うららかな天候に恵まれ、鶯の初音も聞こえてきて、いかにも春といった感じですね。

畑で芽吹いた春野菜の苦みをしっかり取り込み、身体を浄化させ、身も心も目覚めて下さい。
「春の食卓には苦みを盛れ」といわれます。

ところで春は「出会い」と「別れ」の季節といわれますが、年度末を迎える3月は「別れ」のシーンが多い季節ですね。

新年度に向け様々な動きが目立つようになりますが、慣れ親しんだ環境や人との別れは誰しも、切なくなり、不安になり、心が落ち着かなくなるものです。

「五輪書」で有名な剣豪の宮本武蔵は「いずれの道にも、別れを惜しまず」という名言を残しています。
武士という道を歩んだからこそ生まれた言葉だと思います。

長い人生において、別れは何度も経験します。
感傷的になるのではなく、人生とはそんなものだと捉えた方がいいということでしょう。

また、別れがあるからこそ、今までの日常生活のありがたさが身に染みるわけです。さらに、別れがあるからこそ、新しい出会いにも期待ができるということですね。

出会いは偶然ですが、別れは必然なのかもしれません。

周囲との人間関係は、長い人生をよりよく生きるために必要不可欠なものです。
今ある「ご縁」を大事にしていただきたいと思います。

しかし、これらの関係は未来永劫に続くものではなく、潮時があります。

学生だったら卒業、職業人だったら転勤や移動や退職などがその時といえるでしょう。

別れは何回経験しても悲しいものですが、不必要にネガティブにならずに、新しい出会いに期待することも大切です。
加えて、辛い別れも、時間がある程度経過すれば「思い出」に代わります。

日本には「去り際」を大事にする美学があります。

「終わり良ければ総て良し」「立つ鳥跡を濁さず」「有終の美」という言葉がありますが、いずれも終わり方に美学を求めている言葉であり、日本人にはなじみの深いものばかりです。

「別れ際」にはその人の品格が出ます。

改めて、別れ際のマナーに触れてみます。

別れが決まれば、周囲の人になるべく早く伝えて下さい。
その上で、引継ぎを丁寧に行うことも大切です。

どうせ後がないのだからといって中途半端にせず、最後までチームの一員として全力を尽くしてください。
残りをしっかりやり遂げるということです。

そしてあとの人に、今までお世話になったことへの感謝を伝えて下さい。
思いやりの言葉もお忘れなく。

相手次第ですが、褒めたり、激励したりすることもいいでしょう。
最後に、できれば再会を希望するような言葉もお勧めです。

ポイントは自分の気持ちを素直に伝えることです。

接遇マナーの世界には「お迎え3分にお見送り7分」という言葉があります。
とにかく別れ際を大切にして下さいということです。

また江戸しぐさにも、相手に、また会いたいと思わせる「後引きしぐさ」があります。

いっぽう、裏金づくりに奔走した政治家に例えられるでしょうか?
上辺だけで、謙虚さや誠実さがみじんも感じられない「うたかたしぐさ」もあります。
引き際の潔さを発揮してほしいものですね。

最後に、別れ際に手を振ることが多々あります。

道路や交通事情が悪かった昔の人の道中は危険がいっぱいです。

そこで見送りをする人が、去っていく人の道中での安全を、空気中の神様にお願いしたわけです。

日本には、八百万の神様といわれるように、木や石や川や湖や空気中まで神様がいますので、手を振ることで空気中の神様にコンタクトを取り、道中の無事を、お願いしたわけです。

素晴らしい文化だと思います。
大事にしたいですね。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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