マナーうんちく話622≪世界平和記念日と日本の礼儀作法≫
春爛漫の情景を思って、心が華やぐ季節です。
夢に向かって大いに羽ばたいていただきたいものです。
2月4日の「立春」から暦の上では春ですが、この時期は「春は名のみよ・・・」とうたわれるように厳しい寒さが続きます。
しかし3月の声を聞くと、春を身体全体で感じることができます。
うららかな天候に恵まれ、鶯の初音も聞こえてきて、いかにも春といった感じですね。
畑で芽吹いた春野菜の苦みをしっかり取り込み、身体を浄化させ、身も心も目覚めて下さい。
「春の食卓には苦みを盛れ」といわれます。
ところで春は「出会い」と「別れ」の季節といわれますが、年度末を迎える3月は「別れ」のシーンが多い季節ですね。
新年度に向け様々な動きが目立つようになりますが、慣れ親しんだ環境や人との別れは誰しも、切なくなり、不安になり、心が落ち着かなくなるものです。
「五輪書」で有名な剣豪の宮本武蔵は「いずれの道にも、別れを惜しまず」という名言を残しています。
武士という道を歩んだからこそ生まれた言葉だと思います。
長い人生において、別れは何度も経験します。
感傷的になるのではなく、人生とはそんなものだと捉えた方がいいということでしょう。
また、別れがあるからこそ、今までの日常生活のありがたさが身に染みるわけです。さらに、別れがあるからこそ、新しい出会いにも期待ができるということですね。
出会いは偶然ですが、別れは必然なのかもしれません。
周囲との人間関係は、長い人生をよりよく生きるために必要不可欠なものです。
今ある「ご縁」を大事にしていただきたいと思います。
しかし、これらの関係は未来永劫に続くものではなく、潮時があります。
学生だったら卒業、職業人だったら転勤や移動や退職などがその時といえるでしょう。
別れは何回経験しても悲しいものですが、不必要にネガティブにならずに、新しい出会いに期待することも大切です。
加えて、辛い別れも、時間がある程度経過すれば「思い出」に代わります。
日本には「去り際」を大事にする美学があります。
「終わり良ければ総て良し」「立つ鳥跡を濁さず」「有終の美」という言葉がありますが、いずれも終わり方に美学を求めている言葉であり、日本人にはなじみの深いものばかりです。
「別れ際」にはその人の品格が出ます。
改めて、別れ際のマナーに触れてみます。
別れが決まれば、周囲の人になるべく早く伝えて下さい。
その上で、引継ぎを丁寧に行うことも大切です。
どうせ後がないのだからといって中途半端にせず、最後までチームの一員として全力を尽くしてください。
残りをしっかりやり遂げるということです。
そしてあとの人に、今までお世話になったことへの感謝を伝えて下さい。
思いやりの言葉もお忘れなく。
相手次第ですが、褒めたり、激励したりすることもいいでしょう。
最後に、できれば再会を希望するような言葉もお勧めです。
ポイントは自分の気持ちを素直に伝えることです。
接遇マナーの世界には「お迎え3分にお見送り7分」という言葉があります。
とにかく別れ際を大切にして下さいということです。
また江戸しぐさにも、相手に、また会いたいと思わせる「後引きしぐさ」があります。
いっぽう、裏金づくりに奔走した政治家に例えられるでしょうか?
上辺だけで、謙虚さや誠実さがみじんも感じられない「うたかたしぐさ」もあります。
引き際の潔さを発揮してほしいものですね。
最後に、別れ際に手を振ることが多々あります。
道路や交通事情が悪かった昔の人の道中は危険がいっぱいです。
そこで見送りをする人が、去っていく人の道中での安全を、空気中の神様にお願いしたわけです。
日本には、八百万の神様といわれるように、木や石や川や湖や空気中まで神様がいますので、手を振ることで空気中の神様にコンタクトを取り、道中の無事を、お願いしたわけです。
素晴らしい文化だと思います。
大事にしたいですね。