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平松幹夫

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平松幹夫(ひらまつみきお) / マナー講師

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

コラム

マナーうんちく話2004《今も昔も同じ!雛祭りに込められた思い》

2024年2月24日

テーマ:歳時記のマナー

コラムカテゴリ:くらし

コロナで規模が縮小、延期、中止になった日本の伝統行事が復活し、再び活気づいていますね。

「雛祭り」もそうでしょう。
全国各地で盛大に開催され賑わっています。
祭りに込められた先人の思いを汲んで、次世代に紡いでいきたいものです。

●五節句と「上巳の節句」
3月3日は「上巳」の節句です。

「節句」とは伝統的な行事を行う季節の節目であり、子孫繁栄、邪気払い、無病息災などの願いが込められています。

かつては沢山存在していましたが、江戸幕府が年間の公式行事として「人日の節句」「上巳の節句」「端午の節句」「七夕の節句」「重陽の節句」の5つの節句を定め、現在に至っています。

この「五節句」は、陰陽思想に基づき、縁起のいい奇数でまとめられていますが、二十四節気よりもさらに大きな、一年の節目と捉えていいと思います。
そして、それぞれ独特の由来や歴史や「行事食」と呼ばれる食べ物があります。

●もともと人形は飾るものではなく、流すものだった
上巳は「じょうし」、あるいは「じょうみ」と読みます。
「巳」は12支の「巳」で、上巳とは3月最初の巳の日で、この日は天から災いが降ってくる日とされていました。

そこで紙や草で自分の分身になる人形を作り、それで自分の身体を撫でて、身体についた災いを移し、息を吹きかけ川や海に流したわけです。

自分の変わりに人形に災いを受けてもらい、流すものだったのが、今のように毎年上巳の日に飾るものになり、やがて縁起の良い3月3日に統一されたようです。

この「流し雛」が日本に伝わった当時は、貴族の女の子が人形を作って遊んでいたので、これらの風習が結びつき、現在の雛人形の基になったといわれています。

●明治になって庶民に普及し、地域の活性化に貢献した
ところで人形が飾られるようになったのは室町時代から江戸時代からだといわれていますが、庶民に普及したのは明治になってからだと思います。

豪華な雛人形は、江戸時代には庶民にはまだ手が届かなくて、雛の絵を描いた掛物で「お雛様」に見立てていたようです。

明治になり政府は欧米と広く交流し、多種多様な欧米文化が多く入ってきましたが、輸入ばかりではなく、輸出にも力を入れています。

当時の輸出品は生糸や水産物やお茶などが主流でしたが、雛人形も欧米向けに多く生産されるようになり、それが瞬く間に庶民の家庭にも普及したということでしょう。

ちなみに江戸時代の女子教育は殆どが家庭で行われていましたが、明治になって義務教育が普及し、やがて高等女学校が設立されるとともに、「良妻賢母教育」に重きがおかれるようになったわけですが、雛人形に込められた思いとマッチしたのではないでしょうか。

●「桃の節句」という名に込められた思い
五節句には、それぞれ、その季節の旬の植物や花などになぞらえて、別の名前が付けられています。
いずれもなじみの深い名前ばかりです。

例えば1月の7日の「人日の節句」は「七草の節句」、5月5日の「端午の節句」は「菖蒲の節句」、7月7日の「七夕の節句」は「笹の節句」、9月9日の「重陽の節句」は「菊の節句」という名がついています。

旬の植物にはパワーが漲っています。
昔の人はそのエネルギーにあやかって邪気を払いたいと願ったのでしょう。

上巳の節句は、旧暦では、ちょうど桃の花が咲く時期ですから「桃の節句」と呼ばれ親しまれています。

桃は仙人の食べる果物で、邪気を払う効果が高いといわれています。
さらに一つの枝に多くの花をつけるので、子宝に恵まれると重宝されています。

さらに日本で一番古い書物の古事記にも桃が登場します。
イザナギがイザナミに逢いに死者の世界である黄泉(よみ)の国に行った際、鬼に追いかけられたので、桃の実を投げて鬼退治をしたという言い伝えがあります。

●多彩な願いが込められた雛人形
雛人形は年々豪華な内容になっていますが、そこにはいろいろな物語があり、また願いが込められています。

女子の健やかな成長と幸せを願ったものですが、当時の女性の幸せとは、良縁に恵まれることだったのではないでしょうか。
結婚をテーマにした言い伝えが多いのが特徴です。

「雛」とは、雛鳥や雛型といわれるように「小さい」という意味です。
もともと日本には盆栽のように、小さくて愛らしいものを愛でる文化が根付いていたのでしょう。
日本の物づくりの素晴らしい点でもあると思います。

そして「雛人形」は皇室の結婚式を、小さな人形で表現したものといえるでしょう。

最上段の男雛と女雛は「内裏雛(だいりびな)」ですが、内裏とは皇居の庭で、そこに住んでいる方ですから、お殿様とお姫様でいいと考えます。

日本はもともと左上位ですが、明治以降に西洋の文明が入り、西洋の右上位に倣って、今は右上位が多いようですね。
国際基準も右上位です。

その下に「3人官女」が控えていますが、彼女たちは今でいう女性のエリート官僚であり、身近に二人に仕え、結婚式でも様々な役割を担います。

真ん中の女性は座っていますが眉が無く、お歯黒です。
つまり既婚者ということですが、昔は栄養状態も悪く、結婚して子供を産めば歯も抜けてしまいます。

今のような入れ歯の技術はなく、歯を黒く塗って「見て見ないように」したのでしょう。「黒子」の基になったともいわれています。

明るくて楽しい雰囲気の五人囃子は楽団ですが、上流階級の子息で占められているといわれています。
めでたい結婚式を、歌や楽器で盛り上げる役目があるわけですね。

●雛祭りの行事食に込められた子孫繁栄の願い
長年受け継がれてきた伝統行事や季節の節目に食される、いつもと異なる特別な料理を「行事食」といいますが、これには健康祈願や子孫繁栄など、いろいろな思いが込められています。

「雛のお膳」はまさに春の訪れの象徴であり、雛祭りは女子の健やかな成長と幸せの願いが込められています。

「ちらし寿司」は縁起のいい具材が沢山ちりばめられています。
それぞれの具材には独特な味があるように、星の数ほどいる男にもそれぞれ個性があります。

その中から自分に合う男を選び、幸せな結婚して、子を産み、子孫繁栄に寄与して下さいということでしょう。

「白酒」は男性の精液、「ひし餅」は女性の性器を表すという説もあるようですが、ある特定の地域の言い伝えではないかと思います。

日本には祭りだけでも年間数十万もあり、それだけ地域性も異なるということです。

ちなみに春の菓子には「3色団子」がありますが、ひし餅も一般的には3色が基本になっています。

白色は「清浄」を意味し、緑は「邪気払い」、そして桃色は「魔よけ」の意味だといわれています。
3色団子と同じように、雪が解け、緑が芽吹き、ピンクの花が咲くというプロセスを表現しているのでしょう。

そして蛤の「吸い物」に込められた、言い伝えは有名です。
蛤は同じ貝でないと、上の貝と舌の貝が合わないので、昔から夫婦和合のシンボルといわれています。

結婚したら一生その男と添い遂げ、浮気はダメよと諭した、女子の貞操教育の良い見本になったのでしょうね。

●母親自ら女子の躾に精を出した
二十四節気の2番目の節気は「雨水」ですが、この時期は雪が雨に変わる縁起がいい日とされ、この時期にひな人形を飾ると、女の子が良縁に恵まれるといわれています。

さらに雛祭りが終われば、速やかに人形を片付けないと、婚期が遅れるともいわれています。

だから母が女子と一緒に人形を飾りながら、けじめの大切さや整理整頓の仕方を教えたのでしょう。

雛祭りは「ハレの日」ですから「ハレ」と「ケ」のけじめをしっかり教えたわけです。

加えてちらし寿司やひし餅や白酒を通じ「おもてなし」の大切さにも触れたのかもしれませんね。

今のように豪華さばかり競うのではなく、親子でこのような会話があってこそ、雛祭り本来の意味や意義があると思うのですが、見習いたいものですね。
親子の絆ももちろん深まるでしょう。

●最後に
昭和20年までの日本の女子教育は「良妻賢母教育」に重きが起これ、男性は外で仕事に精を出し、女性は家庭で子育てや家事に勤しむという、性の違いによる、役割分業的志向が強かった時代です。

従って3月3日の上巳の節句には女子が雛祭りを楽しみ、5月5日の端午の節句は強くたくましい鯉のぼりや五月人形を飾る男の子の祭りというイメージが定着していたわけです。

それが現在では、ジエンダーフリーの考えにあわないという人もいるようですが、私はあくまで日本の古き良き美意識を大切にしたいと思っています。

そしてどんな時代であれ、感謝の気持ちを忘れず、子どもを大切にしたいものです。

少子化が深刻な問題となり久しいですが、現時点では特効薬はなさそうに思います。そればかりか、生涯非婚を選択する人も増加傾向にあります。

そんな中、上巳の節句には、女の子のいる家庭に多くの人が集い、女の子を祝い、できれば色々な想いを教えてあげればいいですね。

この記事を書いたプロ

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