マナーうんちく話535≪五風十雨≫
観測史上最も暑い夏になりそうな令和5年の夏・・・。
地球の温暖化のせいでしょうか、各国で異常な暑さが猛威を振るい、もはやこの異常な暑さが、今後は日常になりそうな気がします。
ここ数年、我が家でも、夏は野菜や花壇に水やりをするのが日課になりましたが、井戸の水が大活躍してくれます。
その井戸の近くに植えた朝顔が見ごろを迎え、夏の朝を美しく彩ってくれています。
朝顔や つるべ取られて もらい水(加賀千代女)
朝早く起きて井戸に水を汲みに行ったら、釣瓶の縄に朝顔の蔓が巻き付いていた。
その蔓を切ってしまえば、いつものように井戸の水を汲むことができますが、それでは朝顔がかわいそうです。
だから絡んでいる朝顔の蔓はそのままにして、わざわざ近くの家に水をもらいに行ったという意味の句です。
デジタルの世界では味わえない、アナログならではの自然や、花に対する優しさと思いやりが感じられる素晴らしい句だと思います。
ちなみに朝顔は江戸時代になって庶民に普及した鑑賞用の花で、朝顔に限らず、草木を用いた園芸が江戸時代にはブームになっていたようです。
争いのない平和な時代には様々な文化が花開きますが、江戸時代に植木鉢が登場したことも大きな要因でしょう。
さらに徳川家康を始め、花が好きな将軍が多くいたようで、全国各地の大名が参勤交代の時に、将軍に気に入ってもらえるよう、美しい花を多く献上したといわれています。
上に対する忖度だけは今も昔も変わらないようですね。
朝顔は太陽に向かって威勢よく大輪の花を咲かせる向日葵のような逞しさはありませんが、素朴ながらも風情のある花だと思います。
だから江戸時代に入り、朝顔も頻繁に品種改良がおこなわれていたとか・・・。
また8月8日は二十四節気の一つ「立秋」で暦の上では秋になります。
「秋の七草」が脚光を浴びてきますが、私が主催する講座でも、今年も秋の七草で秋の気配を味わっていただく予定です。
そして「暑中見舞い」から「残暑見舞い」になり、8月23日は暑さが峠を越すといわれる「処暑」です。
残暑見舞いはこの時期様々な形で行われます。
手紙、葉書、品物などの贈り物が一般的ですが、この時期に人を見舞うことも残暑見舞いです。
葉書や手紙で差し出すときには、異常な暑さが続いている時ですから、特に思いやりの言葉を添えて下さいね。
真心のこもった手書きの文章は、猛暑で疲弊した身も心にも潤いを与えてくれるでしょう。
だからこそデジタル機器を駆使するより、手間暇はかかっても、温かみのある手作りがいいですね。
また暑中見舞いの日付は「盛夏」ですが、残暑見舞いは「立秋」「晩夏」「葉月」になるのでご注意ください。
特別な暑さが続くときですから「盛夏」の方が適しているかもしれませんが、この場合は、実際の暑さより、暦が基準になります。
暦の上では秋ですが、実際は厳しい残暑が続く時期です。
そんな中、なかなか終わりそうもない厳しい暑さを見舞うのが「残暑見舞い」ということです。
まだ物が乏しく、通信手段にも恵まれていない時代に、寒さや暑さが厳しい時節になると、遠く離れた身内や目上への人に、体の具合を尋ねたわけです。
最近は年賀状、寒中見舞い、暑中見舞い、残暑見舞い、加えてお歳暮やお中元を否定する人が多いようですね。
勿論いろいろな考えがあっていいと思います。
グローバル化、デジタル化、核家族化、超高齢化・少子化などが急激に進展し、家族間でも、地域でも、職場でも会話や協調が薄れ、人と人との温かみのある交流がとだえがちです。
コロナがさらに拍車をかけました。
だからこそ、このようなしきたりや礼式の意味や意義を見直し、虚礼や因習として置き去りにするのではなく、良好な人間関係を築く知恵として捉えてみるのもいいのではと考えます。
8月は旧暦では紅葉が進み、葉が落ち始める「葉落ち月」です。
夏の盛りが過ぎ晩夏ということですが、たまには朝早く起きて、朝顔の花でも鑑賞しながら、スロウライフを楽しむのもいいものです。