マナーうんちく話544≪薔薇で攻めるか、それとも恋文か?≫
コロナ禍に地元の歴史民俗資料館を訪れ、旧制の高等女学校と尋常小学校で教えた礼儀作法の教科書を拝見しました。
古い上に今のように紙質が良くなく、コピーを取ることができなかったので、関心がある内容のみを半日がかりで、手書きでしたためましたが、その価値が十分ある内容です。
中学、高校、高等自立支援学校、専門学校、短大、大学でマナーに関する講話をして痛感することは、いずれも数時間で終わってしまうということです。
従っていつも言葉足らずで終わってしまうのが残念です。
勿論正規の授業として教えなければいけないことがたくさんありすぎて、マナーに十分時間が取れないことは理解できます。
ただ家庭で、マナーや社会性やコミュニケーション能力が、学業を終えるまでに十分育まれればいいのですが、それも難しい気がします。
そうでなくとも、日本の子どもは他の先進諸国に比べ、友達を作る能力はワーストクラスだといわれています。
死因の原因に自殺が上位に来ること自体も異常でしょう。
だから学校を卒業して社会人になった時に困るわけです。
「753現象」のように、いろいろな現象が起きているのもその影響が大きいと思います。
引きこもりも減少傾向にはないようですね。
戦前の義務教育や、その後の高等女学校で教えたマナーは、非常に内容が豊かで、令和の今、参考にしたいことが多々あります。
箸使いなどはまさにそうでしょう。
尋常小学校(昭和16年から国民学校)3年生から、すでに国語や算数と同じように教科として非常にレベルの高い作法を教えています。
つまり戦前は、10歳頃からすでに礼儀作法になじんでいたことになります。
例えば小学5年生で「襖の開け・閉て」の作法が教えられています。
当時殆どの家では襖や障子のある生活ですから、別に不思議な事ではありませんが、それにしてもこれを習得するにはそれなりの練習が必要です。
私も和室で和食のマナー講座をするときや、和の礼儀作法講座では演習しますが、一度限りの講座で習得される人は珍しいです。
さらに「ドアの開閉」のマナーまで説かれており、ドアのある部屋に入るときには、右手を軽く握って、ドアを2回から3回たたくよう教えています。
「訪問の仕方・され方」に関する作法も高度ですが、現在にそのまま通じます。
「贈答」のマナーしかりで、その目的から、贈答の仕方まで慶事、弔事に分けて説明しています。
さらに6年生になると、礼儀作法や日常生活への心得が説かれ「服装」「物の授受」「お辞儀の仕方」等に詳しく触れています。
特に「立礼」の仕方は、凛として非常に美しい作法です。
また「座礼」に関しては、改まった席での丁寧なお辞儀が説かれており、ここにもレベルの高さを感じました。
江戸時代の武士の振る舞いの様で素晴らしいと感じました。
「和食・洋食」のテーブルマナーにもびっくりです。
今はお目にかかることはありませんが、本膳料理の作法まで教えていたようです。
中でも特に驚いたのは、懐紙を用いる作法です。
小学生が・・・。
近い内に旧制高等女学校で教えたマナーに触れてみます。