マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
暦の上では夏が産声を上げていますが、「野にも山にも若葉が茂る」とうたわれているように、野山に瑞々しい新緑が輝き、夏の気配がほのかに感じる頃でもあります。
ところで日本の四季の豊かさは世界的にも非常に有名ですが、日本にはその季節をより印象付ける多くの物、事柄、景色、生き物、売り物、味覚、そして文化が存在します。
地域限定のものもあれば全国的なものもあります。
その季節の感じを非常によく表している、あるいは季節の到来や節目を表すもので「風物詩」と呼ばれています。
さらに、四季のほかにも「二十四節気」や「七十二候」もあります。
二十四節気を補うために作られた「雑節」もあります。
全ての生き物が長い時間かけてゆっくり変わるように、季節も急変するのではなく、ゆっくり変わるわけですね。
今回は雑節の一つで、季節と季節を繋ぐ「土用」にふれてみます。
四季の始まりには「立春」「立夏」「立秋」「立冬」がありますが、それぞれの橋渡しになる18日間が「土用」です。
そしてそれぞれの土用の最初の日は「土用入り」で、最後の日は「土用開け」、つまり「節分」です。
先人は「土用」をあえて用意することで、季節の準備をしたわけです。
さらに土用には土いじりなど、してはいけないこともありますが、お勧めの食べ物もあります。
ただ今の時代には土用のウナギを除いては、ピンとこないでしょう。
土用は季節の節目ですから、体調管理の重要性を説いたと思います。
例えば「春土用」は4月下旬から5月上旬ですが、春の土用は情緒不安定になりやすい頃だといわれています。
「夏土用」は7月下旬から8月上旬で夏バテに注意が必要です。夏バテ防止にウナギのように「う」のつく食べ物はすっかり定着していますね。
「秋土用」は10月下旬から11月上旬で夏の疲れが出やすい頃で、「冬土用」は1月下旬から2月上旬で、風邪に注意する時期です。
日本人は自然や季節の変化をとても繊細な感性で感じ、自然と仲良く暮らしてきました。
数えきれないくらいの風物詩にも、その気持ちがありありと表現されているように思います。
さらにその気持ちを「しきたり」として後世に伝えることも忘れませんでしたね。
素晴らしいことだと思います。
現在は何もかもあわただしくなりました、
デジタル全盛で自然の繊細な感性は次第に薄れていく気がしてなりません。
コロナに遭遇して以来オンライン化も急激に進みました。
このことを否定するつもりはありませんが、たまには自然の移ろいに触れるのもお勧めです。
それに加え周囲への感謝もおわすれなく。
加えて、ご先祖に思いをはせてみるのもいいでしょう。
大切なことはこのような環境下だからこそ、優しく素直な感性及び、自然や先祖への感謝を蘇らせるということです。
そうすることで、本当の意味でのsdgsが達成できるということでしょう。