マナーうんちく話239≪バラ色の人生とマナー≫
「春は嵐とともにやってくる」とか「春に3日の晴れなし」とか言われるように、春の天気は不安定ですが、「花冷え」や「寒の戻り」という言葉もあります。
寒暖差が激しいわけですが、こんなときには適度な運動、睡眠、食生活を工夫し体調管理に努めたいものです。
加えて精神の安定にも心がけたいものですね。
日頃から、心を鍛えておくことが大事ということです。
なにもかも恵まれすぎた今、ストレスに耐性ができてない人が増えているように思いますが、平常時は良いとしても、コロナ禍のように非常時に陥った時は大変な目にあいます。
以前《マナーうんちく話》でも取り上げた千利休の「利休七則」があります。
もてなしをする側と、される側がともに快適な時間を過ごすための心得ですが、この中には心を鍛えるヒントが凝縮されているように思います。
もてなしをするときにはまず心を込めること、さらに創意工夫を凝らし相手を思いやることだと考えますが、2年余りに及ぶ新型コロナで疲弊した今こそ、思い浮かべたい言葉です。
このところ夏日になったり、寒くなったりで異常な天気が続いています。
たとえばビジネスシーンでこのような時にどのように振舞うか?
時にはマナーの基本を無視することもありだと思うわけです。
ビジネスマナーでは来客に対して、最初に温かい日本茶を出して、その後コーヒーか紅茶を出すのが良いとされていますが、春でも夏日になった時などには、来客に「冷たい飲み物」がいいか「温かい飲み物」がいいか尋ねるのもありだと思います。
夏日の時などには「おしぼり」などもうれしいです。
部屋に冷房が効いていれば、そのことも考慮する必要があるでしょう。
何度も来られる客には、あらかじめ好みを把握しておくこともお勧めです。
また打ち合わせに重苦しい空気が漂いそうなら、応接室に生花を活けておけば互いに心が和みます。
常に相手の状況を把握する訓練も必要でしょう。
マナーは自分をよくするために存在するのではなく、相手を心地よくさせるためのものだということです。
したがって相手の状況に応じた臨機応変な態度はとても大切です。
以前《マナーうんちく話》でも触れた「三献茶」や「ビクトリア女王のフィンガーボール事件」などは有名ですが、このような事例はよくあるケースです。
利休七則の中に「相客に心せよ」があります。
同じ場所なら、互いに気遣い思いやる心を持つことが大事と説いています。
もてなす側は素直な気持ちでさりげなくもてなすことが大切ですが、もてなしを受ける側も、もてなす側になって時間など気に掛けることが大切です。手土産も喜ばれるでしょう。
汗を拭きながら入ってきた客人には、温かい飲み物より冷たい飲み物のほうが嬉しいかもしれません。
冷たい飲み物を飲んで体と心が落ち着いたら、次にある程度濃い温かい飲み物がいいかも。
ちなみに来客に飲み物を出す場合は「温かい日本茶」と「コーヒー」があればまず大丈夫だと思いますが、来客の好みを訪ねてあげればなおいいでしょう。
その際「温かい日本茶とコーヒー、それに冷たい麦茶をご用意いたしておりますが、どちらがよろしいですか?」などと選択できるようにしてあげて下さい。
これらは茶道ばかりでなく、現代版のもてなしにも生きている心構えです。
さらに私の好きな「花は野に咲くように」があります。
「花を活ける時には野で自然に咲いているように活けなさい」という教えですが、花の美しさを最も強調する心構えでしょうか。
生き生きとしている花はとても素敵ですが、人も同じです。
相手が生き生きと輝くように最大限に引き出してあげるのがもてなしであり、マナーの存在意義だと思います。
ただ、今は新型コロナを常に意識しなければいけません。
相手に好感を与えることも大切ですが、コロナ禍では安心・安全が優先されるでしょう。
マナーの常識が通じないことが多々あるということです。
幸いにも日本ではマスク、手首の消毒、換気、距離を置くなどの対策は殆どの人が実践しています。
殆どの人がモラルを有している、つまり善悪の判断基準をわきまえているということでしょう。
今まさに百花繚乱の最も美しい時節ですが、花の命は儚いもので、空気が澄んで、緑のそよ風が吹く快適な季節も長くはありません。
今を精一杯輝いて、一日一日を大切に、そして楽しく過ごしてください。
最後に平常時は誰でも比較的素敵なマナーを発揮しやすいものです。
しかしコロナ禍のように非常時の時には、その人の人柄が出やすいものです。
相手を思いやる気持ちで、誠実に、柔軟に対応したいものです。