まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
師走に入り、次第にあわただしく感じるのは、新年を清々しい気分で迎えたいからでしょう。
旧暦の正月は早春ですから、新年を迎えるということは、すなわち春を迎えるということで喜びが重なっていたようですね。
それだけに、「新年おめでとうございます」という挨拶には大変心がこもっていたと思います。
12月7日は二十四節気の一つ「大雪」です。
文字通り本格的に雪が降るという意味です。
この時期に相応しい「初雪見参(はつゆきげんざん)」という言葉があります。
大変勇ましい言葉ですが、現在では口にしたり、耳にすることはありませんね。
もとは平安初期に、初雪が降った時には御所に出向いて天皇に拝謁する習わしがあり、それが儀式化して誕生した言葉だといわれています。
ところで寒い時期には温かい飲み物が重宝されますが「一夜酒」という言葉をご存じでしょうか?
「甘酒」のことです。
江戸時代には「甘酒」と呼ばれていましたが、富士山にちなんで「白雪」という名前も付けられていました。
寒い時の温かい飲み物はうれしいものですが、暑い時にも、寒い時にも大変ありがたい飲み物が甘酒ではないでしょうか。
栄養豊富な「飲む点滴」としてすっかり有名になった甘酒ですが、米を原料とした酵素を多く含む飲み物で、日本書紀に登場するくらい長い歴史を有します。
酒という漢字が含まれていますが、米と米麹から作る甘酒にはアルコールは殆ど含まれません。
ただし酒かすから作る甘酒は、アルコールが非常に弱い人にとっては、注意が必要かもしれません。
日本酒に比べれば大変短時間で出来上がるので「一夜酒」とも呼ばれたわけですが、10時間もあれば簡単にできます。
私も四季を通じて作りますが、我が家ではコメともち米をミックスして作ります。
炊飯器で米を炊くのに約1時間。
炊きあがった米を程よい温度にさますのに30分、そしてその中に市販の米麹を入れ、ドロドロになるまで搗きますが、これに要する時間は約30分。
そして炊飯器で7時間蒸して出来上がり。所要時間約9時間で完成です。
殆ど失敗することなく、砂糖より甘い甘酒ができますのでご近所におすそ分けします。添加物のない手作り製品は毎回喜ばれます。
ちなみに山之上憶良の貧窮問答歌には、寒い冬に甘酒を飲んだという記事があり、当時甘酒は冬の季語だったようです。
それが江戸時代には特に夏の飲み物として人気があったようで、夏になると江戸の町に甘酒の行商人がやってきて1杯100円前後で売られていたとか。
そして甘酒の季語は冬から夏になったいきさつがありますが、本当はどちらでしょうか。
堅苦しいことは抜きにして、早い話、誰でも簡単に作れて、しかも四季を通じて飲むことができるので、「晴れの日」の飲み物としても継承されてきたわけです。
今でもイベントで供されることが多いのはその名残でしょう。
特に最近は何かと米麹が見直され、健康志向の人にうけているようです。
ユネスコの無形文化遺産に和食が登録されたことも功を奏したと思います。
起源が明確にできないくらい古くから飲まれていた甘酒。
日本の文化に深くかかわってきた歴史ある飲み物は大切に受け継ぎたいものです。
雪の降る夜は楽しいペチカもいいけど、炬燵で暖かい甘酒を楽しむのもお勧めです。
その際、以上のような「うんちく」を話してあげて下さい。