マナーうんちく話622≪世界平和記念日と日本の礼儀作法≫
江戸時代の武士は、勤務先での城内においては、結構堅苦しい作法が要求されていたようです。
例えば衣装や言葉遣い、そして立ち居振る舞いなどなど・・・。
だから作法は生活必需品として、また教養として、幼いころから教育を受けていたようですが、庶民の間でも礼儀作法は重要視されていました。
当時人口の約9割を占める江戸庶民の「江戸しぐさ」もそうでしょう。
ただ武士の場合は、自分磨きや自己防衛の目的で飾り立て、それがある種の美意識を生んでいたのだと思います。
一方権力も財産も持たない庶民は、互いに助け合い、思いやり、そして他人に迷惑をかけないようにしなければなりません。
だから自己抑制が働いたわけです。
西洋のように自己主張が強く、自分の才能や業績を誇らず、むしろ一歩下がって相手をたてることに重きをおいたのでしょう。
いわば自己犠牲的精神ともいえるのではないでしょうか・・・。
つまり互いが譲り合う気持ちが動作となって現れ、ひいては控えめで清楚で穏やかな女性像を作り上げたのだと思います。
日本人女性特有の精神文化は、どうやらこのへんに原点がありそうな気がしますが、いかがでしょうか・・・。
明治維新に日本を訪れた欧米の高官は、日本人女性は貧しいながら、清楚で、知的で、思いやりがあり、しかも凛としていると、大いに称賛したのが頷けますね。
そしてそれに魅せられて、日本人女性を伴侶にした人もいます。
《マナーうんちく話》でも過去に触れましたが、鎖国時代に日本に来たドイツの医師シーボルトや、怪談で有名なラフカディオハーン(小泉八雲)は有名です。
でもこのように魅力的な女性像は自然にできるものではありません。
それなりの努力が必要でしょう。
時代を問わずマナーに関する関心はあるもので、物が豊かになり、文化が栄えると、それにつれ心の豊かさを求めるようになるものですね。
特に江戸時代になって、世の中が泰平になると、「衣食足りて礼節を知る」言われるように、マナーに関する書物も多く出版されてきます。
中でも一般女性の、日常生活からファッション、化粧、言葉遣い、挙式のマナー、着物の装い方、食事の作法など、大変豊富な内容の「女重宝記」が有名です。
随所にイラストが描かれ大変親しみやすいのですが、なにぶんにも封建時代の作ですから、今のようには参りません。
内容は男尊女卑の思想であふれています。
当時の一般概念として「男性はこうであるべき」「女性はこうでなければならない」というように、型にはめられていたようですね。