マナーうんちく話509≪「女しぐさ」と「男しぐさ」≫
今、世界中で《SDGs》が大きな話題になっていますね。
日本でも新聞やテレビですっかりおなじみになりましたが、具体的にどういう意味か?あるいはどのような活動なのか?
キチンと理解していない人も多いのではないでしょうか?
まず難易な横文字という点が、より分かりづらくしている原因だと思います。
ちなみにSDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。
持続不可能な世界から、持続可能な世界へ帰るために、達成しなければいけない目標を、経済・社会・環境の3つの側面から、世界共通の目標を17掲げています。
簡単に言えば、途上国も先進国も、全ての国の人が「よりよい社会を実現するための目標」だといえるでしょう。
だから環境や貧困や飢餓から経済成長やジェンダーに至るまで、とても広範囲な課題が掲げられているのだと思います。
豊かさを追求しながら環境を守るということは大変難しいと思いますが、真剣に取り組むだけの意義は大いにあると考えます。
ちなみに私の小さい頃は、夏になるとトマトやキュウリやスイカは井戸水で冷やし、風鈴や団扇で涼をとり、蚊帳をつって寝ていました。
また買い物はひもや竹で編んだ買い物籠です。
勿論パックに入った豆腐もなければ刺身もありません。
外食という概念はなく、いつも家族一緒の食事で、食べ残しは殆どなかったと思います。
当時の生活は環境にとても良かったということです。
また貧しいながら家族のだんらんもあり、地域のつながりも豊かでした。
今のような陰湿ないじめもなかったような気がします。
物質的には豊かではありませんでしたが、夢や希望の持てる住みやすい社会だったわけですね。
それが経済発展とともに多くの矛盾が生じ、多くの国で大きな格差が生じていることも事実です。
戦争に明け暮れている国もあれば、日本のように平和な国もあります。
経済的に豊かな国もあれば、飢餓に直面している国も多々あります。
それどころか気温の上昇により甚大な被害を被っている国もあります。
生態系が大きく崩れている国も珍しくありません。
環境破壊は気候変動の原因になり、それがもとで今まで経験したことのない大災害が頻繁に世界各地で発生しています。
さらにエネルギー資源も枯渇しているようです。
これではいけない、ということで、今は日本の学校でも、子どもたちにSDGsについての教育が行われているようですが、私たち大人がまず率先して、できることから実行していくことが大切ではないでしょうか。
こまめに電気を消す、食べ残しを極力しない、レジ袋を見直すなどいろいろな取り組みが実行されていますが、それとは別の視点での「和の礼儀作法」が大変効果があると考えています。
なぜなら和の礼儀作法は、自然と共生し、平和な社会を築いた日本人が、思いやりや感謝の気持ちを根源に作ったからです。
日本人は古来より、自分のことは後回しにして、他者を尊重する思いやりを大切にする感性を有していたわけですね。
しかもそれらは自然に対しても、人に対しても発揮されます。
今の人はSDGsのために「自然に優しくしよう」といっていますが、先人はとても謙虚です。
上から目線ではなく、自然に優しく接していただいていると考え、自然に対して畏敬の念を抱いていました。
自然に畏敬の念を抱き、他者に対して思いやりを発揮するということは、地球環境保護や地球から争いをなくすことにも貢献できるということです。
まさに「よりよい社会の実現」に寄与するということですね。
また和食の作法は「箸に始まり箸に終わる」といわれますが、美しい箸使いを徹底するだけで、食べ残しは圧倒的に少なくなるし、感謝の気持ちも大幅に芽生えてきます。
そのほか我慢する心も育むし、姿勢もよくなるし、咀嚼回数も大幅に増え健康にもいいわけです。飛躍的かもしれませんが、地球上の飢餓を共有する心が目覚めるかもしれません。
つまり「美しい食べ方」には、それだけ大きな力があるということです。
ただ和の礼儀作法にせよ、和食のマナーにせよ、実際に子の良き手本になれる大人が少ないのも事実でしょう。
SDGsに対して大きな目標を掲げるのもいいかもしれませんが、目の前に存在する日本の素晴らしい文化にも目を向けたいものですね。
ところで1980年代に「持続可能性」という概念が登場したようですが、純粋に取り組む人ももちろん多くいますが、ビジネスに利用されているケースも多いように感じます。
私は今こそ、美しい食べ方も含めて、戦前の高等女学校の「作法」の時間で教えていたような、基本的な礼儀作法を普及させることが大事だと思っています。
なぜなら思いやりの気持ちや物を大切にする教えが凝縮されているからです。
精神的なものですから数値目標は決められないかもしれませんが、間接的にも直接的にも大きな効果が期待できるはずです。
なお後日、戦前の高等女学校で教えていた「作法」について具体的に触れてみたいと思っています。是非お付き合いください。