マナーうんちく話2040《どう思う?タイタニック号とセウォル号と東京五輪》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:マナーの心得

「風薫る季節」といえば、すっかり初夏の常とう句になりましたが、近所の広々とした田んぼの一か所で、たわわに実った麦の穂が黄金色に色づき揺れています。

「実りの季節」を言えば一般的には秋ですが、麦にとっては初夏になるわけですね。

ちなみに二十四節気をさらに3等分して、気候、植物、動物の変化を表した七十二候では、5月の終わりから6月の初めは「麦秋至」ですが、俳句の世界では「麦秋」は初夏の季語です。

そして初夏を告げる魚といえば「初鰹」を思い浮かべますが、見栄っ張りの江戸っ子の川柳に「初鰹 力んで喰って 蚊にくわれ」があります。

大阪は旬のものを、江戸は初物を好むといわれますが、中でも見栄っ張りの江戸っ子にとって初鰹は格別です。

少し待てば値段も落ち着き、誰でも手がでますが、初物となると大変高価です。
宝井其角の「まな板に 小判一枚 初鰹」の句がそれを物語っています。

初鰹を誰より早く食べれば余計に見栄を張ることができるので、蚊帳を質に入れて金を工面して手に入れるわけですが、夏になって蚊が活躍するようになって、大きな付けが回ってきます。

後のことまでよく考えて行動しなければいけませんね・・・。

5月初旬から中旬にかけて、テレビで「タイタニック号」を視聴しました。

20世紀最大の海難事故を、史実に基づき製作された映画史上不朽の名作といわれるだけあって、見どころが多くありましたが、20年以上前に見た時より歳を重ねてきた分、新たな気づきがあったと思います。

非常時に陥った時、人は立場に相応しい行動がどれくらいとれるか?
コロナ禍に相応しい映画だったと思います。

不沈船といわれた豪華客船タイタニック号が氷山と衝突、約2時間30分後には沈没するとわかった時の、死に対する様々な人の恐怖心及び責任感等がリアルに描かれていましたね。

なかでも、避難しなければいけないので「幸運を祈る」といって、いったん解散した楽団がまた一緒になって、避難しようとする乗客が、不安を払しょくし落ち着いて批難できるよう、沈没ぎりぎりまで演奏をし続けた楽団の姿は印象的でした。

まだ20歳くらいの若い男性もいましたが、プロの音楽家としての誇りをもって、命がけで最後まで演奏続けた姿は実に素晴らしかったです。

また設計を担当した設計士や船長も責任を感じて、最後まで船から降りなかったのも教えられる点が多々ありました。

さらに停電したらパニックになるので、最後まで電気が維持できるように船室に居続けた乗組員もしかりです。

加えて命がけで避難用ボートが無事海に降りられるよう、沈没直前まで采配を振るった乗組員や、自分の避難用ボートの席を婦女子のために譲り、誇り高きジェントルマンとして正装のまま船に残った男性などなどは今でも頭の中に残っています。
ここまで誇り高い人が存在したとは、さすが紳士淑女の国ですね。

そういえば、10年前の東日本大震災の時、大きな津波に見舞われた際、命を懸けて陣頭指揮をしたり、避難誘導したり、救助に当たった人が多くいましたが、頭が下がります。コロナ禍の今、使命感だけで日夜治療や介護にあたっている医療や介護従事者の方々などもそうですね。

一方、金にモノを言わせ、避難ボートの席を奪い合う金持ちの醜いシーンもありましたが、日本でも地位を利用して新型コロナワクチンを優先摂取した人もいました。

またタイタニック号の一等船客は、優先的に避難誘導されていたようですが、コロナワクチンも五輪関係者は優先摂取されるとか・・・。
とても違和感を覚えます。
資本主義とはこのようなものでしょうかね。

ちなみにタイタニック号の乗組員とは対照的ですが、2017年に発生したセウォル号の悲劇もまだ記憶に新しいのではないでしょうか。

船長や乗組員が適切に避難誘導していれば、あれほどの犠牲が伴わずに済んだといわれていますが、大変痛ましい事故でした。

よりによって乗客の高校生より、船長や一等航海士の方が早く救助されたという報道には、大変驚いた人も多かったと思います。
プロとしての自覚と責任もって仕事をしていただきたいものです。

プロといえば、先月16日ぶりに、横浜のアパートから逃走したニシキヘビの居場所を突き止め、素手で捕獲した動物園の園長は実に素晴らしかったです。

日本爬虫類・両生類協会理事長の肩書のある人だそうですが、2週間以上多くの人が懸命に捜索したが、見つからなかった蛇を、たった一人・二人のプロが、長年の経験や勘で居場所を突き止め、しかも素手で捕獲したわけですから・・・。

また飼い主も確かに大きなミスを犯したわけですが、逃げ隠れすることなく、マスコミの前にも姿をさらし謝罪し、会社を休み、最後まで捜索に加わった態度は立派だったと思います。


大きな事故にはそれなりの原因がつきものです。
タイタニック号は氷山との危険性が指摘されていました。
さらに景観をそこねるという理由で、船のオーナーは救命ボートの数を規定より少なくしました。

セウォル号においては、過積載を始め、ありえないルール違反が数多く指摘されました。初動救助にも大きな問題があったようです。

今日本では、五輪が多くの反対派の気持ちを無視して強行されようとしています。

医療体制はまだまだ厳しく、上級国民でない一般の人は、新型コロナに感染したり、重篤な病気になっても、すぐには診てもらえないひともいるようです。
自宅でまともな治療も受けられなくて、亡くなる人が後を絶ちませんでしたね。

このような状況下での五輪開催意義はどこにあるのでしょうか?

しかも国内には賛成派もいれば反対派もいるわけですから、非常時において国民が分断される可能性もあります。これはよろしくありませんね。

今こそ、その道のプロの人に忖度抜きで、英断を下していただきたいと思うのですが・・・。

そして、開催される以上は盛り上がって無事に終えて欲しいのはやまやまですが、もしこんな状況下で強引に開催して、大変なリバンドが起きたらどうなるのでしょうか?

蚊に刺されたくらいでは済みません。
大きなツケが回ってくるでしょう。

その際、誰がどのように責任を取るのでしょうか?

礼節の国の担当者としてタイタニックの乗組員のようにふるまえるのでしょうか?
それは無理としても、責任のなすり合いだけはやめて頂きたいですね。

今回のオリンピックが歴史的快挙になるのか、愚策になるかはわかりませんが、私は多くの人が苦しんでいる中、オリンピックが強行され、多くの金メダルを取ってもあまり感動しないと思います。

それよりコロナ禍の苦境下で、使命感に燃え、無名ながら、一生懸命頑張っている人の姿に感動します。また敬意を表したいです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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