マナーうんちく話521≪お心肥し≫
10月は旧暦では「神無月」と表現されますが、漢字が示すように、全国の神様がすべて出雲に出張されて不在になる月です。
ちなみに出雲地方では、神様が集うので「神在月(かみありつき)」と呼ばれます。
ゴーツートラベルが推進されていますが、神様にとっては、出張ですから単なる旅行ではありません。仕事で出雲に行かれるわけです。
では、どんな仕事をなさるのでしょうか?
農業に関する議論もされますが、主として「縁結び」に関する会議です。
勿論結婚に関する話題にも触れられますが、いろいろな縁についての内容です。
日本の国が明るくなって、みんなが幸せになれるために、互いに結ばれるような話をされます。コロナ禍においては大変ありがたいことだとおもいます。
新型コロナを機に今後デジタル化が加速しそうですが、目先の課題を大切にすると同時に、人と人との縁も大事にしたいものですね。
また10月は「衣替え」ですが、これは平安貴族から続いている風習です。
そして江戸時時代の武士は、旧暦4月1日、5月5日、9月1日、9月9日の年4回の衣替えがあったようです。
衣服の手入れも大変だったと思いますが、当時の武士はこうして「けじめ」や「和」や「協調性」を保ったのでしょう。やがてこの風習が庶民にも普及し、四季の国日本ならではの文化として根付いたわけです。
10月は朝晩めっきり冷え込みますが、稲の収穫がピークを迎えます。
お月見をしたり、美しい虫の音を聞きながら、秋の気配を身体全体で感じ、いろいろな縁を取り込むのもお勧めです。
秋の夜長、良書に触れるのもいいですね。
心と季節感、そして時間の感覚は大いに関連があります。
自然の変化にも目を向け、極力季節と同化する努力も大切にして下さい。
ところで東京オリンピックの招致委員会で、すっかり有名になった日本の「おもてなし」ですが、最近いたるところで、耳にする機会が多くなった気がします。
チップを伴う欧米諸国の「サービス」と似た感覚がありますが、私はサービスと日本の「おもてなし」は大きく異なると思っています。
それは神様をお迎えする神事の中でも明確です。
例えば神々が集結された出雲では、神様をお迎えするための多くの神事が執り行われます。また正月には日本全体で、幸運をもたらす年神様をお迎えし、おもてなしして、お見送りをします。
これらは日本人ならではの発想で、この精神文化は祭りや行事やしきたりとして、風雪に耐え、脈々と伝えられてきたわけですね。
神様はだれも見たことはありません。
目に見えない神様を誠心誠意もてなす心は日本独特でしょう。
日本においての「おもてなし」は、見返りを求めず、裏表なく、純真な心でしなくてはいけないということです。
だからビジネスでも、おもてなしという言葉を使う以上は、ハード面もソフト面にも、心をこめることが大事です。「お迎えするお客様が快適になるよう、最大限の努力をして、心を尽くす」ということです。
旧暦6月は「水無月」と呼ばれます。
これは水が無い月ではなく、「水の月」という意味で、田植えをするために田んぼに水を引く月です。
これと同じで「神無月」は「神の月」ともいわれます。
日本は「瑞穂の国」と呼ばれますが、悠久の時にわたり、瑞々しい稲穂が実る国という意味で、日本国の美称です。「新米」が楽しみの頃ですが、何かと神様と縁が深い月でもあります。
感謝の気持ちを込めて頂きたいものですね・・・。