マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
度重なる自然災害に加え、この度の新型コロナウイルスで、自然の猛威を改めて思い起こした人も多いのではないでしょうか。
しかし生きていくために不可欠な、水や空気を与えてくれるのも自然です。
今回のウイルス騒動で、私たちは自然に畏敬の念を抱き、自然に寄り添い、仲良く自然と共生していた先人の生き方を、見直す時期が来たかもしれませんね。
「自然に優しく」などと言って、自然を上から目線で、しかも人間の都合のいいように捉えていれば、自然災害やウイルスの脅威を避けられないと思うのですが・・・。
ではどのように自然と仲良く生きるすべを探るのか?
時代の流れに逆らうかもしれませんが、私は旧暦に記載されている豊かな言葉に、その知恵やヒントが多く盛り込まれている気がします。
昔の人は梅が咲いて鶯が鳴いたら春が来たと悟り、紫陽花が咲いてホトトギスが鳴くようになれば田植えを行い、木々の紅葉が始まれば急いで冬支度をする・・・。
このように自然の様子を観察しながら季節を感じていたのでしょうね。
季節の節目には、そんな先人の暮らしに思いを巡らすのもお勧めですが、6月21日は、一年で一番昼が長く夜が短い「夏至」です。
暦の上ではちょうど夏の真ん中で、「立夏」と「立秋」の中間になります。
またこれから真夏に向かうわけですが、くれぐれもご自愛ください。
ところで暦の言葉ですが「二至二分(にしにぶん)」をご存じでしょうか?
「二至」とは昼が最も短く夜が長い「冬至」と、昼が最も長く夜が短い「夏至」です。
さらに昼と夜の長さが同じの「春分」と「秋分」が「二分」です。
つまり二十四節気のうち「冬至」「夏至」「春分」「秋分」を合わせて「二至二分」と表現するわけです。
さらに「立」が付く言葉が日本の四季にはそれぞれあり、これが良く知られている「立春」「立夏」「立秋」「立冬」で、合わせて「四立」と呼びます。
従って「二至二分」と「四立」を足したら「二至二分四立」になり、この八つの言葉を併せて「八節」と呼び、これが日本の暦の重要な季節の節目になる日です。
加えて日本の四季は急に冬から春、春から夏に移行するのではなく、それぞれ準備期間があります。いわゆる4つの「立」の前日から18日前の「土用」で、この基本を理解すれば、旧暦がとても身近に感じ心が豊かになるでしょう。
ちなみに私はセミナーや講演で旧暦の話をする際は、丸い時計に例えます。
たとえば丸い時計の真上は12時ですがここは「夏至」、そして1時30分は「立夏」、3時は「春分」、4時30分は「立春」、6時は「冬至」、7時30分は「立冬」、9時は「秋分」、10時30分は「立秋」ですね。
これは時計の逆回りに進み、一年の初めは「立春」です。
また《マナーうんちく話》ではたびたび「二十四節気」の話が登場しますが、「二至二分」を基準にして一年を24等分にしたものです。
それぞれに季節を表した素敵な名前が付けられていますが、日常生活や農業にとっては、これで完璧というわけには参りません。
そこで先人はその二十四節気をさらに3等分したわけで、これが「七十二候」です。「気候」という言葉がありますが、二十四節気の「気」と「七十二候」の「候」を併せた呼び名です。
明治の初め、当時の政府は先進国に仲間入りするため、欧米諸国の生活様式に合わせようとして、旧暦から現在の新暦に変えましたが、百年以上経過した今でも月と太陽の動きをもとにした旧暦の言葉は、私たちの生活に根付いています。
単なる数字より、豊かな言葉が季節感を、よりかもしだしてくれることと、心地よい生活が送れるからだと思います。
そして旧暦をさらに詳しく触れていくと、日本の入学式は桜の咲く頃がいいと思えるようになるのではと感じています。こんな素晴らしい日本独特の文化を、なぜ欧米スタイルに合わす必要があるのかというのが私の持論です。