マナーうんちく話717《家庭や地域で支えたい子どもの門出》
情報機器の発達や働く親が増えたこと、さらに教育改革、働き方改革等で子どもを取り巻く環境は大きく変化しています。
加えて価値観が混乱し、流動化しています。
そして新型コロナウイルス騒動。
休校及び図書館などの休館、外出の自粛などで閉塞感が広がっているようです。
何かと大変でしょうが、一方的に悪く捉えず、こんな時だからこそ子どもがこれから社会に出て、良好な人間関係を作る基礎を作って欲しいものです。
家庭のしつけの一環として、親が子どもにマナーを教えてはいかがでしょうか・・・。
多様性を認めるとか、価値観が多様化したからと言って「他人に迷惑を掛けなければ何をしてもいい」という規範に依存するだけでは、将来孤立や対立を招きかねないと思います。
そして素敵なマナーを発揮するには、その礎となる親を始め、市民意識の向上が何より大切だと痛感します。
非常時に伴い、子どもの自由時間が増えている今、改めて大人がマナーの大切さを認識し、できる範囲内で、家庭で子どもに、とびっきりのマナーを教える意義は大きいでしょう。
子どもにとって心身ともに負担がかかる今こそ、AIロボットでは認識が難しい、人としての感謝の心や思いやりの心に触れ、人生100歳時代を豊かに生きる知恵を身に付け、視野を広げることは未来にとって大切なことだと考えます。
【「しつけ」は理解させるより守らせること】
着物を仕立てる時に裾や袖口などに縫い上りが狂わないように「仕付け糸」を付けて縫うわけですが、この仕付け糸は「躾」から転じた言葉です。
円滑に社会生活を送るために、一定の規範を基にしたマナーや道義の行動上の形式が「しつけ」ですが、「なぜそうなるの」という理屈よりも、まずは「かたち」からというのが躾だと認識いただいたらいいと思います。
理屈から言えば腑に落ちないかもしれませんが、会社には「社則」があり、学校には「校則」があります。
これらは社会生活を送るための規範的なものですから、理屈を説いて理解させるというより、「守らせる」ことが先決問題です。
ところで躾に関する「バカの3杯汁」という言葉がありますが、この意味をご存知でしょうか?汁物のお変わりは2杯でとどめるもので、汁のお変わりは3回するものではないという教えです。
では「バカの3寸ノロマの1寸」はいかがでしょうか?
襖や障子の開け閉てを教えた言葉ですが、現在のライフスタイルから言えばドアや開き戸の締め方でしょうか。
私が主催する「和の礼儀作法講座」「和食のマナー講座」などで、和室で開催するときには、襖や障子の開け閉ての演習も交えますが、最近ではこれができる人はほとんどいません。
しかしこの作法は相手に対する思いやりの心が凝縮されたとても美しい振る舞いであり、正しく理解すれば、人格形成にとても役に立ちます。
これらはわずか数十年前には日本の家庭で現実に行われていた躾ですが、昔の人の躾は本当に立派だったと思います。
便利さや豊かさに慣れた現代の人が見習う値打ちは充分あると思うのですが・・・。
快適な社会生活になればなるほど、守らなければいけないルールはあるということを、大人も子どもも自覚しなければいけないということです。