マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
12月31日は大晦日ですが、新鮮な気持ちで新しい年を迎えたい気持ちは誰しも同じでしょう。
ちなみに「晦日」とは毎月最後の日の事で、一年の最後になる12月は特に「大」を付けてその年の区切りにしたようです。
このコラムでも何度か触れましたが、何年か前にあるお寺に講演にいった際、そこのご住職から「多くの人は新年に初日の出を拝むが、大晦日に、沈む太陽に手を合わせる人は少ない」という話を聞きました。
マナー講師としてまさに目からうろこで、自分自身のふがいなさを痛感した次第です。
日本では昔から「何事も始めが肝心」とか「終わり良ければ総てよし」といわれるように、最初と最後をとても大切にしてきました。
中でも「終わり」は大切です。
例えば日本が世界に誇る「もてなし」の文化でも、「お迎え3分にお見送り7分」といわれます。
一般の挨拶でも出会いの挨拶より、この人とは再度会いたいと思われるような「別れ時の挨拶」を大切にします。
また江戸しぐさにも、名残惜しい気持ちになってもらう「後引きしぐさ」があります。
年始に有名神社・仏閣に初詣に行くのもいいでしょうが、大晦日に近所の氏神様にお礼参りするのもお勧めです。
この一年、なにはともあれ無事に過ごせたお礼を申し上げ、清々しい気持ちで令和元年を見送るのもいいものです。
今年は年号も新たになり多くの期待を込めた人も多いことでしょう。
期待通りに進んだ人もいれば、期待に裏切られた思いの人もいると思います。
また元号が変わっても、例年と同様、政治、経済、スポーツ、教育等の世界で、うんざりするような不祥事が続きました。
そして来年はいよいよオリンピックが開催されますが、こんな時こそ日本人としての人柄や心を発揮し、それを世界に発信したいものですね。
ところでマナーの根源を成すキーワードは「尊敬」「思いやり」そして「感謝」ですが、世界屈指の長い歴史と伝統を誇る日本において、先人が長い月日をかけて確立した生活文化、加えて数々の年中行事やしきたりの根底には、自然に感謝するという熱い思いが込められています。
そして正月には多くの神事を経験する人も多いと思いますが、いずれもこのような心から生まれた文化で、日常生活の中で根付いています。
また多くの家庭で正月には門松やお飾りを用意し、鏡餅を飾り、おせち料理を頂くと思いますが、これらは単に形式的なものではないはずです。
先人がなぜ門松を用意し、屠蘇を飲み、おせち料理を頂いたのか?
その切実な気持ちを理解し、味わっていただきたいものです。
数ある正月行事にはそれぞれ、「思いやり」や「おもてなし」の思いが込められており、それを実践することで豊かな気持ちになります。
この心を多くの人に理解して頂くとともに、次世代や世界に伝えていくことこそ国際時代の在り方だと考えます。
そして、この事が生きる喜びにつながり、勇気や希望が湧き、幸せを感じるヒントになるのではないでしょうか?
日本の「ハレの日」のしきたりから学ぶものは沢山ありますね・・・。
最後に、星の数ほどあるネット情報の中から《マナーうんちく話》に関心を持っていただき、お付き合いいただいた方々に厚くお礼申し上げます。
どうぞよいお年をお迎えください。
そして来年もよろしくお願いいたします。