マナーうんちく話1889《箸の役目は命の橋渡し。だから細かな作法がたくさん存在する》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:人間関係を良好にするマナー

世界の総人口を推定するのは大変困難な作業といわれていますが、現在地球上には約77億人の人が生活しているといわれています。

豊かな人もいれば貧しい暮らしを余儀なくされている人も多いわけですが、いずれも命を長らえるために食事をしなければいけません。

その食事の方法が「食法」で、現在地球上には大きく分けて3つの食法があります。
「世界3大食法」で、「手食」と「フォーク・ナイフ・スプン食」、そして「箸食」です。

「手食」は主に東南アジア、アフリカ、中近東、インド等でヒンズー教徒やイスラム教徒が多いようです。

「フォーク・ナイフ・スプン食」はアメリカ、ヨーロッパ、ロシア等です。
「箸食」は中国、東南アジア、ベトナム、台湾、日本で宗教はバラバラです。

ではなぜ食法が異なるかといえば、もとはすべての国で手食でしたが、やがてその国々の食材、調理法、食作法、気候風土、宗教により違いが生じてきました。

例えば日本も奈良時代ころまでは手食だったようですが、中国から箸が伝来し、これに神道が大きく影響して、独特の箸文化を形成しました。

また欧米でも最初は手食でしたが、パスタや牛や豚の肉を食べる時に便利がいいように、17世紀にフォーク・ナイフが発明され、宮廷でマナーが確立されます。

さらに同じ箸食でも、箸とスプンを共に使用する国もあれば、日本のように2本の箸だけで食べる国もあります。加えてその箸を横に並べる国もあれば、縦に並べる国もあります。

日本の「和食の作法」は神道の影響を大きく受けています。

ちなみに手食は「食べ物は命を繋ぐ神聖なものである。その神聖なものを箸やフォークを使用して食べることは不謹慎である。手で直接つまんで食べるべき」という考えで、右手だけが清浄とされ、親指、人差し指、中指を使います。

一方和食の箸食は全く異なる考え方です。
「食べ物は神様から賜った神聖なものとする捉え方は同じですが、これを直接手で食べるとは大変失礼なこと」と考えています。

だから神様から賜った神聖な食べ物を、人の口に運ぶ《橋渡し的役目》が必要で、その小道具として箸の存在があります。

人と神様を繋いでくれる箸は、日本人にとっては単なる小道具ではなく、大変貴重なものですから、厳格な決まり事や作法が沢山あるわけですね。

食前・食後の「いただきます」「ごちそう様の」の挨拶もそうです。

さらに日本の箸が真横にセットされるのは、箸が《結界》の役目を担うからです。
箸を境に向こう側は、命を繋ぐ神聖な食べ物ですから「上座」になります。

箸を境に手前は、食べ物を頂く人なので下座になり、謙虚な気持を表現しています。

正月におせち料理を食べる時に使用する「祝い箸」は、正月に里帰りした歳神様とともに食事をする「神人共食箸」です。

両端がとがっているのは一方が神様、その反対側は人が使用するためです。
神が宿り邪気を払う柳の白木で作られているので「柳箸」ともいわれます。
またハレの日に使用するので「ハレ箸」ともいいます。

そして縁起が良い末広がりを意味する「八」の数字にちなみ、長さは8寸(約24㎝)と決まっており、大人も子供も同じ長さです。

私は20年以上和食のマナーを開催していますが、美しい箸使いや豊かな精神文化をご存知の方はほとんどいなくなりました。

そればかりか「なんでもあり」「自由」「自分らしさ」「個性の尊重」とかで、箸の持ち方も自由気ままになった気がします。

和の礼儀作法や和食は世界が絶賛する素晴らしい文化ですが、それがいま存続の危機に陥っています。こんな国が幸せになれるとは思えませんが、如何でしょうか?攻めて箸は美しく持ちたいものだと思うのですが・・・。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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