マナーうんちく話126≪水引・熨斗の知識とマナー≫
明治以来日本は和洋折衷の文化を楽しんでいます。
音楽の世界では和楽器と洋楽器が、食べ物では和食と洋食を、ファッションの分野では着物があれば洋服もあります。
また言葉も国語と英語が必須の学校が多いようですね。
「贈り物」しかりです。
クリスマスやバレンタインデーといった西洋風の贈り物には「リボン」をつけますが、お中元やお歳暮、あるいは結婚の祝い等には、丁寧に包装された品物の右上に「熨斗」を付けます。
同じ贈り物でもその意味や由来は全く異なるわけですが、熨斗は日本古来のしきたりにもかかわらず、意外にその理由を理解している人は少ないのが現実です。
日本の改まった贈り物に熨斗を付けますが、では熨斗とは何か?そしてなぜ熨斗を付けるのか?
この意味を理解した上で贈り物をしたりされたりすれば、より心の交流が深まります。
「熨斗」とは「熨斗鮑」の略です。
鮑は昔から長寿で高貴な品であり、神事には神様へのお供え物として供えていたようで、やがて貴族や武士の間での祝儀の贈答品として添えられるようになりました。
しかし毎回海に潜って鮑をとるわけにもいきません。
そこで収穫した鮑を乾燥して、それをスライスして、シワを伸ばしたもので代用するようになります。
ちなみに「熨斗」とは年配の方はご存知の人もいると思いますが、昔のアイロンで「火熨斗」のことです。
昔は電機がないので鉄の器に炭を入れ、その熱と重みで布地を伸ばしていたわけですね。
さらに大正時代の頃になると、印刷技術が発展し紙に上手に印刷できるようになり現在のようになりました。
だから熨斗には「長寿」「延ばす」「生臭い」という意味があります。
ではなぜ贈り物にそのようなものを添えるのか?
もともと日本では仏事や弔事には生臭いものは避けていました。
だから祝儀用などの贈り物にはあえて生臭い熨斗を付けて、不祝儀の贈り物ではないことを明確にしたわけです。
また今でもお中元やお歳暮で食べ物が多いのは、神事におけるお供え物は魚や野菜や酒が重宝された名残です。
加えて魚や肉を贈る時には熨斗は付けません。
なぜなら熨斗はそうでなくとも生臭いものですから、魚や肉に熨斗を付けると生臭いのが倍増するからです・・・。
日本を訪れた外国人が最も理解に苦しむ文化の一つですが、日本人ならぜひ知っておきたい内容で、次世代にもきちんと伝えたいものです。
絆はこのようなことを正しく理解し、相手を思いやり、手間暇かけて実行することで深まるものです。