マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
あなたは友人、親友と言える人がどれくらいいますか?
長年ホテル業界の現場の第一線で接客の仕事に携わり、数えきれないくらいのお客様にご縁を頂くとともに、多くの知人・友人にも恵まれました。
そして定年を迎えるわけですが、あらためて痛感したことは「知人・友人は多いほどいい」ということです。
ただしこれだけでは不十分で、親友と言える人が周囲に何人いるかです。
ホテル業界ですから、ビジネスシーンでは常におもてなしの気持ちで接するわけですが、どうしても表面的になってしまいます。
利益優先ですから自分にとって、あるいは会社にとって利益をもたらしてくれそうな人に価値観を抱きがちになります。
しかし年齢を重ね多様な経験を積むに従い、それだけでは不十分だと気が付きます。
相手をしっかり観察し、その人を理解したうえで、どうすれば相手が喜んでくれるか?どのように振舞えばお役に立てるか?ということが頭によぎるようになってきます。
平たく言えば、最初から見返りを要求しない付き合いができるかどうかです?
このことは度重なる失敗や苦労を積み重ねて身に染みてくるようになります。
そのうえで「相手と長く付き合う」という気持ちを大切にしてください。
真の友人はそんなにたやすくできません。
だから「この人は!」と思ったらとにかくマメな付き合いをして下さい。
何度も触れますが手間暇をかけるということです。
生産の現場では利便性や合理性が問われますが人間関係作りはむしろ逆です。
ちなみにこのコラムでも触れましたが、日本が世界に誇る「もてなし」の文化も、その起源は神様・仏様が相手です。
目に見えないものに最大限の心配りをしているということです。
人づきあいのポイントとよく似ていますね。
親友と知人の区別をどこでするかは大変あいまいですが、ポイントは「一緒にいて心が安らぐ」ということです。
五時間や二時間は良いけどそれ以上共に過ごしたら窮屈だとか、気疲れするようなら知人のレベルでしょう。
一日中一緒にいても心地よい空間や時間になれば「親友」と呼べるのではないでしょうか。
夫婦でも親友でも「ホッとするひと時が作れる関係」はとてもありがたいものになります。
世知がない世の中になればなるほど・・・。
長い人生、喜びを分けてくれる人、苦しみを共にしてくれる人が身近にいるということはとても幸せなことではないでしょうか?