マナーうんちく話535≪五風十雨≫
2月は春に向かって草木が生え始めるので「如月」とか、梅が見ごろを迎えるので「梅見月」と言います。
そして3月は草木が芽吹き増々生い茂るので「弥生」といいます。
また梅に変わり、桃や桜が見ごろを迎えるので「桃月」とか「花見月」ともいいます。
先人は今のように月を数字で表すのではなく、「和風月名」といってその月にマッチした美しい言葉で表現したわけですね。
ちなみに月を今のように数字で表現し始めたのは、明治6年に新暦が採用されてからだといわれています。
また四季が明確に分かれている日本における季節の分類は様々です。
例えば春は「現在の感覚」では3月、4月、5月ですが、これが「旧暦」になると春は1月、2月、3月になります。
一方「二十四節気」では立春から立夏の前日までが春です。
さらに「天文学的な分類」では春分から夏至の前日になります。
「春」の語源も様々です。
草木の芽が張る頃だから「張るが春」になった説、晴れる日が多くなるので「晴るが春」になった説、畑を墾る(はる)ので「墾るが春」になった説などがあります。
そして草木が芽吹き、花が咲くことを「山笑う」と素敵な表現をしました。
英語ではSpringと表現しますが、その語源は植物が芽を出す時期という説があります。加えてスプリングには跳ねるという意味もありますが、いずれも心が浮き浮きしてきて、前向きになりそうで笑顔がお似合いの季節です。
今は厳しい冬でも、暖房も照明も食べ物も豊富ですから、辛い思いはあまりしなくても済みますが昔は大変です。
照明も暖房も食料にも事欠く、寒さの厳しい冬を越すということは、まさに命がけです。
だからこそ厳しい冬が終わり、花咲く春を迎える喜びは、今では考えられないくらい大きかったと考えられます。
春の到来を知らせてくれる梅や鶯やニシンに「春告げ花」「春告げ鳥」「春告げ魚」として重宝した理由が理解できますね。
新暦の正月や旧暦の正月、そして「立春」と「春分の日」を始まりの季節として盛大に祝いました。
今でも年賀状の賀詞には「新春のお慶びを申し上げます」などと表現しますが、その名残ですね。
「明けましておめでとう」の挨拶には、「厳しい冬を無事乗り越えて春の到来を喜ぶ」という意味も含まれています。
今は物が豊かで、便利で、世知がない時代になったので、春の到来を歓迎する気持ちは薄れましたが、改めて木や花が芽吹く「山笑う頃」と表現した先人の思いに心はせてみるのもお勧めです。
気分新たに、元気で、前向きに、笑顔で歩むと同時に、夢に向かって挑戦するのもいいでしょう。
春は全てのものをポジティブにしてくれます。
ちなみに3月の初めは春といっても、肌寒さを感じることの方が多い日々が続きます。雪も降るかもしれません。
しかしそんな中でも暖かい風を感じたりすることも生じてくるわけですが、そんな時にspring has comeと英語では表現するそうです。