まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
日本の紅葉は世界屈指の美しさだといわれていますが、その紅葉を愛でる文化を有している国でもあります。
また美しい紅葉を表現するために美しい言葉も持ち合わせています。
紅葉が錦のように美しくなる秋は「錦秋」といいますが、紅葉を見物するために出向くことは「紅葉狩り」と表現し、独特の物語を有しています。
ところで日本では花見と共に紅葉狩りには「酒宴」がつきものです。
このコラムでも何度も触れましたが、日本には「神人共食文化」が存在しますが、
酒宴はもともと神様への饗応を意味していたようです。
例えば春の「花見」は桜の花が咲く時期になると、村人たちは、桜の木の下に鎮座されている山の神様のところに出向き、桜の木を囲み酒宴を開き、山の神のおもてなしをします。
そして山の神様にふもとまで下りて頂き「田の神」として、これから始まる田植えの無事と豊作を祈ったわけです。
これと同じように紅葉を愛でながら酒宴を楽しむということは、多くの恵みをもたらしてくれる山の神様への感謝の気持ちの意思表示かもしれませんね。
日本の花見や紅葉狩りは実に奥深いですね。
次世代に是非伝えたい素晴らしい文化です。
国土の7割以上が山林で覆われ、四季が明確に分かれている日本では、先人はいにしえより自然に畏敬の念を抱いてきました。
それが今でも「自然保護」「環境保全」という言葉で引き継がれています。
秋晴れに恵まれた先日、弁当持参で地域にある「岡山県自然保護センター」に紅葉狩りに出向きました。
一口に紅葉狩りと言っても、その土地・土地に生えている広葉樹の種類によりかなり異なります。
カエデ科、ウルシ科、ツツジ科、バラ科、ブドウ科などに含まれるものが紅葉しますが、これらの木々の種類や生え具合により錦秋の様子は微妙に異なります。
また毎年同じ時期に、同じ場所に紅葉狩り行きますが、その年の気温の変化によっても大きく異なります。
季節やその土地に応じた楽しみ方、森全体の紅葉の変化を楽しむことも紅葉狩りの醍醐味でしょう。
最近特に変化したのが「熊の目撃情報」が新たに追加されたことです。
今までは山の中ですから蜂やマムシへの注意喚起はありましたが、全国津々浦々で新たに熊との関係が話題になっています。
その土地・土地に刻み込まれた水面に移る紅葉、夕焼けに生える紅葉は、日本人の心に沁みるものがありますが、同時に紅葉の美しい時期は実り溢れる季節でもあります。
美しい景色に、美味しい酒とご馳走は、まさに山の神様からの贈り物でしょう。
紅葉を満喫しながら、動物との共存も真剣に考えなければいけない時期に来たような気がします。