マナーうんちく話90≪懐紙の優雅な使い方≫
私達は、個人差はあるとしても普通一日3回食事をとります。
学校給食もあれば家庭での食事もあり、また外食もあるでしょう。
外食時に私たちが何気なく使用しているのが「割り箸」ですが、日本で一年間にどのくらいの割り箸が使用されているかご存知でしょうか?
どのように計算するのかわかりませんが290億本くらいだといわれています。
「割り箸の文化」を持つ国ですから頷けないことはありませんが、皮肉なことに99%は輸入品だそうです。
しかし日本の割り箸には、先に触れた「神人共食文化」とおなじように、とても豊かな精神文化が含まれています。
割箸の起源は古く、江戸中期から後期にかけてという説が有力です。
このころになると外食文化が発達し、江戸の町には食べ物屋があちらこちらに出現しますが、割り箸は特にうなぎ屋で珍重されたようです。
江戸の町は非常にきれいであったということはよく知られていますが、とにかく日本人は清潔好きです。
だから割り箸は、割れ目があり、使用するときに二つに割るわけですから、清潔好きで、けじめを大切にする日本人の価値観にマッチしていたのでしょう。
瞬く間に普及するわけですが、本格的に割り箸ができたのは明治になってからのようです。
木を扱う商人が材木の端材に目をつけ、この有効利用として割り箸を作り、自然との調和を図ったわけですね。
さらにいろいろな割り箸が登場しますが、かつて利休が茶室で客人をもてなすために作った割り箸は有名です。
香りを出すために両端を削って作った箸がそうですが、それに「利久箸」と名付けて市場に出した商人の知恵は素晴らしいと思います。
千利休が作った箸ですから、本来は《利休箸》となるわけですが、飲食店にとって「休む」という漢字はあまり縁起がいいものではありません。
そこで「休」の漢字に変わって、久しく栄えることを願って「利久箸」のネーミングを付けたことは、いかにも日本人らしい発想ですね。
おもてなしの箸です。
日本には世界が絶賛するおもてなしの文化があり、茶の湯、風呂、打ち水などいたる所にその痕跡が見られますが、食事時の「おしぼり」や「割り箸」はとてもユニークなおもてなしのスタイルだと言えるでしょう。
特にレストランで供される「おしぼり」や「使い捨ての割り箸」には料金は加算されません。冷たい水もしかりです。
しかし多大な手間暇と経費は掛かっています。
いかにレストランの主人がお客様におもてなしの心を発揮しているかということでしょう。
割り箸は「これは清潔好きなあなただけに用意した箸ですよ」という意味で、あえて割って使用するようにしています。
外国では見られない素晴らしい文化です。