マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
今まで経験したことのない豪雨、暴風、地震等など・・・。
度重なる自然災害の無残な爪痕に、儚さを感じることが多くなりました。
本来なら、秋の面影がひとしお感じられる頃で、朝夕の心地よさにホッと一息つくわけですが、次から次へとやってくる自然の猛威に、ため息が出ますね。
寺田寅彦の「天災は忘れたころにやってくる」の名言を、「天災は忘れる間がなくやってくる」に変えたほうがいいかも・・・。
いずれにせよ油断大敵で、用心を怠らないようにしたいものです。
9月8日は二十四節気の一つ「白露」です。
大気が冷えて草花に露ができやすい季節ですが、空気が澄んで、月がとても美しく見える時節でもあります。
空を見上げると入道雲が減って、秋らしい雲がおおくなってきます。
ススキもお目見えします。
ススキは動物の尾に見立てて「尾花」とも呼ばれ、万葉集にも登場する「秋の七草」の一つです。
加えて燕が南に去り、セキレイが恋の季節を迎え鳴き始めます。
セキレイはいざなぎといざなみの神様に子づくりの仕方を教えた鳥で、「恋教え鳥」ともよばれます。
ところで朝の光を受けて、キラキラ輝く露は、昔から儚さの象徴であり、涙にもたとえられました。
一方、「月の雫」とも呼ばれます。
また宝石にもたとえられます。
その高貴な美しさに勇気をもらい、前を向いて元気に歩んでいきたいものです。
また雨模様の天気になりました。
夏から秋へと移行するこの時期は、大気の状態が不安定になり、秋雨前線が猛威を振るう頃でもあります。
先人はこの時期の長雨を「秋の長雨」とか、ススキが咲く頃に降る長雨ですから「ススキ梅雨」と呼びましたが、風流を味わうより、台風と重なり大きな災害をもたらすことも珍しくありません。
くれぐれのご注意くださいね。
そして、この時期の季語に「桐一葉」があります。
平安時代の貴族であり歌人でもあった藤原敏行は、「秋きぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」と読み、風の音で秋の到来を察したそうですが、「桐一葉」は、秋になると真っ先に落ちる桐の葉を見て、秋のおとずれを知ったという意味です。
春夏秋冬が織りなす自然の声や風景に感性を澄ませ、真摯に生きた先人から、豊かになった現代人が見習うことが多いような気がしてなりません。