マナーうんちく話494≪和顔愛語≫
前回のコラムで「袖触れ合うも多生の縁」という言葉に触れましたが、「多生」という言葉は日常生活ではなじみが薄い言葉です。
詳しくは《マナーうんちく話516「袖触れ合うも多生の縁」》を参考にしていただきたいと思いますが、一口で言えば、生まれる前からの縁、つまり前世という意味ですから、「袖触れ合う縁も多生の縁」は、袖が触れ合う程度の小さな出会いでも、それは前世からの因縁という意味です。
今は着物を着る人は非常に少なくなりましたが、江戸時代は着物です。
従って細い道を行き交う場合は自然に袖が触れ合うわけですね。
何気ない出会いでも実は、大変貴重な出会いになるケースが多々あります。
些細な出会いを生かすも殺すも「運」が大きいと思いますが、その運に恵まれるには、結局コミュニケーション能力が不可欠でしょう。
その基本中の基本は挨拶ですが、最近挨拶が苦手な人が大変増えている気がしてなりません。
ポイントは「される」のを待つのではなく、自分から先に「仕掛ける」ことです。
「先手表彰の挨拶」といわれますが、挨拶はしたもの勝ちです。
また相手の目を見てする、つまり自分の「へそ」を相手に向ける感覚で、優しい目線で自分の心を伝えて下さい。
明るく、元気よく仕掛けて下さい。
これに笑顔が添えられ、「+αの言葉」があればなおいいですね。
さらに相手の名前が解っている場合は、名指しの挨拶で臨んでくださいね。
さらに縁を深めるのに損得勘定は禁物です。
自分の上司や実力のある先輩には丁寧な挨拶を心がけるが、そうでない人には歩合サウナ態度をとるのは感心しません。
誰に対しても真摯な態度で接してくださいね。
また最初からは難しいかもしれませんが、相手の人となり、つまり人柄をよく観察してください。
但し自分も同様です。
相手から見られているということです。
では人柄を限られた時間で見極めるにはどうしたらいいのか?
色々とあると思いますが、私は愛嬌や笑顔を気にします。
最後に「人間関係作り」に、見返りを求めないことも大切です。
例えば、挨拶は「相手の存在を確認した」という意味と、「相手と仲良くやっていきたい」という気持ちの意思表示ですが。せっかく先手必勝の挨拶をしたのに、相手はしてくれない。
相手に親切にしてあげたのにありがとうの言葉がいただけない、というように「のに」を不必要にこだわらないことが大切です。
誰でも挨拶をしたらしてほしい、親切にしたらお礼を言って欲しいと思うのはごく自然な気持ちだと思います。
しかし挨拶の目的も、親切にした目的も、相手の反応を見るためではなく、自分自身の素直な気持ちからだと思います。
自分の気持ちに忠実に向き合って挨拶し、親切にすれば自己満足はできるはずです。これだけでも十分だと思えばいいわけです。
以上理屈ではなくとにかく実行あるのみですね。
人間関係は一朝一夕にはまいりません。
まず、当たり前のことを、心を込めて、丁寧に、コツコツ積み重ねて下さいね。
今後ともマナーやコミュニケーションによる人づくりのポイントに触れてまいります。是非お付き合いください。