マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
日常生活やビジネスの上で暦は必要不可欠です。
どの家やオフィスにもカレンダーがあり、手帳やスマートフォンにも暦は必ずと言っていいほどついています。
これは古今東西変わらないでしょう。
ただ使用している暦は今と昔は異なります。
今の日本ではグレゴリオ暦、つまり地球の公転をベースにした太陽暦を使用していますが、明治以前までは月の満ち欠けを基準にした旧暦、つまり太陰歴を使用していました。
ところが深刻な財政難に陥っていた明治新政府は役人への給料の回数を減らすために、明治5年12月2日が明ければ、いきなり明治6年1月1日へと変えてしまいました。
世界共通の暦である新暦を施行したわけです。
恐らく十分な議論も交わさないまま強行したのでしょう。
多くのトラブルが起きたようです。
例えば旧暦で種まきをしていた農民や、季語を大切にする俳句の世界では多くの混乱に遭遇したと思います。
加えて旧暦の正月は立春です。
年中行事の季節感に矛盾が生じるのは無理もありません。
だから「月遅れ」なども付け食えられて、いろいろと調整されています。
たとえば旧暦で七月十五日のお盆を、「月遅れ」の八月十五日に行う地方は多いようですね。
特に年中行事は、旧暦で行う地域もあれば、新暦で行うところもあり、今なお混然としてわかりにくい面も多々あります。
これと同じように明治以降大きく変わった習慣の一つに、年齢の唱え方がありますね。
明治以前は「数え年」でしたが、明治になって「満年齢」になりました。
こちらも長年使用していた計算方式を、急に変えるには無理があったようで、しばらくは数え年が多かったようですが、昭和に入り満年齢へと大きく変わり、公的書類では完全に満年齢になったようです。
しかし、子供の成長に関する祝い事、例えば七五三などは今でも数えで行う人もあれば、満年齢で行う人もいます。
つまり、数え年と満年齢、旧暦と新暦がいまだに混然一体となっているのが現状です。
しかし「お月見」はどちらでもいいわけではありません。
旧暦で行います。
なぜなら旧暦は、月の満ち欠けを基準にしているからです。
ちなみに、旧暦では新月がその月の一日になり、満月が十五日になります。
そして旧暦では七月、八月、九月が秋で、七月は「初秋」、八月は「仲秋」、9月は「晩秋」になります。
「仲秋の名月」は旧暦の8月15日で、新暦に直せば、9月中旬から10月上旬に当たり、平成29年は10月4日になるわけです。
この月こそ姿形が極上とされている月です。
《月々に 月見る月は多けれど 月見る月は この月の月》という有名な歌があります。
マナーうんちく話798《月々に 月見る月は多けれど・・・》をぜひご覧ください。
ちなみに仲秋の名月の日は暦を注意してみてください。
「仏滅の日」になっています。
来年こそはと思われる方がいるかもしれませんが、去年も来年も仏滅です。
なぜなら、六曜も旧暦の月と日できまるからです。
名月はロマン漂う光景が浮かびますが、仲秋の名月の別名は「仏滅名月」です。
話のタネにしてください。
次回は大人のお月見である「十六夜の月」の粋な楽しみ方に触れてみます。