まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
秋の語源は米などの食べ物が飽きる程沢山出回るから「飽きる」が「秋」に転じたという説が有力ですが、10月は、まさに実りの秋、収穫の秋です。
感謝の気持ちを添えて大地の恵みをいただきましょう。
キノコや野菜や果物、そして魚もおいしく、つい食べ過ぎになり「天高く馬肥ゆる」という言葉が思わず浮かんできそうですね。
しかしその一方では、米の収穫が終わり、田んぼが閑散としてくると、侘びた季節を実感できるような、一抹の寂しさが顔をのぞかせる季節でもあります。
「日本の秋」特有の淡い秋を丁寧に過ごすのもお勧めです。
そして10月は衣替えの季節ですが、すっかり秋の装いが目立つようになりました。
今では衣替えという言葉より、「クールビズ」や「ウオームビズ」のような言葉がよく知られるようになりましたが、衣替えは「四季の国」日本特有の文化で平安貴族に端を発します。
当時はいかに貴族といえ、まだ物が豊かではなかったので着替えは一年に二回でしたが、江戸時代になると衣食住がかなり豊かになってきます。
それにつれ統制の取れた武士の間では気候に合わせて、一年に4回衣服を変えるようになってきます。
一斉に!一気に!が特徴です。
例外なくすべての武士が、旧暦の4月1日から5月4日の間は裏地のついた袷(あわせ)になり、5月5日から8月31日までは気温が上昇するので裏地のない単衣(ひとえ)、9月1日から9月8日までは裏地のついた袷、そして9月9日から3月末までは寒い季節ですから綿入りを着用するわけです。
現在では、個性とか、自分らしさに価値が置かれるようになってきたので、全員がそろってということはありませんが、当時は全員が歩調を合わせることにより協調性を保っていたわけです。
着るものばかりではありません。
年末の大掃除も、門松を山に切りに行く日も、こたつを出す日まで、全員一斉に行います。
加えて当時の人は自然と真摯に向き合い、季節感を非常に大切にしたということです。
季節に対していつも「思いやりの心」を持っていたわけです。
季節の変化を実感できる基準がきちんと定められていたら、生活にメリハリが生まれるわけですね。
気分を改めるということでしょう。
さらに衣替えに際し、衣服の整理を行うとともに、タンスの整理整頓も併せて行うことで、しつけの一環にしていたのでしょう。
箸使いの作法に、同席する人に不快感を与えない箸使いをするために「嫌い箸」を定めています。他者に気遣っていたわけですが、この心が衣服にも表現されているのが日本の衣替えの文化です。
このような伝統ある日本の素晴らしい文化をなぜ、「クールビズ」や「ウオームビズ」といった、個性を主張する文化に変えなければいけなかったのか?
それでどれだけ心が豊かになり、大勢の人がハッピーになったのか?
私は疑問を感じています。
クールビズやウオームビズのそもそもの目的は地球の環境保護です。
だったら先人が生み出した衣替えの文化のほうが自然に配慮していると思うわけです・・・。
ちなみにファッションは自分目線、身だしなみは他人目線です。
貧乏な下級武士は別として、江戸時代の武士はまさに身だしなみには厳格だったようで、それに伴う立ち居振る舞いの美しさは、欧米のセレブにもまねができないでしょう。
美しさにかけては世界屈指だと思います。
そして明治になると欧米の文化が入り、旧暦が新暦に、和装が洋装に変わり、先ず役人や軍人が6月と10月に衣替えを行い、これが次第に一般庶民に波及して現在に至るわけですが、10年位前に「クールビズ」「ウオームビズ」になり、現在に至るのはご承知のとおりです。
それはさておき、衣替えの精神は次世代にもきちんと伝えたい、四季の国日本ならではの素晴らしい文化です。
次回は「お月見」を取り上げます。