マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
9月の後半に入る頃になると暑さも落ち着きかなり過ごしやすくなり、「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉が実感できるようになりますね。
9月20日は「彼岸入り」で9月23日は「秋分の日」です。
春分の日と同じように、昼と夜の長さがほぼ同じようになります。
ただし9月は旧暦では「夜長月」といわれるように、秋分の日を境に夜が長くなっていきます。ちなみに春分の日はこれを境に昼が長くなります。
さらに夏の猛暑の名残もあり、秋分の日は春分の日に比べると気温が約10度も高く、過ごしやすいのが特徴です。
そして秋分の日を中日にして7日間が「秋の彼岸」になります。
彼岸入りは彼岸がスタートする日です。
彼岸は仏教行事ですが、仏教国の中でも彼岸の行事があるのは日本だけです。
春の彼岸が過ぎれば田植えが始まりますが、秋の彼岸が終わればいよいよ稲刈りのシーズンです。
勿論早稲のような品種ではすでに稲刈りが終わっているところもあります。
つまり彼岸は先祖の供養する日ですが、これに加えて、春の彼岸は豊作を祈願して、秋の彼岸は収穫を感謝する意味合いが込められているようです。
日本人らしい発想で、米を主食にしている日本人らしい発想ですが、後世にも伝えたい伝統行事だと思います。
ところで「秋分の日」は、「祖先を敬い、亡くなった人をしのぶ」ことを趣旨とした「国民の休日」になっていますが、先祖に感謝するとともに収穫にも感謝するということは、人が人として心豊かに生きていく上で、とても大切なことだと思います。
彼岸とは自然信仰と祖先信仰が華麗に融合する時という言い方が相応しいかもしれません。
「おはぎ」を持参してのお墓参りも、できる限り家族そろって出かけたいものです。
絆がより深まります。
そしてこの時期には田んぼのあぜ道などに、目にも鮮やかな真っ赤なヒガンバナが咲き乱れます。
別名「曼殊沙華」ともいわれ、仏教では「天界の花」とされています。
物が豊かになり、科学が進歩し、秋分の日が彼岸の中日であることを忘れられる昨今ですが、
私たちの祖先は、天候に大きく左右される農業で生計を立てていました。
今頃は秋を謳歌する楽しいイベントが目白押しの時期ですが、自然と真摯な気持ちで向き合ってきた先祖の素朴な思いに心をはせてみるのもお勧めです。
いくらコンピューター万能の時代とは言え、人は自然の力には及びません。
自然に畏敬の念を抱き、神に祈りをささげる時にこそ、感謝の気持ちがわいてきて、心が洗われ、幸せを感じるようになるでしょう。