マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
暦通りの寒い日になりましたが、日差しが少しだけ長くなった気がします。
寒いながらも春が確実に近づいているようですね。
ところで旧暦の正月は「歳神様」を迎えるとともに「春」を迎える喜びであったわけですが、最近は正月や年中行事、加えて冠婚葬祭の在り方が大きく異なりました。
マナーには不易流行的な側面がありますので、時代とともに変化するものも当然あります。
然しいくら時代が豊かになっても「変えてはいけないもの」も多々あると思います。日本人が大切に育んできた「思いやりの心」や「自然との共生」もしかりです。
そして出来る限り「年中行事」に込められた意味や意義も大切にしたいと考えます。
1月7日は「七草粥の日」です。
セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロを入れたお粥を食べて、正月のご馳走で弱った体を休める日です。
無病息災を願う意味もあります。
正月に食べる江戸時代の「薬膳粥」ですが、幕府では公式行事として、将軍も武士も七草粥を食べる儀式を行ったとか・・・。
まさに冬場の野菜不足の解消と免疫力を高める知恵だったわけですね。
七草の種類は江戸も上方も同じだったようで、今でもそれがそのまま受け継がれているのではないでしょうか。
おそらくこれらの春菜がどこでも手に入り易かったのでしょう。
ところでこのコラムでも何度も触れましたが「五節句」をご存知でしょうか。
「節」は中国の暦の季節の変わり日です。
それが日本の農事に関係する風習や行事と融合して節句になったわけですが、1月7日の「人日の節句」、3月3日の「上巳の節句」、5月5日の「端午の節句」、7月7日の「七夕の節句」、9月9日の「重陽の節句」があります。
そして七草粥は1月7日の「人日」の節句に行われた行事です。
つまり1月7日は「人の日」として、人が刑罰を受けない日でもあったわけですね。
江戸時代に中国から伝わり、春の若菜を入れたお粥を食べて、邪気を払い、無病息災を祈ったという説がありますが、春の若菜を摘む楽しみはかなり前からあったようです。
ただし、江戸時代の民間人は七草の中で2種から3種くらいを用いるのが一般的だったようです。だから7種すべて揃わなくても大根や蕪の葉だけでも充分ではないでしょうか。是非お試しください。
また当時の農民は七草を売ることで「商い」になるので、町中に出て行商していたようです。今でもスーパーなどで「七草セット」が販売されていますが同じ理屈ですね。
五節句にはそれぞれの行事が有りますが、1月7日の「人日の節句」は人を大切にして、七草粥を食べる日です。
犯罪者に対する罰則も無効になるような日であったと言われますが、この日は互いに許し合う日にするのもいいですね。
喧嘩をしている人は「仲直りする日」にされるのもお勧めです。