マナーうんちく話504≪あなたなら、どう答える?≫
稲刈りやお祭りがすむと、山も里も街もしっとりとした佇まいをみせるようになりました。
そして間もなく紅葉のシーズンですね。
日本の四季の美しさは世界の人々がうらやましがるところですが、特に百花繚乱の春と紅葉の秋は格別で、「桜前線」「紅葉前線」等と言われる美しい言葉が存在します。
ところで自分が発する言葉について考えることがおありでしょうか?
申すまでもなく、言葉遣いはコミュニケーションの基本の基本であり、良好な人間関係を築くうえでも必要不可欠なモノです。
それが美しくて好感をもたれるか、あるいはいつもネガティブな言葉ばかりで不快に思われるかでは雲泥の違いです。
あまり耳慣れない言葉だと思いますが、江戸しぐさに「戸閉め言葉」と「手釜言葉」があります。
世界最大の人口を抱えていた江戸という過密都市において、武士は広大な敷地で悠々と暮らせるわけですが、一般庶民は狭い敷地で共同生活を余儀なくされていたようです。
住まいは長屋、井戸もトイレも共同使用の生活ですから、毎日隣人と顔をつきあわせて暮らすようになります。
現代のように「自由」「個性」「自分らしさ」「権利」だなんて自己主張ばかりしていたら暮らせません。
譲り合い、助け合い、思いやりながら心地良く暮らせるようにするための心得や生活の知恵が必要です。
そのような中で生まれたのが「江戸しぐさ」ですが、当然言葉遣いにも最大限の神経を使うようになり、「戸閉め言葉」「手釜言葉」が登場したようです。
「戸閉め言葉」は「逆らいしぐさ」のようなもので、「でも」「どうせ」「だって」のような「D言葉」や、「しかし」「そんなことをいっても」というような否定的であり、相手に対して逆らう言葉を意味します。
これに関しては『マナーうんちく話511《「逆らいしぐさ」。前置き言葉にご注意あれ!》を参考にして下さい。
「手釜言葉」は一言で言えば「乱暴な言葉遣い」で、これは慎まなければいけないと思います。
最近「言葉の暴力」ということをよく耳にしますが、相手に心理的な制圧を言葉で加えることはハラスメントにもなりかねませんので感心しません。
相手から発せられたたった一言の言葉により、精神的に落ち込んでしまうことも多々あるので、最も注意したいところです。
特に力や立場などで上位の者が下位者に対して乱暴な言葉を発することは慎みたいものです。下位者は反撃できないのでそのダメージは程度にもよりますが相当なものになります。
「思いやりの心」には「相手に不快感を与えない」という側面が有りますが、否定的な言葉や乱暴な言葉遣いはその典型的なモノですね。
日本語は世界的にも非常に美しい言葉だと言われています。
しかも四季が美しい国です。
言葉遣いも思いやりのある美しい言葉を心掛けたいものですね。